トップへ

スマホ見ながら自転車事故、女子高生が書類送検…賠償金が「1億円」規模になるケースも

2019年11月22日 11:02  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

スマートフォンを操作しながら自転車に乗って、事故を起こしたとして、女子高生が書類送検された。


【関連記事:妻に不倫された夫が「もう一度、ホテルへ行って来て」と言った理由】



報道によると、女子高生はことし6月、兵庫県伊丹市の信号のない交差点で、スマホを見ながら自転車に乗って、70代の男性をはねた。



男性は頭を強く打って、一時意識不明の重体になった。現在、意識は取り戻しているが、意思疎通がむずかしくなっているという。



女子高生は10月1日、重過失傷害の疑いで書類送検された。取り調べに対して、女子高生は「スマホに気をとられ、前をよく見ていなかった」と容疑を認めているという。



今回のように、スマホを見ながら自転車を運転する行為は、どのような法的リスクがあるのだろうか。交通事故にくわしい清水卓弁護士に聞いた。



●スマホ見ながらの運転は「罰金」となる

「そもそも、スマートフォンを操作しながら自転車を運転した場合、道路交通法や、各都道府県の道路交通規則の違反となります。たとえば、東京都の場合、5万円以下の罰金です(道路交通法71条6号、東京都道路交通規則8条4号、道路交通法120条9号)。



また、運転の状況次第では、安全運転義務の違反となり、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金となります。



スマートフォンを見ながら自転車に乗って、交通事故を起こし、人をケガさせたり、死亡させたりした場合、重大な注意義務の違反を犯したとして、重過失致死罪に問われる可能性があります。



刑罰として、5年以下の懲役・禁固または100万円以下の罰金が定められています(刑法211条後段)。



単なる過失致死罪の刑罰が50万円以下の罰金とされていることに比べて、刑事責任の重いといえます」



●「自転車に乗る人は任意保険に加入すべき」

「さらに、自転車事故で人をケガさせたり、死亡させたりした場合には、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになります(民法709条)。



損害額の算定の仕方は、自動車事故の場合と異なりません。



生じた結果の重大性(重篤な後遺障害や死亡)などによっては、自転車事故でも、数千万円~億単位の高額な損害賠償責任を負うことになる可能性があります。



このように、自転車事故の場合も、高額な賠償責任を負う可能性があるため、自転車に乗る人は、任意保険に加入しておくべきでしょう。



なお、近ごろ、重大な結果を生じさせる自転車事故が後を絶たないことから、自転車についても、利用者や保護者等に任意保険の加入を義務付ける内容の条例が都道府県等で定められつつあることは、交通安全の強化の観点からの注目すべき動向と思われます。



たとえば、東京都では、『東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例』が改正されて、自転車利用者や保護者、自転車使用事業者および自転車貸付業者による自転車損害賠償保険等への加入が義務化されます(同27条ないし27条の4)。この改正は、2020年4月1日に施行されます」




【取材協力弁護士】
清水 卓(しみず・たく)弁護士
東京の銀座にある法律事務所の代表を務め、『週刊ダイヤモンド(2014年10月11日号)』で「プロ推奨の辣腕弁護士 ベスト50」に選出されるなど近時注目の弁護士。交通事故分野などで活躍中。被害者救済をライフワークとする“被害者の味方”。
事務所名:しみず法律事務所
事務所URL:http://shimizu-lawyer.jp/