渋谷PARCOが11月22日にグランドオープンする。
1973年に開業し、2016年8月にビルの建て替えのために一時閉店となっていた渋谷PARCO。かつてのPart1とPart3を1つにした建物は、予想以上に巨大だ。店舗数は193店舗。1969年の池袋PARCO開業から50年目に生まれ変わった渋谷PARCOは、どのようなスポットになっているのだろう。
CINRA.NETは本日11月19日に開催されたメディア向け内覧会を訪問。店内をレポートする。
■「ニーズを満たす」ではなく、「ニーズを作る」ための商業施設。実際のところの感想は……
新生・渋谷PARCOのビルコンセプトは「世界へ発信する唯一無二の次世代型商業施設」。ニーズを満たすのではなく、ニーズを創造し、新しい消費や価値観を提案することを目指しているという。
実際に全フロアをまわってみたのだが、筆者の素朴な感想は「めちゃくちゃ面白い」。かなりの長時間いても飽きなさそうな、ここでしか体験できない感覚があった。エッジの効いた着想をフロア構成にまで落とし込んで大胆に展開した、かなり攻めた商業施設になっている。各フロアを見ていこう。
■1F「SHŌTENGAI-EDIT-TOKYO」&ナカシブ通り
店内に入ると、いきなり挑戦的だ。GUCCIやCOMME des GARÇONS GIRL、shu uemuraなどに加えて、クラウドファンディングで資金募集中のプロダクトやまだ製品化されていないプロトタイプなどを展示するショールーム「βOOSTER STUDIO by CAMPFIRE」、Discover Japanによる初の実店舗「Discover Japan Lab.」といった新たな店舗も出店しており、独創性や「面白さ」を重視する渋谷PARCOのスタンスが示されている。
店内音楽はCORNELIUSが監修。CORNELIUSによるここでしか聴けないオリジナル楽曲や、自らが各地からセレクトした音楽が使用されるほか、定刻を知らせるジングルも作成した。
路面店となるポップアップ「COMINGSOON」はROCKETがフードカルチャーを提案するスペース。第1弾は平野紗季子によるフードインディーズレーベル「HIRANO FOOD SERVICE」が出店する。
建物を貫いてペンギン通りとオルガン坂をつなぐ通路「ナカシブ通り」にはアートウィンドウが設置されるほか、六本木の伝説的なレコード店「WAVE」を引き継ぐプロジェクトによる初の実店舗も。幅約17メートルとなるアートウィンドウの第1弾アーティストは田名網敬一。
■B1F「CHAOS KITCHEN」
飲食店を中心にしたレストランフロア……と思わせつつ、一筋縄ではいかないのが渋谷PARCO。アートギャラリーのGALLERY Xやディスクユニオンによるレコード店「ユニオンレコード渋谷」、CLUB QUATTROがプロデュースするミュージックカフェ&バー「QUATTRO LABO」、さらに『FUJI ROCK FESTIVAL』のオフィシャルショップであるGAN-BANの実店舗なども軒を連ねる。環境デザインは建築家の藤本壮介が手掛けた。
飲食店では五反田に本店を構える「うどん おにやんま」、ジビエと昆虫料理の「米とサーカス」、渋谷の名店が復活した「ON THE CORNER Shibuya」、中目黒のフィッシュバーガー専門店「deli fu cious」、福岡の人気ハンバーグ店「極味や」などが出店。
新宿2丁目発のバー「Campy!bar」は「老若男女・セクシュアリティなんでもあり」を謳う。
■2F「MODE & ART」
2Fには「A.P.C.」「UNDERCOVER NOISE LAB」「ISSEY MIYAKE SHIBUYA」「COMME des GARÇONS JUNYA WATANABE MAN / COMME des GARÇONS HOMME」といった店舗に加えて、『美術手帖』が運営するアートのECサイトの実店舗「OIL by 美術手帖」も出店。共用部分となる通路はテセウス・チャンが手掛けた。 NANZUKAも運営に携わるスペース「2G」では、初回展示としてダニエル・アーシャムと空山基によるコラボレーション展を実施。
■3F「CORNER OF TOKYO STREET」
3Fはパルコが運営する編集型売り場「GEYSER PARCO」を中心に、半数以上が商業施設初出店になるというフレッシュなフロア。「GEYSER PARCO」は4Fにある「PORT PARCO」と同じく、次世代のファッションデザイナーやブランドのインキュベーションを目的とした店舗とのこと。
■4F「FASHION APARTMENT」
4Fはショップに加えて、「PARCO MUSEUM TOKYO」や、ほぼ日刊イトイ新聞が「東京の文化案内所」をコンセプトに運営する「ほぼ日カルチャん」も。
「PARCO MUSEUM TOKYO」ではオープニング展示として大友克洋と河村康輔の展覧会『AKIRA ART OF WALL Katsuhiro Otomo × Kosuke Kawamura AKIRAART EXHIBITION』を開催。渋谷PARCO建て替え工事の仮囲いを演出していた「ART WALL」を再びコラージュ作品として展示するほか、『AKIRA』作中に登場するアキラの玉座などを再現する。
「ほぼ日カルチャん」では東京で開催されている舞台や映画、展覧会、ライブなどをほぼ日の視点からセレクトして紹介。「ほぼ日手帳」や「ほぼ日の水沢ダウン」など、ほぼ日による商品も購入できる。
■5F「NEXT TOKYO」
5FはECとリアル店舗をつなぐことをコンセプトに据えた「CUBE PARCO」を中心に、テクノロジーを体感しながらショッピングできるエリア。にゃーSHOPやAnker Store、JINSなどが出店している。
■6F「CYBERSPACE SHIBUYA」
6Fは国内外で人気のゲームや漫画などを大々的にフィーチャー。国内初となる任天堂の直営オフィシャルショップ「Nintendo TOKYO」をはじめ、ミュウツーの展示がとにかく目を引く「ポケモンセンターシブヤ」、『刀剣乱舞』の限定グッズも販売される「刀剣乱舞万屋本舗」、『ONE PIECE』や『僕のヒーローアカデミア』など『週刊少年ジャンプ』連載作品のグッズなどを販売する集英社オフィシャルショップ「JUMP SHOP」などが出店している。
「Nintendo TOKYO」は店内に『マリオ』シリーズや『ゼルダ』『スプラトゥーン』『どうぶつの森』といった主要タイトルのモニュメントも展開。国内初ということもあり、人気店になりそうだ。
■7F「RESTAURANT SEVEN」
やや大きめな規模の飲食店が展開されているエリア。飲み会やパーティーなどの催しに使用することを想定しているとのこと。
■8F「THEATER / CINEMA / GALLER」
このフロアには「PARCO劇場」「WHITE CINE QUINTO」「ほぼ日曜日」の3施設が入居。
ほぼ日が運営する「ほぼ日曜日」は展示やライブ、パフォーマンスなど、様々な表現を提供するスペース。オープニング企画『アッコちゃんとイトイ』は、矢野顕子と糸井重里のコンビで生み出された楽曲にフォーカスした企画となる。10人のアーティストがそれぞれの楽曲をイメージした作品を制作している。初日の11月22日には矢野顕子によるミニライブも。
108席のミニシアター「WHITE CINE QUINTO」の初回上映作品は『草間彌生∞INFINITY』。館名の「WHITE」には新しい発見、可能性、才能、楽しみ方、無限に広がる無垢な場所といった意味が込められているとのこと。
636席と大型化したPARCO劇場は、今回の内覧会では取材できなかったが、渋谷PARCOの文化発信の核を担う施設になりそうだ。
■9F「PUBLIC STAGE」
2つのスタジオと、一般社団法人渋谷未来デザインの拠点から構成。スタジオでは「学び」の集積地となる「GAKU」と、宇川直宏による「DOMMUNE」の進化形になるという「SUPER DOMMUNE」が展開される。「GAKU」では山縣良和(writtenafterwards)による「ここのがっこう」や、CINRAによるオンラインラーニングコミュニティ「Inspire High」などが集う。
■10F「ROOFTOP PARK」
さて最後のフロア、10F。ここは空が開けた公園を中心にしたほぼ野外のフロアとなる。ちなみに「PARCO」とはイタリア語で「公園」を意味する。撮影できなかったが、ライブなどのイベントを行なう屋根付きのスペースも設置されている。
渋谷PARCOは10Fから1Fまで、屋外を通って上り下りできる立体街路を設けているという。スペイン坂、道玄坂、宮益坂など坂が多く存在する渋谷文化を意識したとのこと。
■全フロアをまわっての感想。これほど攻めているとは
全フロアをまわって感じたのは、「今、この東京で渋谷PARCOをもう一度始める意味」がとことん考えられたであろう空間づくりになっているということ。各フロアに必ずといっていいほど、心地よい違和感、異分子的な何かが存在していた。正直、これほど攻めているとは思わなかった。
かつて渋谷の「区役所通り」の名前を「渋谷公園通り」に変えるきっかけになったという渋谷PARCO。この新しい渋谷PARCOもまた、何かを変えていくきっかけになるのかもしれない。