トップへ

松下洸平が打ち明けた過去 『スカーレット』絵に込められた想い

2019年11月25日 12:12  リアルサウンド

リアルサウンド

『スカーレット』(写真提供=NHK)

 喜美子(戸田恵梨香)は、八郎(松下洸平)が持っていた深野心仙(イッセー尾形)の絵を想像して1枚の絵を描く。NHKの連続テレビ小説『スカーレット』が9週目を迎え、深野の絵を通じて、喜美子と八郎の距離が少しずつ近づいていく。


 八郎は深野に、「日本画を愛好していた祖父が大切にしていた深野の作品を、闇市でお米と卵に変えた」と打ち明けた。八郎の告白は戦争の傷跡そのものだった。八郎は深野への後ろめたさから頭を下げたが、深野は「(私の絵を)忘れんとってくれて、ありがとう」と笑顔で彼の頭を撫でた。


【写真】戸田恵梨香インタビューカット


 喜美子は八郎の告白に心を動かされ、八郎の言葉を一つ一つ思い出しながら、深野の絵を想像して描く。深野が描いたであろう美しい情景が、色鮮やかな喜美子の絵として生まれ変わる。喜美子が火鉢のデザインを考えたときは、荒木荘の人々を想像しながら独創的なバラを描いた。誰かを想いながら描く喜美子の絵は、深野とは違う斬新さがあるが、深野のもつ創作への情熱と同じぐらいの熱量が感じられる。


 翌日、八郎の目の前に現れた深野は1枚の絵を差し出した。八郎のために描いた深野の作品だった。八郎は過去を打ち明けたとき、心苦しかったに違いない。しかし深野にとっては、自分の作品を忘れずにいてくれたことへの感謝の思いがあったのではないだろうか。八郎に作品を渡す深野の目は穏やかだった。作品を受け取った八郎は「ありがとうございます! もう……肌身離さず! 大事に大事に!」と、何度も何度も感謝を伝えた。


 八郎は喜美子の絵も受けとり、その絵に込められた想いを受けとった。八郎は楽しそうに絵について語る喜美子をじっと見つめる。喜美子が「好きなんです、描くの」と言うと、八郎は笑みを浮かべながら「分かります」と答える。八郎は美術を愛する人の想いを感じとることができるのだろう。深野の作品は喜美子と八郎の距離を縮めた。美術を愛する純粋な想いは、喜美子と深野の師弟関係だけでなく、深野と八郎、喜美子と八郎をも繋いだのである。


(片山香帆)