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東海オンエア「俺らリサイタルズ」MVに見る“愛とリスペクト” その魅力を真剣に分析してみた

2019年11月29日 14:01  リアルサウンド

リアルサウンド

動画サムネイルより

 人気グループYouTuber・東海オンエアの動画『リサイタルズ – 「俺らリサイタルズ」[Official Music Video]』が、公開より10日間で約330万回視聴を記録。今後も、さらに伸びていきそうな勢いだ。リサイタルズとは、東海オンエアのてつや、しばゆー、としみつの3人が、それぞれカリスマ(てつや)、エース(しばゆー)、スター(としみつ)に扮して、結成したユニット。なぜ、この動画がこれほど多くの人から愛されているのだろうか。


(参考:同じ誕生日の東海オンエアてつや&アバンティーズエイジさん 2人の“人が集まる”共通点


・ほとばしるジャイアン愛
 “リサイタル“といえば、あの日本一有名なガキ大将が、公園に子どもたちを集めて開催しているアレのこと。東海オンエアには、ジャイアンに対して少々特別な思い入れがある。東海オンエアでは、これまで「第一回○○選手権」という動画をいくつもアップしてきた。『【第一回】カッコよくオープンカー飛び乗り選手権!!!』、『【絶妙】第一回!ヘタハモり選手権!!!!!!』、なかには何で競っているのかわからない『【第一回】なんの選手権やってるかわからない選手権!』なるものも。


 だが、その多くは第一回で終わり、続編はない。その理由は「第二回以降、第一回の面白さを超えることはないから」という、“面白さ“を追い求める東海オンエアらしいポリシーから。だが、そんなルールを超えたのが、『【カオスすぎ】第1回 ジャイアン選手権!!!』だった。この動画は、誰がいちばんジャイアンらしいかを、てつや、しばゆー、としみつの3人が大喜利で競い合ったもの。


 視聴数は824万回を突破。思わず、その面白さがどのくらい続くのかを検証しようと、なんと第10回まで撮り続けたという伝説の企画だ。「俺こそがジャイアンだ」「俺だ!」「ボコボコにすっぞ!」「母ちゃ~ん」ジャイアンボイスでふざける彼らの喉と精神は限界を超え、それを編集する虫眼鏡も、全回を見続ける視聴者も疲労困憊となったが、バカバカしさを極めた先に愛しい時間があることを教えてくれた企画でもあった。


 そんな思い入れのある企画からもわかるように、“リサイタルズ“は彼らのジャイアンへの愛が込められた動画。誰が1番ジャイアンらしくリサイタルを楽しめるか、そんな、第11回ジャイアン選手権ともいえる作品だ。


・にじみ出るアイドルマインド
 「俺らリサイタルズ」は、ジャイアンに加えて、彼らのアイドルに対するリスペクトが込められていることに気づく。それは、てつやが嵐や私立恵比寿中学など多くのアイドルグループを応援していること、としみつがSMAPファンであることに所以しているようだ。結成報告をした動画『リサイタルズ「YouTube ライブ配信!」』は、嵐の記者会見をオマージュしたもの。充実に再現できるのは、それだけ嵐のことが好きだから。口調や表情など細部にまで意識が届いているのに、手元のマイクはマジックという東海オンエアらしさも健在しているのが微笑ましい。


 かつて、てつやは街で視聴者に声をかけられたとき、自分が嵐に会ったときにされたい対応を心がけていると話していた。東海オンエアにメンバーカラーがあるのも、彼のアイドル好きから。ファンの期待を背負い、その想いに応えられるように努力し続ける。一方で、人間らしく身近な存在であるアイドル。私生活をもさらけ出す東海オンエアはアイドルと全く同じというわけではないが、アイドルマインドを持ったエンターテイナーであることは間違いない。


 そんな彼らの本気に応えたのが、音楽業界で第一線で活躍するプロの制作陣だ。作曲を手がけたケンカイヨシは、ぼくのりりっくぼうよみ、みやかわくん、CHEMISTRYに楽曲を提供してきた実績の持ち主。本作は後輩であるマツバ ケンタとの共作。マツバもTwitterで「今回のような楽曲制作は初なので、沢山観て頂けて不思議な気分ですがめちゃくちゃ嬉しいです」とコメント。新たな取り組みに、ワクワクしたことが伺える。ストリングスアレンジの塩野海も、私立恵比寿中学真山りかのソロ曲を手がけたこともある実力者。ストリングス担当の須磨和声は、多くのCMソングを手がけ、有名アーティストのライブサポートミュージシャンとしても活躍。ドラムプログラミングのTomohiko Togashiは、アイドルグループMIGMA SHELTERの楽曲制作にも携わっている。


 また、アイドル感を醸し出す振り付けは、振付稼業air:manが担当。いきものがかりの「じょいふる」、きゃりーぱみゅぱみゅの「PONPONPON」など、キャッチーな振り付けで注目を集めてきた振付稼業air:man。これまでジャニーズアイドルの振り付けを多数手がけてきており、その実績一覧にはとしみつの好きなSMAPの名前も。「俺らリサイタルズ」のスタンドマイクで、ファンと共に手振りで楽しく踊れるスタイルは、NEWSの「チャンカパーナ」にも近いテイストだ。


 作曲、アレンジ、振り付けと、本物のアイドルソングを作るかのような制作陣を揃え、作詞を手がけているのがエースことしばゆーというのが、やはり東海オンエアだ。だが、そのしばゆーの紡いだ歌詞のクセの強さは、ジャニーズアイドルを多く生み出してきたジャニー喜多川氏に通じるものを感じてしまう。〈米早炊きでJKギャン泣き〉など、出てくる歌詞にはいちいち「どういうこと?」と頭の中にはてなが出る。その圧倒的な違和感を放つパワーワードと、同時に響きの気持ちよさを成立させる技は、まさに〈天才 才 才 天空は Mine〉だ。


 以前『ヘタハモり選手権』の概要欄には、こんなことが書いてあった「大抵のことは、Don’t Think. feelで行きたいものですが、人生はなかなかそうは行ってくれないのが現実。物事をしっかりと考え、行動せねばなりません。しかし時には、瞬間的に動くことも大切・・・。これを我々は「最大瞬間風速」と言って使っています。ジャイアン選手権を撮った時も、てつやの『あの遠くに見える山は本当に山なのか!?』という動画もきっとそうでしょう」。


 愛とリスペクト、そして非凡なセンスがかけ合わさってできたのが「俺らリサイタルズ」なのだ。感性や勢いで突っ走る〈ガキ大将も楽じゃない〉。だが、それをやってのける東海オンエアに、私たちはいつもエネルギーをもらう。「バカバカしい」を突き詰めれば「エンタメ」になる。「遊び」を極めれば「仕事」になる。瞬間最大風速が吹き荒れれば、人々を賑わす嵐になる。そして、かっこよくて面白い人生を送りたいなら、自分たちでリサイタルすればいいのだ、と。


(佐藤結衣)