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「数のテロリズムに屈しない」東大特任准教授「中国人は採用しない」発言炎上に反発

2019年11月25日 15:21  弁護士ドットコム

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AI関連の企業のCEOで、東京大学大学院情報学環・学際情報学府の大澤昇平特任准教授(特定短時間勤務有期雇用教職員)が、自身のTwitterで11月20日、「(自社では)中国人は採用しません」「そもそも中国人って時点で面接に呼びません。書類で落とします」と投稿し、波紋を呼んでいる。


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これを受け、大学はサイト上で「不適切な書き込みに関する見解」を示した。



「当該教員個人または兼務先組織に関するものであり、学環・学府の活動とは一切関係がありません」、「学環・学府構成員から、こうした書き込みがなされたことをたいへん遺憾に思い、またそれにより不快に感じられた皆様に深くお詫び申し上げます」(東京大学大学院情報学環長・学際情報学府長 越塚登)



一方、大澤氏も、「個人に帰属するアカウントで行った私企業に関する発言であり、東大の思想を代表したものではありません」としたうえで、「一部の人物が主張している、『これは差別煽動・ヘイトスピーチであり、レイシズムやホロコーストを助長するものである』と主張は、『風が吹けば桶屋が儲かる』くらい、論理的な飛躍が大きいものです」などとして、「不当な『数のテロリズム』に屈するつもりはありません」と反発した。







特定の国籍の人物を「採用しない」「書類で落とします」とする採用方針に、法的な問題はないのか。憲法にくわしい作花知志弁護士に聞いた。



●「採用の自由」として認められるのか?

これはとても難しい問題ですので、一般論としてお話をさせていただきます。



最高裁判例(最高裁大法廷昭和48年12月12日判決)は、憲法の職業選択の自由(22条)及び財産権(29条)により、企業者が採用の自由を有すると判断し、思想信条の自由を理由とする採用拒否が直ちに不法行為となるものではないと判示しました。



また、労働基準法3条は、国籍等を理由とする労働条件の差別を禁止していますが、採用の条件自体は労働条件ではないので、採用には適用されないとされています。



ただ、採用の自由も、憲法14条が規定する法の下の平等、憲法13条が保障する人格権、憲法27条の労働権保障等の理念を具体化した立法や法解釈により制約されることは否定できないところです。



●採用の差別的待遇も法的に禁止すべきか

日本では性別などを除き(男女雇用機会均等法5条)、一般的に採用における社会的差別を禁止する立法を欠いています。



ただ、日本は未批准ですが、ILO111号条約は、雇用(採用)について、差別待遇を行うことを禁止していますし、諸外国でも雇用(採用)についての平等を求める立法が制定されています。



外国人労働者が増大している日本においても、そのような社会的差別を禁止する立法が求められる時代になっていると思います。



また、仮にそのような立法が制定されていない段階においても、具体的な事件において、採用の拒否が不法行為(民法709条)として違法となるのではないかという点は、司法的救済において問題となることになります。



その場合には、上でも引用した憲法14条等の規定や人種差別撤廃条約の規定の存在が、不法行為(民法709条)の解釈において斟酌されることになると思います。




【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属。
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/