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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『ドクター・スリープ』

2019年11月29日 19:02  リアルサウンド

リアルサウンド

『ドクター・スリープ』(c)2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、先日東京コミコンで『シャイニング』の顔ハメパネルに挑戦した宮川が『ドクター・スリープ』をプッシュします。


参考:『シャイニング』の続編をどう受け止めたのか? 『ドクター・スリープ』キャスト&スタッフが語る


 映画史にその名を刻むスタンリー・キューブリック監督の傑作『シャイニング』。その40年後を描いた続編となるのが、本作『ドクター・スリープ』だ。


 企画の時点では地雷臭しかしない作品のように思えたが、監督が『オキュラス/怨霊鏡』『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』のマイク・フラナガンという意外な人選に、微かな期待を持ったのを覚えている。結果的に、この『ドクター・スリープ』という作品は、今年一番と言っていいほどの問題作に仕上がっていた。


 コロラド州のロッキー山上にある、雪に閉ざされたオーバールック・ホテルで繰り広げられる惨劇を描いた『シャイニング』。ジャック・ニコルソン演じるジャック・トランスが、呪われたホテルによって狂気へと陥っていった。『ドクター・スリープ』は、そんな惨劇を生き延び、心に傷を抱えた孤独な大人になったダニーが主人公。彼の周りで児童連続失踪事件が起こるなか、ダニーは、「特別な力(シャイニング)」を持ち、事件の現場を“目撃”していたという謎の少女アブラからメッセージを受け取る。アブラとともに事件の謎を追うことになったダニーは、再びオーバールック・ホテルに辿り着くのだった。


 あらすじからも分かる通り、ほぼホテル内で物語が進行していた『シャイニング』とは異なり、『ドクター・スリープ』では、ホテルがメインの舞台となるは物語の終盤だ。また、『シャイニング』では、“呪われたホテル”とその力によって狂気に陥っていく人間の姿が描かれたが、『ドクター・スリープ』では、ダニーが持っている“シャイニング”という力が中心に物語が進んでいく。つまり、キューブリックの『シャイニング』の続編とはいえ、今回の『ドクター・スリープ』は、前作とは方向性が大きく異なっているのだ。


 キューブリックの『シャイニング』については、原作者のスティーヴン・キングがその内容に納得いかず、大きな対立があったのは有名な話。だが、キングは今回の『ドクター・スリープ』を大絶賛しているようだ。そのことからも、本作は「映画『シャイニング』の続編」として観るよりも、「小説『ドクター・スリープ』の映画化」として観るのが正しい見方なのかもしれない。


 とはいえ、キューブリックの『シャイニング』にしっかりとオマージュを捧げたシーンには大興奮。このためにセットで再現させたというオーバールック・ホテルでのシーンは、しっかりとキューブリックの『シャイニング』を意識したものになっている。没後20年を迎えた2019年という年にこの作品を観ることができる意味は大きいだろう。


 日本でも間違いなく賛否両論となろう本作。キューブリックが生きていたら、この作品をどのように評価したのだろうか。(宮川翔)