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80歳男性、関越道を逆走して衝突死…自動車「逆走」の法的問題

2019年12月03日 13:51  弁護士ドットコム

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12月1日、群馬県渋川市の関越自動車道で、車が少なくとも3キロ逆走して、対向車と正面衝突。運転していた80歳の男性が死亡し、対向車の男女2人も重軽傷を負う事故が発生した。


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報道によると、この男性は免許の返納を求められていたが、地元の自治会長の話では、「人の世話になりたくない」という状況だったという。



運転していた80歳の男性は亡くなってしまったが、一般論として、高速道路の逆走にはどんな法的問題があるのか。濵門俊也弁護士に聞いた。



●事故が起きず、人が死傷しなければ道交法違反にすぎない

「まず、刑事処分と行政処分からみていきましょう。



もし、逆走しただけで事故を起こすことなく、人が死傷しなかった場合、道路交通法違反でしかありません。



つまり、道路の逆走について、道路交通法は、自動車が本来の通行部分と異なる部分を通行した場合として、『通行区分違反』の行為としており、『3月以下の懲役又は5万円以下の罰金』に処せられる可能性があります(道路交通法119条1項2号の2)。『通行区分違反』の行為には、過失犯の定めはなく、うっかり逆走した場合には処罰されることはありません。



加えて、行政処分として「反則金9000円(普通車の場合)」及び「減点2点」と定められています(道路交通法施行令)。ただし、反則金納付制度により、上記反則金を納付すれば刑事罰に科されることはありません」



●人が死傷すれば「危険運転致死傷罪」の可能性

逆走して事故を起こし、人が死傷してしまった場合には、どうなるのか。



「故意に高速道路を逆走して、事故を起こし、人を死亡又は負傷させた場合には、自動車運転死傷行為処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)の「危険運転致死傷罪」(同法2条6号)に該当し得ます。



この罪の刑は、負傷させた場合『15年以下の懲役』、死亡させた場合『1年以上(20年以下)の有期懲役』と定められています。



行政処分としては『減点62点(死亡)又は55点(負傷)』と定められています(道路交通法施行令)。



ちなみに、過失により道路を逆走し、人を死傷させた場合は、自動車運転死傷行為処罰法の『過失運転致死傷罪』(同法5条)に該当し、『7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金』に処せられる可能性があります」



●民事上の損害賠償責任を問える場合と問えない場合

民事上の責任はどうなるのか。



「もし、運転者が重度の認知症を患っているなどの事情で、民事上の損害賠償責任について責任能力がないと判断されてしまいますと、運転者個人の賠償責任を追及することはできません(民法713条)。



もっとも、この場合、運転者を監督すべき者がいる場合には、監督義務違反を理由として、その者が損害賠償責任を負うことをあり得ます(民法714条)。



高速道路の逆走そのものは高齢者特有の話ではないのですが、実際の統計等を見ますと、65歳以上で7割以上を占め、75歳以上に限ってみると、ほぼ5割に達していることからすると、高齢者に多い事案であることは否めません。



国土交通省も各高速道路会社も逆走事故ゼロを目指した様々な啓蒙活動を展開しております。運転者だけでなく、その周囲もしっかり意識を持って問題に取り組むべきかと思います」




【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/