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『花と雨』土屋貴史監督、映像への強いこだわりを語る 「東京の街の光や影が印象に残るように」

2019年11月28日 12:02  リアルサウンド

リアルサウンド

『花と雨』(c)2019「花と雨」製作委員会

 2020年1月17日に公開される映画『花と雨』より、メガホンを取った土屋貴史監督からのコメントが公開された。


参考:予告編はこちらから


 本作は、SEEDAが2006年に発表したアルバム『花と雨』を原案に、ヒップホップアーティストである彼の自伝的なエピソードも交え、「現実と理想」「生と死」「アイデンティティの探求」など様々なテーマを通じて、何者かになりたい1人の青年が葛藤しながら成長する姿を描いた青春映画。


 オーディションを勝ち抜いた笠松将が主演を務め、大西礼芳、岡本智礼らが共演。ミュージック・クリップやCMで数々の受賞歴を持ち、Perfumeや水曜日のカンパネラ、ゆずなど多くのアーティストのMVを手がける映像ディレクターの土屋が監督を務めた。なお、本作ではSEEDA自身が音楽プロデュースを、MC・仙人掌が演技指導を担当した。


 土屋は、長編映画の初監督について「いつか長編を撮りたいと思って、いろいろアイデアは考えてきましたけど、なかなか実現までもっていくのは大変だった」「『花と雨』は映画好きに観てほしいです。正直言ってあまり一般のニーズに合わせて映画を作ることに意味があると思えないんですよね。どうせ超大変なんだったら、好きなものを好きなように作るしかないなって思った」と語った。


 さらに「自分は説明しすぎる作品が苦手で、今回は突き放した描写もできると思ったんですね。この作品はラップの世界を描いた作品なわけですけど、ラップってそもそも言葉だから、それ以上あまり言葉を付け足しても意味がないと思って。できるだけ言葉ではなく、映像で語ることを意識して取り組みました。だから、脚本にあったのに、最終的に削ぎ落とした台詞やシーンもかなりありましたね」と制作の裏側を明らかにした。


 映像へのこだわりについては、「言葉のみに頼ることなく、映像全体で体験として登場人物の感情の揺らぎを表現しようとしているので、映像が美しいという反応は単純に嬉しいです。色の華やかさから、ミュージック・ビデオ的と捉えられる方もいるようですが、常に感情と結びついた画面設計になっています。フォーカスが合っていない部分にこそ空気や気配を宿らせられるので、ボケ味が独特で、奥行きの表現がしやすいアナモルフィックレンズを使うことによってパッケージしています。また色彩のコントラストも重要でした。常に暗部に青味を帯びた色を使うことによって映画全体での色のトーン、雨の湿気を絶やさないようにしています。東京の街の光や影が印象に残るようになっているかと思います」と語った。 (文=リアルサウンド編集部)