2019年12月02日 10:41 弁護士ドットコム
自転車をあらためて眺めてみると、数字が並んだステッカー(シール)が貼られていませんか。それは「防犯登録標識」です。登録は有料(500~600円程度)で、警察のデータベースに登録されます。
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防犯登録は、自転車法12条3項で自転車利用者の義務として定められていますが、実は登録しなかった場合の罰則はありません。
自転車を買ったときに登録してもらうことが多いと思いますが、たとえばネット通販やふるさと納税で自転車を手に入れたような場合、登録を勧められる機会がないかもしれません。
罰則がないからといって、防犯登録しなくても問題はないのでしょうか。中村友彦弁護士に聞きました。
ーー防犯登録をしていない場合、何か問題があるでしょうか
「自転車法(自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律)は、自転車利用者の利便に資することなどを目的に作られており、罰則がないからといって、防犯登録をしなくて問題がないとは言えません。
まず、防犯登録をしていることで、自分が自転車の所有者であることを証明しやすくなります。
例えば、交通事故で加害者に損害賠償請求をしようとした場合、自動車であれば、自動車の登録制度がありますので、事故で損傷を受けた自動車の所有者であることは車検証を提出すれば容易に立証は可能です。
しかし、自転車では、購入してから時間が経過しており、購入時の資料を紛失し、購入したお店も閉店していたりすることもありますので、防犯登録をしていないと、自分が事故で損傷を受けた自転車の所有者であることの証明に悩む事態になることもありえます」
ーーほかにも防犯登録することのメリットはありますか
駐輪していた自転車が盗難されるなどしたが自転車が見つかった場合に、自転車を引き取る際にも、防犯登録されておれば、自分が所有者であるとして円滑に引き渡しを受けることができる可能性が高いです。
また、防犯登録標識が自転車にない場合、職務質問の対象になることが多いですし、防犯登録していない状態で実際に職務質問を受けた場合には、職務質問を行った警察官は自転車の窃盗を疑っているでしょうから、面倒なことになる可能性があります。
ーー罰則のない法的義務はほかにどのようなものがありますか
自転車に関して、罰則はないが法的義務(努力義務を含む)として扱われている主なものとして、自転車保険の加入(自治体によりますが、条例で定めるところが増えています)と13歳未満のヘルメットの装着(道交法63条の11)があります。
防犯登録と同じで自転車の利用者を守るためのものですので、自分や家族のためにも義務を実行することをお勧めします。
【取材協力弁護士】
中村 友彦(なかむら・ともひこ)弁護士
OSAKAベーシック法律事務所所属。幅広く扱っているが、交通事故の被害者側の案件が多く、加害者側・交通事故に関する刑事弁護等も扱っている。
事務所名:OSAKAベーシック法律事務所
事務所URL:http://www.o-basic.net/