トップへ

三浦春馬、舞台/ミュージカル経験を経た“シンガーとしての表現力”に注目

2019年12月04日 13:31  リアルサウンド

リアルサウンド

三浦春馬『Fight for your heart』(通常盤)

 今年8月に自身が主演したドラマ『TWO WEEKS』の主題歌「Fight for your heart」で、歌手デビューを果たした三浦春馬。7月24日放送の『2019 FNSうたの夏まつり』では、バックダンサーを従えて同曲と共に華麗なダンスを披露したほか、人材派遣会社「グロップ」のCMでは、ミュージカルさながらにキレのあるダンスと歌で話題をさらった。俳優でありながら、歌にダンスにとマルチぶりを発揮して注目を集めている三浦春馬は、12月4日に放送の『2019 FNS歌謡祭』第1夜に出演し、郷ひろみとのコラボで「言えないよ」を披露する。


(関連:三浦春馬「Fight for your heart」MVはこちら


●天は二物を与えずどころか、三物も四物も与えた
 三浦春馬は子役を経て、2006年の映画『キャッチ ア ウェーブ』で映画初主演を務め、翌年の映画『恋空』では第31回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞。以降、大河ドラマを始め、『ブラッディ・マンデイ』や『大切なことはすべて君が教えてくれた』、『ごくせん』『進撃の巨人』『永遠の0』など数多くのドラマ/映画に出演し、確固たる人気を獲得した(『永遠の0』では第38回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞)。近年は舞台にも力を注いでおり、2016年のミュージカル『キンキーブーツ』(今春に再演)では、ドラァグクイーンのローラ役を妖艶に演じた。また今年初頭に上演された『Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019 DISCOVER WORLD THEATRE Vol.5『罪と罰』では、正義のために殺人を犯す青年ラスコリニコフを演じるために、減量をして臨んだという。


 俳優として十分な評価をされている三浦であるが、「Fight for your heart」では抜群の歌唱力とダンスでシンガーとしても注目を集めることに。同曲は、EDMのサウンドに三浦のハイトーンボイスが重なる、クールさとアツさが同居した楽曲で、大切なものを守るために世界を敵にすることも厭わない情熱と信念、そして大いなる愛が歌われている。ボーカルは、あえてファルセットを抑えて地声のハイトーンで歌っており、それが強さを感じさせた。間奏では一転、まるで鳥が自由に空を飛び回るようなフェイクを聴かせていて、このバランス感が絶妙だ。Jeff Miyaharaらが手がけた楽曲も、歌謡曲的なキャッチーさと、最新のR&Bを落とし込んだグルーヴィーかつダンサブルな要素が満載されていて聴き応えがある。それら楽曲と歌詞が、三浦のボーカルに哀愁漂う男の背中とストイックさを与えている。


●ポテンシャルを引き出した舞台/ミュージカル経験
 「Fight for your heart」では、三浦のダンスも話題を集めた。MVでは真っ赤な背景をバックに頭を激しく揺さぶりながら躍動する、シルエットが映し出されたシーンが印象的だ。歌の感情がそのまま神経を伝って身体を動かしているようなコンテンポラリーダンスで、実に見応えがあった。また『2019 FNS夏のうたまつり』では、どこかバレエを想像させるしなやかな動きで格式の高さや上品さを感じさせ、サビではダンサーと見事にシンクロしたダンスを展開した。この振付は、s**tkingzのNOPPOが担当したとのこと。ネットでは「こんなに踊れるんだ」「歌も上手くてダンスもすごい」など、三浦のダンススキルの高さが話題になった。


 幼少期からダンスに慣れ親しんできたことによるポテンシャルの高さに加えて、舞台で鍛えられた面も大きいだろう。2009年に地球ゴージャスプロデュース公演『星の大地に降る涙』に出演したことを皮切りに、2012年には同じく地球ゴージャスの舞台『海盗セブン』に出演。また、同年には、劇団☆新感線『ZIPANG PUNK~五右衛門ロックIII』にも出演している。地球ゴージャスや劇団☆新感線の舞台は、歌とダンスのスキルが必須だ。そして『キンキーブーツ』への出演経験によって、ダンスによる自己表現に磨きをかけた(昨年の『2018 FNS歌謡祭』では小池徹平やソニンと共に膝上の赤いブーツを履いたドラァグクイーンの扮装で登場して「RAISE YOU UP」を歌った姿が評判になった)。ダンスというと近年のポップスシーンでは、DA PUMPの「U.S.A」のようにみんなで一緒に踊れるものや、大勢のメンバーで魅せるシンクロダンスやフォーメーションダンスが注目されることが多いが、三浦春馬のダンスはそれらとは違ってONE AND ONLYの魅力を持っている。それは感情と一体化したダンスと呼べるもので、きっと舞台やミュージカルで感情を身体の動きに移すという作業をやってきたからこそ、身についたものだろう。


 『2019 FNS歌謡祭』第1夜では、ダンス&ボーカルのオーソリティでジャケットプレイを生み出した郷ひろみと共演。どんな化学反応が起き、どんな新たな魅力を発揮するのか楽しみだ。(榑林史章)