トップへ

大阪発モバイルバッテリーが、世界的クラウドファンディングサイトで大健闘

2019年12月03日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

「SMARTCOBY」公式サイトより

 海外クラウドファンディングウェブサイトKickstarterで、大阪発のモバイルバッテリー「SMARTCOBY」が人気を集めている。


(参考:ライブ配信で拡大するゲーム市場 ライブコマースを超えるトレンドとなるか?


 海外で成功する日本からのテック系キャンペーンが少ない中で嬉しいことではあるが、果たして最終的にどれだけの成功を収めることができるだろうか?


・小型軽量ハイスペックのSMARTCOBY
 大阪に本社を置く株式会社CIOが実施するSMARTCOBYのKickstarterキャンペーンには、開始より2時間で目標金額30万円が集まった。終了まで23日を残す記事執筆時点では、主にアメリカを中心に50人の出資者から、目標金額に対して150%を超す47万円ほどの出資が集まっている。


 世界最小&最軽量(The World’s Smallest & Lightest)を謳うこのモバイルバッテリーは、名刺入れに比較できる厚み13mmという小ささと、卵ふたつ分程度の約137gという軽量さに、8000mAhの大容量バッテリーを搭載。しかも急速充電規格Power Delivery 3.0とQuick Charge 4+に対応するため、iPhoneXSなら30分で50%まで充電でき、18W出力にも対応でMacbookやiPadProも充電可能。モバイルバッテリー自体も18Wでの急速蓄電に対応し、1時間で40%まで充電*、2時間半で満充電できる性能を持つ(これには当然ながら対応する電源アダプタとケーブルが必要だが)。また、本体をチャージしながら他のデバイスを充電するパススルー充電にも対応する。


 SMARTCOBは入出力可能なUSB-C、出力専用のUSB-A、そして入力専用のLightningポートを備える。家電量販店に行けば、販売されているモバイルバッテリーには未だ使用者が多く存在するであろうmicroUSBケーブルを使って充電するものが多いことが判るだろうが、SMARTCOBYはmicroUSB入力端子は持っておらず、これが小型軽量に繋がっているのだろう。そのためある意味でこれはmicroUSBを今も頻繁に使用する人には向かないモバイルバッテリーだと言える。その代わりにLightningやUSB-Cな「モダン」なケーブルで充電するデバイスを普段使うという人にとっては適した製品だろう。


 「モバイルバッテリーは充電できればどんなものでもかまわない」という方には以上の文章は興味の無い内容だろう。しかし、自分の持つデバイスにぴったりかつ可能な限り小さく軽いモバイルバッテリーを求める種類の人には、このような容量、スペック、重量、サイズ、どのような端子がいくらついているのか、といった内容は重要な要素であり、それに合致する製品があればそれがリスクを伴うクラウドファンディングであったとしても出資を惜しまない。この事はKickstarterに次々に登場するモバイルバッテリーをはじめとする充電関連のキャンペーンからも見て取れる(記事執筆現在、実施中のモバイルバッテリーキャンペーンは5つ以上存在する)。


・Makuakeでの成功
 もしかしたらクラウドファンディングに興味のある読者の中にはSMARTCOBYを見て「あれ?これなんだか見覚えがあるぞ?」と思った方もいるかもしれない。


 何を隠そうSMARTCOBYは、日本では既に今年9月にクラウドファンディングサイトMakuakeでキャンペーンが行われたものだ。Makuakeでは目標金額がKickstarterキャンペーンと同じく30万円であったが、キャンペーン終了までに1325人から目標金額に対して1697%となる509万3540円を集める人気キャンペーンだった。


 株式会社CIOはこのほかにもMakuakeでは過去に2度のキャンペーンを成功させており、日本でのクラウドファンディングはもう手慣れたものということだろう。その自信が海外への挑戦に繋がったのだろうか。


・出渋る日本のテック系
 世界中の人々に向けてキャンペーンを展開する事のできるKickstarterではあるが、日本発(を自称する)キャンペーンはそう多くない。テック系キャンペーンに限れば、2009年のローンチから今までの10年間で僅かに160、うち成功しているのは半数以下の75だ。


 加えて、KickstarterやIndiegogoで実施された海外ブランドのキャンペーンが後にMakuakeやGreen Fundingなど日本のプラットフォームで行われるのはよく目にするが、日本のクラウドファンディングで成功したものが海外で成功を収める例もやはり比較して少なく思う。


 「クラウドファンディング」とひとまとめに言っても、プラットフォーム間で文化が違うのは当然のこと、キャンペーンの実施に関してはマーケティングや出資者とのコミュニケーションなどの面でも日本と海外での文化の違いも存在する。単に自社が世に出したいモノを出すと言うだけで無く、それが人々にどれだけ理解され、出資しても良いと思わせることができるか、人気の動向を見極めることも大切だろうし、そして何よりも顔の見えない相手から信頼を得ることができるかどうかも重要・・・というのは日本でも言えることだが、これらの事々を世界中の人々を相手に考えないといけない。


 仮にキャンペーン自体が成功したとしても、国際規格への適合、国際発送や関税に関するゴタゴタ、返品返金処理に政治事情に関わるなど、様々なリスクが待ち受ける。それらに対応しきれるのか不安に思い、海外でのキャンペーン実行に踏み出せない日本の企業も少なからずあることだろう。


 このような状況がある中で、海外で健闘中のSMARTCOBYの姿を見ることは日本人として嬉しいことだ。モバイルバッテリー製品としての魅力もあるだろうが、30万円という目標金額の低さも現時点での成功の要因だろう。


 ひとまず目標金額を達成したSMARTCOBYは現在、世界最大手の広報通信社PRニュースワイヤーを通じて海外向けにプレスリリースを発表したり、アフィリエイトリンクにより出資者がキャッシュバックを受けることのできるKickboosterなどを利用することで更なる出資者を集めようとしている。


 だが果たして500万円を超える資金を集めた日本での成功をKickstarterで再現できるだろうか。キャンペーン終了まで残り23日。大阪から世界に羽ばたきだしたSMARTCOBYは、果たして終了までにどれだけの成果を出せるだろうか?


(Yu Ando)