2019年11月24日 10:01 弁護士ドットコム
性被害の当事者団体など12団体でつくる「刑法改正市民プロジェクト」が11月21日、衆議院第二議員会館で、性犯罪に関する刑法改正を求める集会を開いた。
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性暴力救援センター「SARC東京」の運営委員をつとめる田辺久子さんは、被害届が受理されず認知件数からもこぼれ落ちている性暴力被害があるといい、支援現場から見えてきた今の現行刑法の課題について報告した。
2012年6月から性暴力支援を始めた「SARC東京」。2018年4月から19年3月までの1年間に寄せられた電話相談は4925件にのぼった。そのうち、医療機関や弁護士、警察などに同行したのは242件(144人)。被害者は、20代以下の若い世代が6割をしめる。
このうち、警察に同行したものに絞ってみると、被害届が受理されたのは22.2%、被害届不受理が25%。起訴されたのは5.5%で、有罪判決が出たのは全体の2.7%だった。不起訴は5.5%だった。
被害届を受理しない理由として、警察からは「暴行・脅迫がない」、「抵抗していない」、「証拠がない」、「加害者が同意があると言っている」などと説明されたという。
中には「加害場所からSOSを出していない」、「2度被害に遭っているのに逃げなかった」といった性暴力被害者の心理や行動を理解していないものもあった。
加害者が被害者よりも優越的な立場にあった場合、拒否したり逃げたりすることができずに、一定期間被害が継続するすることもある。また、被害の認識までに年単位の時間がかかることもある。
田辺さんは「警察は確実に事件化できるものについてのみ、被害届を受理し、事件を取捨選択している。しかし、捜査をやった上でそのような判断をしているのか分からない」と話す。
現在の法律では、13歳以上の男女に対して「暴行または脅迫」を用いて性行為をした場合、刑法の強制性交等罪(13歳未満の男女の場合、暴行脅迫要件はない)、「心神喪失または抗拒不能」となった人に性行為をした場合、刑法の準強制性交等罪が成立する。
過去の判例では、この「暴行または脅迫」が「被害者の反抗を著しく困難ならしめる程度」である必要があるとされている。
こうした要件からこぼれ落ちる性被害について、加害者が罰せられない状況でいいのか。田辺さんは、地位関係性を利用した性行為の処罰規定を広げることや、暴行脅迫要件の緩和などが必要だと訴えている。
法務省は2018年4月、性犯罪に関する刑法見直し検討に向けたワーキンググループを設置し、現在も実態調査をおこなっている。
性暴力被害者らでつくる一般社団法人「Spring」メンバーは、10月に開かれたワーキンググループで自身の被害経験を語った。集会ではヒアリングの様子を報告し、メンバーは「思っていた以上に、親身に話を聞いてくれた」と振り返った。
法務省の担当者からは、被害体験を語れるようになった理由を尋ねられたという。ヒアリングに参加した佐藤由紀子さんは「Springに出会えたことで、自分の被害を人生のタブーにしなくていい、被害体験を社会をよくするための社会資源にしていこうと思えた」と話す。
「Spring」代表理事の山本潤さんは「実態に沿った刑法改正をしてくれることを臨む」と刑法改正に期待を寄せた。