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京アニ放火の被疑者、全身90%やけどの「医療費」は誰が負担する?

2019年11月28日 10:41  弁護士ドットコム

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7月に多くの犠牲者がでた「京都アニメーション」の火災事件。殺人などの容疑で逮捕状が出ている被疑者の男性(40代)は、重いやけどで一時は生命も危ぶまれていたが、京都府警が病院で事情聴取を始めたという。


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日刊スポーツ(11月27日)によると、重いやけどを全身の約90%に負っていたが、他人の皮膚の提供を受けずに広範囲の火傷を治療した初の事例だという。



こうした治療にかかった費用は、誰が負担するのだろうか。髙橋裕樹弁護士に聞いた。



●逮捕状が出ている段階は「自己負担」

ーーこうした治療にかかった費用は、誰が負担するのでしょうか



結論としては、逮捕状が出ているだけの段階の京アニ事件の被疑者男性にかかっている医療費は、自己負担になります。



そのため、被疑者男性は、健康保険を利用し、加えて傷害保険など利用できる保険があれば、その補助を受けて治療費を支払うことになります。



ーーもし支払えなかったら、どうなるのでしょうか



本人に資力がなく自己負担分の医療費が支払えない場合、恐らく病院は医療費を回収できないことになります。



現時点で資力がなければ、働いて得た賃金などの収入を差し押さえるのが一般的ですが、今後、勾留されてしまえば、働くことができませんし、もし実刑となり収監されても働けません。



そして、被疑者男性の家族には一切支払い義務がありませんので、家族にも請求できません。



ーー被疑者の男性は、逮捕状が出ていますが、関係ないのですか



京アニ事件の被疑者男性の場合は、逮捕勾留されていないので、現時点では自由の身です。つまり、理論上は、自由に病院に治療に行ける立場ということになります。



ですので、たとえ逮捕状が出ていても、その逮捕状の執行(逮捕)がなされるまでは、捜査機関によって身柄拘束を受けている状態ではありません。治療費は自己負担になります。



●逮捕勾留後は「公費負担」

ーー逮捕された場合、医療費はどうなりますか



一般的に逮捕勾留中に身柄を拘束されている警察署などで体調を崩したような場合、もしくは慢性的な疾患があって薬が必要という場合は、警察署に月2回程度往診に来る医師に診察をしてもらうこともできますし、薬の処方を受けることもできます。



また外部の病院に警察に連れて行ってもらい診察を受けることもできます。そして、これらの費用は公費負担、つまり税金などで賄われることになります。



公権力によって身柄を拘束され、本来自由に行くことが出来るはずの治療にも自由に行けない状態であるため、公費負担とされていると考えられます。



ーー逮捕がなされるかどうかで、医療費負担は大きく変わるわけですね



京アニ事件の被疑者男性は、症状がある程度回復した時点で、逮捕勾留される流れになるのではないかと思います。



しかし、逮捕勾留後も、被疑者男性に対しては定期的な治療や投薬が必要になると思われますが、その場合は、身柄拘束下での診療・投薬になりますので、医療費は公費負担になると思われます。



なぜ公費で被疑者男性の治療をしなければならないのかと考える人もいるかもしれませんが、被疑者が適切に裁判を受けるためには診療・投薬が必要です。そのための医療費の公費負担だとお考えいただければと思います。




【取材協力弁護士】
髙橋 裕樹(たかはし・ゆうき)弁護士
無罪判決多数獲得の戦う弁護士。依頼者の立場に立って、徹底的に親切に、誰よりも親切でスピーディな、最高品質の法的サービスの提供をお約束!でも休日は魚と戦う釣りバカ弁護士!
事務所名:アトム市川船橋法律事務所
事務所URL:http://www.ichifuna-law.com/