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Netflix、NYの老舗映画館を救う ストリーミングと劇場運営の両立は化学反応を産むか?

2019年12月04日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

Netflix公式Twitterより

 Netflixは11月25日、米国ニューヨークの老舗映画館『Paris Theatre』の長期リース契約を締結したことを発表した。DVDレンタルで創業し、その後は動画ストリーミングで圧倒的な地位を築き、劇場とは真逆の事業形態かと思われがちだ。しかし、今回の動きには、何か明確な目的があるようだ。


(参考:Netflix『13の理由』自殺シーン削除の理由 制作サイドのコメントも


・寂れた歴史的映画館・『Paris Theatre』の救世主
 『Engadget』は「Netflixがニューヨークの歴史的な『Paris Theatre』を救う」と報じた(参考:https://www.engadget.com/2019/11/25/netflix-save-new-york-paris-theatre/)。


 ニューヨークの歴史あるユニークな映画館『Paris Theatre』は、Netflixという意外な救世主を見つけた。Netflixは、ニューヨーク市内で現存する唯一のシングルスクリーンシネマである『Paris Theatre』の運営を続けるリース契約を締結した。劇場は、今年8月をもって閉鎖されていた。


 Netflixのリース条件は明らかになっていないが、特別なイベントや上映のために使用し、独自の映画を上映する予定だという。Netflixは、アカデミー賞の受賞資格を得るべく、劇場で『アイリッシュマン』や『キング』といった映画を上映している。


 今回の動きは、Netflixが従来の映画に初進出したというわけではない。4月以来、同社はロサンゼルスの歴史的な『Egyptian Theatre』についても取引を行っている。また、『Landmark Theaters』といった小規模チェーンの買収も検討していると伝えられている。


 Netflixにとって、歴史ある小さな劇場への投資は、従来の映画制作者との関係を強化する上で、非常に理にかなっている。映画監督のスティーヴン・スピルバーグ氏は「Netflixの映画は映画ではなくテレビ番組と見なすべきだ」と述べたうえで、「映画が数週間、映画館で上映されただけでは、オスカーの受賞資格を得るべきではない」と提言している。


 『Paris Theatre』のような劇場は、Netflixがこれらの懸念に対処し、映画ファンとの良好な関係を構築するのを可能にするだろう。


・株価は堅調も業績に悪影響という評価
 『CNBC』は、これまでの経緯とNetflixの動きを詳しく説明している(参考:https://www.cnbc.com/2019/11/26/netflix-takes-over-new-yorks-paris-theater-for-movie-screenings.html)。


 Netflixは、2019年11月初めに『Paris Theatre』で映画『マリッジ・ストーリー』を上映し、今後のリース契約を締結したことで、引き続き劇場運営を行う。


 『Paris Theatre』は1948年に女優マレーネ・ディートリヒがテープカットし、華々しくデビュー。元々はフランス映画を上映する劇場として、映画ファンから愛され続けていた。


 Netflixのチーフ・コンテンツ・オフィサーであるテッド・サランドス氏は、『Paris Theatre』について「71年の歴史があり、唯一無二の映画体験のための場所で、永久的な遺産であり続ける。このニューヨークの施設を保存し、映画愛好家の拠り所であり続けることが出来るのは非常に誇らしい」とコメントしている。


 米金融機関ウェルズ・ファーゴは11月25日、Netflixを格下げし、新規ユーザー獲得のコストは投資家が認識するより高くなると述べた。一方、クレディ・スイスは、アプリのダウンロードとGoogleの検索結果などを分析し、11月上旬に競合するストリーミングサービス『Disney+』がローンチされても、Netflixへの影響はないとしている。


 ストリーミングで動画市場を激変させているNetflixだが、旧来の映画界とも何とか良好な関係を維持しようと画策しているようだ。


(Nagata Tombo)