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「公務員はやりがいがない」と嘆く職員たちへ 「最強効率仕事術 公務員の速効ライフハック」が伝える脱・前例主義の仕事術

2019年11月20日 07:10  キャリコネニュース

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「就職したい企業・業種ランキング」で毎年上位を占める公務員。一方、口コミサイトには「やりがいがない」「古い体質で息がつまる」といった声が寄せられる。そんな悩みに答え、仕事の効率化ややりがいを高める方法を分かりやすく伝授してくれるのが『最強効率仕事術 公務員の速効ライフハック』(学陽書房)だ。

著者の佐久間智之さんは、元バンドマンでプロミュージシャンを目指していた経歴の持ち主。だが、一転して、公務員受験の専門学校で2年間学んだ後、現在は埼玉県三芳町役場の職員として働いている。町役場では男性職員として初の育休取得や、担当して制作した「広報みよし」が全国広報コンクールで内閣総理大臣賞を受賞するなど、注目を浴びている人物だ。(文:篠原みつき)

「これまで通り」の自治体は淘汰される


安定のイメージが強い公務員だが、著者は、これからAI(人工知能)の進歩によって、今まで以上に職員数が減らされていくことは避けられないとしている。しかし、事業は増え、一人一人の業務量は確実に増えている。それでも、著者は「残業は税金だから、悪いこと」と位置付け、残業ありきの意識や前例踏襲で非効率な仕事のやり方を一蹴している。

「一番楽な、前例踏襲だけで仕事をするということは、後退はしませんが、前進もしません。例えば、ペーパーレス化が進むなか、予算書を何百枚も印刷することは、まさに前例踏襲の無駄な仕事の代表格ではないでしょうか」
「『昔からこうやっているから』という考え方ばかりの職員の自治体は淘汰されるでしょう」

具体的には、定時に帰るためのタスクマネジメントとして「1日5時間程度でスケジュールを組み立てる」や、クレームを極力なくすために「お役所言葉は使わない」など、すぐに実践できそうな仕事の進め方の数々を紹介している。

当たり前のように感じるかもしれないが、読んでみて初めて納得することも多いだろう。無駄な残業を良ししない姿勢に正す手助けになってくれるはずだ。

公務員相手には「前例」を見せて説得

著者が男性職員初の育休を取得したことは前述の通りだが、2人の子どもがいて、それぞれ3か月ずつ取得しているというから驚く。他にも、前例にないコンビニ納付や、自分が育休でいない間も仕事がうまく回るよう専用のソフトを作っておくなど、常に公務員の常識に囚われず自主的に動く姿勢がある。

「広報みよし」が内閣総理大臣賞を受賞するほど素晴らしいものになったのも、この姿勢のおかげだ。自治体は新しいことに消極的な風土があり、新規事業や何かをリニューアルする時、大抵の場合はやり直しが待ち受けている。広報を大幅にリニューアルした時、一番困ったのが内部の理解を得ることだったという。

「『文章を少なくして情報を伝わりやすくしたい」と提案したら、『去年載せた内容を日にちだけ変えればいいから余計なことをしないで』と言われたり、『情報を集約して1ページの半分に収めたい』と提案したら『ずっと1ページもらってきたのに、減らすなんてとんでもない』などと言われたりしました」

理論的に説明しても、「生意気」くらいにしか思ってもらえなかったという。険しい道のりだったに違いない。

しかし、著者は諦めず、先進的な広報誌(福岡県福智町の広報ふくち)を取り寄せて、これまでの広報誌と比較して説明。結果、「広報ふくちの方が良い」と周囲の理解を得ることができた。この経験から

「理解を得るにはまず、先進事例の力を借りましょう」

と説く。具体的なモノが目の前に見えると理解度がまったく違うし、公務員相手には「前例」を見せることが最善の方法だったのだろう。

ロールモデルが近くにいない若手におすすめ

著者は「前例がないからやらない」という理屈を持たず、「後悔して言い訳をする人は、常に楽な道を選んでいます」とする。その上で、

「誰もやったことがないことはとても困難なことですが、楽な道と困難な道の2つがあった時、絶対に楽しく、また結果、仕事や生活がうまく回って楽になるのは困難の方です。私が保証します」

と言い切っている。

他にも、部署を移動するごとにお茶くみの慣習を廃止したり、クレームや問い合わせが来ないよう、通知書を分かりやすく改訂したりしてきた。その結果として、定時に帰り、就業後は子どもたちとゲームを楽しんでいるという。安定の公務員で仕事を充実させ、私生活も充実させている好例だ。

本書を特にお薦めしたいのが、ロールモデルとなる良い先輩や上司が職場にいない若手。新人はもちろん、仕事自体には慣れてきたが、もっと前向きに効率的に仕事がしたいと考える2、3年目の公務員には、勉強になるだけでなく、仕事に対するモチベーションアップにつながる一冊となるだろう。