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Twitchから有名ゲーム実況者大量離脱 マイクロソフトやYouTube、Facebookへ移籍の理由は?

2019年12月02日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

Gaming Streetより

 海外の有名ゲーム実況者たちが、Twitchを離脱して別の動画配信サービスへの移籍が止まらない。


(参考:海外有名ゲーム配信者「Ninja」、TwitchからMixerに“莫大な金額”で電撃移籍&独占契約


 先日、『ハースストーン』や『チームファイト・タクティクス』の配信で知られる27歳のカナダ人ストリーマー、Disguised Toastが、Twitchを離れることを表明した。Twitchで130万人以上のフォロワーを抱えていた彼は、世界のTwitch配信者でもトップ100にランクインしていた。最後のTwitchでのライブ配信は現在まで7000万回以上再生されている。


 Disguised Toastが次に選んだゲーム配信サービスは、Facebookが運営するゲーム実況者向け配信サービス「Facebook Gaming」。彼は今後、「Facebook Gaming」でゲーム実況を独占配信する。「Facebook Gaming」にとって、Disguised Toastは独占契約に成功した英語圏出身の大物ゲーマーの一人となる。


 すでに巨大なSNSであるFacebookだが、ゲームではまだまだ新興勢力と言えるため、今回の独占契約の成功は、海外のゲーム・コミュニティやゲームメディアで高い注目を集めた。


 ほかにも、2019年はTwitchを離脱する有名ゲーム実況者が一気に増えた年となった。口火を切ったのは8月にTwitchを離れ、MicrosoftのMixerと独占契約を結んだ、『Fortnite』配信で世界的な人気を誇るストリーマーでプロゲーマーの「Ninja」だ(参考:海外有名ゲーム配信者「Ninja」、TwitchからMixerに“莫大な金額”で電撃移籍&独占契約)。


 彼に続いて、『PUBG』や『カウンターストライク』配信で有名なカナダ人ストリーマーの「Shroud」も10月にMixerと独占契約を結んだ。彼らはそれぞれTwitchのフォロワー数が世界1位、3位という、プラットフォームにとって重要なメガストリーマー。そんな2人が2カ月という短期間で相次いで移籍したため、ファンや業界から大きな反響を呼んだ。


 その後もTwitchからのタレント流出は続く。11月には世界的な人気を誇るeスポーツチーム「FaZe Clan」とわずか13歳で契約した、女性『Fortnite』プロゲーマーでストリーマーの「EwOk」がMixerと独占契約。また、『Destiny』の配信で知られるストリーマー「King Gothalion」もTwitchからMixerへ移籍している。


 EwOkやKing Gothalionの移籍は興味深い。NinjaやShroudに比べて知名度もフォロワーも少なく(それでもKing Gothalionは100万人以上のフォロワーがいた)、メインストリームなメディアからも注目される「セレブリティ」とは言えない彼らだが、ゲームコミュニティに根付いた活動で評価されてきたストリーマーというポジションにいるからだ。


 Twitchからの離脱先はMixerだけではない。11月にはアメリカのeスポーツチームで、コンテンツクリエイター集団「100 Thieves」のストリーマー「CouRage」がTwitchを去り、YouTubeと独占契約を結んだことが話題となった。また、『Fortnite』ストリーマーでYouTuberとしても活躍する「Lachlan」も、YouTubeと独占契約を交わした。


 Amazon傘下のTwitch、MicrosoftのMixer、YouTube、そしてFacebookによる、ゲーム実況プラットフォームの覇権争いは今後更に競争が増すだろう。現在市場をリードするのは圧倒的にTwitchだ。StreamElementsの調べによれば、北米でのゲーム実況の視聴時間のシェアでは、Twitchが75.6%と他社を凌駕し、2位はYouTube Gaming、3位はFacebook、4位がMixerと続く。


 ストリーマーが移籍する理由を企業側の意図からも探ってみたい。Twitchからの移籍には、ライバル企業が提示した資金面でのインセンティブ(契約金)が大きいと言われているが、それに加えて、マーケティングや広告、マネタイズのサポートを確約したり、ストリーマーにとって柔軟性ある複数年契約の条件で合意できたことが移籍に繋がったはずだ。例えば2020年には、MicrosoftはXbox One後継機をリリース予定で、MixerストリーマーたちにはXbox関連のマーケティングに参加する機会が提供されると見られる(参考:Xbox One後継機はVR非対応、一方FacebookはBeat Games買収で攻勢強める VR市場の雄たちが下した決断)。


 また、ストリーマーたちの活動が、ゲーム実況に留まらなくなった活動の変化も要因の一つだ。King GothalionやNinjaはゲームを通じたチャリティ活動や、次世代ゲーマーの育成にも力を注いでいる。つまり契約する企業側が彼らのゲーム実況以外の活動の価値に理解を示し、協力的なサポート体制やシステム環境、資金的バックアップを用意できたことも、Twitch離脱の背景の一つにある。


 最後に、日本のメディアではあまり報じられていないが、実はNinjaやShroud、CouRageは「Loaded」というゲーマーのマネジメントエージェンシーと契約しており、Twitchからの一斉離脱の背景には、ストリーマーのビジネスやブランドとのパートナーシップ構築を専門とするLoadedが、他社から好条件を引き出せたことが大きいと推測されている。


(ジェイ・コウガミ)