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鈴木京香、吉田羊、米倉涼子……秋ドラマ、物語の中心にいるのは“頑張る”アラフォー・アラフィフ女性?

2019年11月23日 09:31  リアルサウンド

リアルサウンド

鈴木京香『グランメゾン東京』(c)TBS

 石原さとみや黒木華、深田恭子、杏など、アラサー女優が主演を務め、テーマも恋愛要素が多めだった夏ドラマの作品傾向から一転。今クールのドラマを見渡すと、『グランメゾン東京』(TBS系)の鈴木京香や、『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系、以下『ドクターX』)第6期の米倉涼子、ドラマBiz『ハル ~総合商社の女~』(テレビ東京系、以下『ハル』)の中谷美紀、『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)の吉田羊、稲森いずみ、『リカ』(東海テレビ)の高岡早紀など、アラフォーやアラフィフ女優が主役もしくは非常に重要役を担う作品が多くなっている。この変化の理由は何なのか。


 一つには、秋ドラマには各局が力を入れて勝負に出る傾向が挙げられるだろう。夏に比べ、在宅率が高くなることや、クリスマスや年末に向けてテレビ番組も勢いを増してくる秋。例えば、『ドクターX』が2012年の第1期から現在の第6期に至るまで、単発SPを除いて全て10月期に放送されていることからわかるように、確実に数字をとりにいきたい勝負の秋には、人気作の続編が放送されることも多い。


 また、主役や準主役などの重要ポジションに40~50代の役者を起用することによって、テレビドラマを最もよく見てきた40~50代の視聴者層の共感を得やすいということもあるだろう。実際、SNS上には『グランメゾン東京』を中心として、アラフォー・アラフィフ女優がメイン級をはるドラマに対して「安心感がある」「贅沢」という声が多い。


 また、かつてのように若手俳優にスターがあまりいなくなったことや、テレビ東京のドラマなどをきっかけとしたバイプレイヤー流行りの傾向もあり、経験豊富な俳優がますます重用される時代になっていることもある。とはいえ、かつてヒロインを務めていた女優たちが、そのままアラフォー・アラフィフとして同じように活躍しているわけではない。少なくとも、昔と大きく異なる傾向はいくつかある。それは、アラフォー・アラフィフ女優の描かれ方だ。


【写真】『まだ結婚できない男』の稲森いずみと吉田羊


 かつて秋ドラマといえば、クリスマス付近でドラマのクライマックスを迎えることから、恋愛モノが多く放送されていた。しかし、今は、「他人の恋愛とか、どうでもいい」と考える人が多いこともあり、恋愛要素は排除、あるいはかなり希薄になっている。その代わりに定番になりつつあるのが、メインあるいは重要な役割の女性が、未婚あるいはシングルマザーという設定だ。とはいえ、現実でも、未婚率&離婚率が非常に高くなっている今、むしろドラマの女性たちが遅ればせながら現実に近づいてきたと言っても良いかもしれない。


 アラフォー・アラフィフ女性たちの働く姿の描き方は、大きく分けて二分している。


 例えば『ドクターX』の米倉涼子や、『ハル』の中谷美紀など、専門性の高い職業の女性が描かれる場合、その鮮やかな仕事ぶりや、自分の信念を貫く姿勢、長いものに巻かれない生き方に、憧れを抱く女性たちが多いだろう。こちらは従来の女性のお仕事モノの延長線上で、ワクワク感や爽快感を与えてくれる作品だ。


 その一方で、『グランメゾン東京』の鈴木京香や、『まだ結婚できない男』の吉田羊など、仕事は専門的であっても、自分の能力の限界を感じたり、努力不足を思い知ったり、自分の思慮の浅さを感じたり、思い描いてきた理想と現実のギャップに苦しんだりしながら、必死にもがく女性像も目立つ。


 特に視聴者に支持されているのは、これまでの美しさ・高貴さのイメージを捨て、ナチュラルに年齢を重ねた様子を見せている鈴木京香だ。木村拓哉と互いに「おじさん」「おばさん」と呼び合い、恋愛関係を越えた相棒として信頼関係を築いていく姿は、愛おしくも見える。


 逆に、『リカ』の高岡早紀などは自分の理想とのギャップがあまりに著しく、こじれにこじれた歪んだ自尊心で攻撃性を高めていくのだが……。


 厳しい現実に直面しながら、必死でもがき、頑張るアラフォー・アラフィフ女性が物語の中心にいる今クールのドラマ。面白いのは、かつてはこうした現実に抗い、もがく女性像が描かれるのは、アラサーヒロインのドラマに多かった気がすること。人生100年時代を迎えようという今、人生を見つめ直すとき、再起をかけて新たなチャレンジに乗り出すときが、アラフォー・アラフィフという時期に移行してきているのかもしれない。


(田幸和歌子)