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『スカーレット』八郎と信作の仲が深まり、喜美子は嫉妬!? 喜怒哀楽豊かなヒロイン像

2019年12月03日 12:12  リアルサウンド

リアルサウンド

『スカーレット』写真提供=NHK

 『スカーレット』(NHK総合)第56話で、八郎(松下洸平)の作陶を見て喜美子(戸田恵梨香)は陶芸に関心を持つ。背中越しに八郎と話しているときの会話のトーンから、喜美子の浮き立つような心理状態が伝わってくる。


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 思えば初対面から喜美子は八郎の前では喜怒哀楽の感情を表に出してきた。八郎の深野(イッセー尾形)に対する思いを知り、日常的に言葉を交わす中で、無意識のうちに喜美子の中で八郎への距離が縮まる。


 余った削りカスを小人に見立てて話すシーンで、作陶の手順を教えると同時に、無心になって土と戯れる2人の姿は、小さい子どもが人形やおもちゃに命を吹き込む遊びのように見える。現時点で八郎の生い立ちや家族環境はくわしく語られていないが、十代田八郎というキャラクターをつくったのはどんな人たちだろうと想像が膨らんだ。


 八郎との会話は信作(林遣都)が企画する「お見合い大作戦」の話題に移る。「信作が役場の人と盛り上がったみたいで、『ハチ、お前は絶対参加してや』言われました」と八郎。信作と八郎がいつの間にか「信作」、「ハチ」と呼び合う仲になっていることを知って、喜美子は不機嫌な表情に。信作に「なんで誘ってくれへんの?」と詰め寄るが、それに対する答えは、周囲の目を気にしてうかつに飲みに行けないというものだった。


 照子(大島優子)を加えた幼なじみの3人は「男も女も関係あるか」ということで、無事に「腐れ縁」として決着しているが、周りの目を気にして、喜美子を女性として扱ってしまうのは、信作らしいところだ。男女の仲になるにはあまりにも互いのことを知りすぎているし、「もっと自覚せえ。お前、妙齢やで」と言われても、喜美子にはまったくその気がないのだった。


 小さいときから家族のために働いてきた喜美子は、大阪で圭介(溝端淳平)を好きになったことはあったが男女の仲には疎い。同性との付き合いも子ども時代の延長で、信作と八郎の男同士の関係にも嫉妬してしまう。このあたりが後に結婚して家族を持ったときにどう影響するか気になるところだ。


 同じ頃、川原家は直子(桜庭ななみ)からの「モウイヤ」「モウダメ」「モウアカン」の電報3連発に青ざめていた。父・常治(北村一輝)に似てこらえ性がなく直情的な性格の直子だが、「死にたい」を口にする現代の若者にいちばん近いのも直子かもしれない。何が起こったかはさっぱりわからないが、とにかく大変なことだけは伝わってくる文面に直子の文才を感じた。


■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。