2019年12月02日 18:32 弁護士ドットコム
就職活動中の学生がOB訪問などで性的な言動等にあう「就活セクハラ」が深刻な問題となっているーー。
【関連記事:バイト先店長と不倫、女子大生の深い後悔「お金がなくて慰謝料を支払えません」】
ジェンダーに基づく暴力について定期的に勉強会を開いている大学生有志のネットワーク「SAY(Safe Campus Youth Network)」のメンバーらが12月2日、東京・霞が関の厚生労働省記者クラブで会見を開き、就活セクハラの根絶を訴えた。
大学生らとともに会見に出席した東京大の林香里教授は、「就職活動において(企業に比べ)圧倒的弱い立場にいる学生が、前に出て声をあげることの意味を十分に理解してほしい」と語った。
「SAY」は11月18日、「実効性ある『就活セクハラ』対策を求める大学生からの緊急声明」を発表。今回の会見は、大学生らの生の声で緊急声明の内容をより訴えかけたいとの趣旨で開催された。
緊急声明では、厚労省が10月に示した、企業にパワハラ防止を求める指針案について、実際にハラスメントを防ぐ抑止力がまったくなく、「具体的な対策への踏み込みが足りない」「『職場』の定義が非常に狭く、就活セクハラの実態への解決として不十分」などと批判した。
また、現在の就職活動は、企業に面接にいくだけでなく、アプリを通じた社員訪問、インターン採用、OBOG訪問などがあり、企業の管理が及びにくい場所・機会での就活セクハラが深刻であると指摘。
その上で、厚労省に対しては、指針案を見直し、企業に就活ハラスメント相談窓口を設置させるなどの具体的対策や、就活セクハラに関する包括的な実態調査を要求している。
このほか、企業に対しては就活生の安全を保障すること、大学に対してはキャリアセンターによる就活セクハラの危険周知、相談窓口の設置といった対策の実施などを要求している。
会見に出席した大学生で、学生団体「Voice up Japan」メンバーでもある山下チサトさんは、ハラスメントを受けた就活生の声として、
「美人ではないけど面接に受かるくらいのかわいさはあるよね」
「恋愛すればもっとかわいくなるのに」
「うちの会社には独身の男がいっぱいいるから、よりどりみどりだぞ」
「女は仕事を結婚への腰掛けにしようとするんでしょ」
「女は20歳までだろ」
などの話を紹介した上で、「10年以上あとに友人からセクハラの被害を報告される…というようなことがあってはならない。政府にも企業にも大学にも、今すぐ学生の身を守る行動をとってもらいたい」と語った。
同じく会見に出席した大学生の對馬尚さんは、「就活セクハラは、就活生の人生選択を狂わせるほど深刻な問題。被害者には落ち度がないということを国が明確にしていく必要がある」と述べた。
「SAY」のメンバーらは、上記のように大学に対しても現状の是正を求めている。
これに対して、メンバーと一緒に会見に臨んだ上智大の三浦まり教授は、大学に所属している立場から、「勤務校に対しては、対策をすべきとの声を内部から上げている」という。
所属先の大学の現状について、三浦教授は「(就活セクハラの)被害が認められない段階でも大学として何をすべきかを検討している」と述べ、「他大学で行っている(就活セクハラ)対策等が報道などで明らかになることは、大学関係者にとっても参考になるニュースだ」と指摘。今後の対策の進展やその広がりに期待感を示した。