JR東日本とJR東日本スポーツは11月26日、山手線内で筋力やメンタルのトレーニングが楽しめるアイフォン専用アプリ「'TRAIN'ing」の試験運用を始めた。期間は2020年3月12日まで。アプリ内では位置情報サービスと連携して、電車内でできるトレーニングを音声で案内してくれる。
アプリの趣旨について、JR東日本は「単なる"移動"の時間を"成長"する時間に変えようというのがコンセプト」と説明する。そこで、身長179センチ、体重81キロ。最近ベルトに乗っかるお肉が気になり始めた筆者(26歳・男)が山手線でのトレーニングを体験してみた。
電車を待っている間にアプリをセット フィジカルとメンタルを鍛える
まずアプリ利用に際して必要なのが、音声を聞くためのイヤホン(ヘッドホン)だ。さらに、乗車前にはチェックインをする必要がある。駅に着いたら「乗車駅」と「降車駅」を選択。続いて、トレーニングの目的を「鍛える」か「整える」、トレーニングしたい部位を「フィジカル」か「メンタル」から選ぶよう指示される。
筆者は職場のある「浜松町駅」から「東京駅」までを選択。目的はもちろん「鍛える」、部位を「フィジカル」に設定した。イヤホンの装着からチェックイン完了までの所要時間は約1分。電車を待つ間に十分できるだろう。完了後は、透明感のある女性の声で
「フィジカルを鍛えるあなたのためのトレーニングプログラムを作成しました」
とアナウンスが流れて、やる気を引き出してくれる。乗車すると、スマホが自動でビーコンを受信して、電車内でのポジションに応じて「ギア」を選択する。「つり革」「手すり」「座席」から「つり革」を選んだ。
トレーニングは、発車後15秒ほどでスタート。最初は「ストラップアップ」というトレーニングだった。
「両手でつり革を持ち、首をすくめるように、ゆっくり息をして。1、2……」
車内はやや混んでおり、筆者の両サイドにも立っている人がいたが、腕や脚を動かすトレーニングはないので、特に周囲に迷惑をかけることもなさそうだ。同社のリリースによると、乗車時間や乗車位置、混雑度状況に応じたプログラムを提供しているという。
山手線内で「満点の星空を想像しましょう」
次のトレーニングは「ストラップスネーク」。体を曲げて、つり革を持つ手と、同じほうの尻を近付ける運動だ。8カウントに合わせてゆっくり息を吐きながら持ち上げ、続けて息を吸いながら下ろすよう促される。今度はつり革を持つ手を変えて逆側……と。アナウンスは的確で分かりやすいが、喧騒に包まれた電車内では音量を上げないと聞こえづらいと感じる部分もあった。
最後は「ストラップダウン」。一つのつり革を両手で持ち、肩甲骨を意識しながら肩の上下運動を繰り返すものだった。ちょうど1駅あたり1つのトレーニングが割り当てられており、3駅目の東京駅に到着するタイミングでプログラムが自動で終了した。
ちなみに、帰りはトレーニングの目的に「整える」、部位は「メンタル」を選択してみることに。ギアには「座席」を選んだ。ガイドでは、背もたれから離れて座り、目を閉じるよう促され、
「今、あなたは大地に横たわっています。満点の星空を想像しましょう。風を感じながら……」
カウントに合わせて、ゆっくりと呼吸をする。ちなみに、このロケーションはプログラムによって変わった。2つ目は「大きな木が生い茂る森の中」、3つ目は「静かな湖畔」がモデルになっており、ロケーションに合わせて、水のせせらぎや鳥のさえずりが聞こえてきた。
基本的にはメンタルトレーニングなので、その状況をイメージすることが重要なのだろう。指示は筋トレと異なり、深呼吸をしたり、手のグーパーを繰り返したりするものだった。また、あまりにシチュエーションに入り込めなかった場合は2回までプログラムをスキップして、次のプログラムに進めることができた。
「データ取得のために山手線を選んだ」とJR東日本
トレーニング記録も分かりやすく可視化されており、1プログラムあたり独自ポイント「1st」が貯まっていく。また、ポイントは月別に棒グラフで表示され、トレーニング状況を一目で確認できるようになっている。
トレーニング内容や回数、駅区間などに応じて、アプリ内ではバッジが付与される仕組みをもある。さまざまなバッジを集めていくことで、モチベーションを保つことができる。集めたバッジコレクションを、専用ハッシュタグを付けて、ツイッターやインスタグラムに画像投稿することが推奨されており、知人らと競争するのも楽しそうだ。
ツイッター上では
「山手線よりも湘南新宿ラインとか埼京線とかっていう長い電車の方がよくないかなー」
「ラッシュ時の山手線で筋トレは厳しくない?」
と山手線のチョイスに疑問に感じた人も多かったようだが、同社の広報は
「今回は実証実験なので、データ取得のために利用者の多い山手線を選んだ」
と説明。トレーニングの内容も前述の通り、他の乗客に迷惑をかけるものではないという。3月に実証実験を終えた後には「反応を踏まえて実用化を検討していく」とした。
首都圏で働くサラリーマンの中には、毎日の通勤時間にストレスを感じている人もいるはず。今回の体験を通じて、ストレスフルな満員電車がちょっとしたリフレッシュタイムに変わるかもしれないと感じた。