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スカパラ、斉藤和義、KIRINJI、GLIM SPANKY、THE CHARM PARK……独創的スタイルをポップスに昇華した最新作

2019年11月19日 11:21  リアルサウンド

リアルサウンド

東京スカパラダイスオーケストラ『ツギハギカラフル』

 “歌モノ盤”“インスト盤”の2枚組による東京スカパラダイスオーケストラの30周年記念アルバム、さくらももことのコラボレーションが実現した斉藤和義のニューシングルなどをピックアップ。ルーツミュージックや独創的なスタイルに根差しながら、幅広い層のリスナーが楽しめるポップスへと昇華した5作品を紹介したい。


(関連:東京スカパラダイスオーケストラ「リボン feat.桜井和寿(Mr.Children)」MVはこちら


●東京スカパラダイスオーケストラ『ツギハギカラフル』
 東京スカパラダイスオーケストラのデビュー30周年を記念したニューアルバム『ツギハギカラフル』は“歌モノ盤”“インスト盤”の2枚組。歌モノ盤には、「リボン feat.桜井和寿(Mr.Children)」「ちえのわ feat.峯田和伸」「明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次」など、個性、スキル、情熱を併せ持った男性ボーカリストのコラボ曲を収録。さらに新曲として、キヨサク(MONGOL800)、TAKUMA(10-FEET)をフィーチャーした「Jamaica Ska」(1964年にリリースされたByron Lee&The Dragonairesの楽曲のカバー)も。オーセンティックなスカ、ロックステディの名曲を、スカパラの盟友であるキヨサク、TAKUMAとともにカバーしたこのトラックは、ルーツミュージックをポップに昇華してきたスカパラの真骨頂だ。インスト盤に収められた8曲も、思わず口ずさみたくなるキャッチーなメロディが満載。マニアックかつディープなサウンドを誰もが楽しめる音楽(=ポップス)に導く彼らのスタイルは、いまも向上し続けている。


●斉藤和義『いつもの風景』
 斉藤和義の最新シングル表題曲「いつもの風景」はTVアニメ『ちびまる子ちゃん』新エンディング主題歌。さくらももこが斉藤和義をイメージして生前に書き残した歌詞に、斉藤が曲を付けたこの曲は、ドラムマシンと生ドラム、シンセベースを融合させたトラック、ブルージーなギターフレーズ、朗らかで解放的なメロディが共存するナンバー。〈だいたい同じような毎日だけど/ひとつも同じ日なんてないんだ〉というフレーズは、『ちびまる子ちゃん』のテーマと重なりながら、普遍的なメッセージを含んだポップソングにつながっている。C/Wには、小説『オートリバース』(80年代のアイドル親衛隊の少年たちの姿を描いた青春小説)のコラボ曲として書き下ろされたドリーミーでサイケデリックな「オートリバース~最後の恋~」、ビング・クロスビー、ボブ・ディランから江利チエミまで、数多くのシンガーが歌ってきた「YOU BELONG TO ME」の日本語カバーを収録。


●KIRINJI『cherish』
 先行シングル「killer tune kills me feat. YonYon」、先行配信曲「Almond Eyes feat. 鎮座DOPENESS」を含む、KIRINJIの全9曲入りニューアルバム『cherish』。前作『愛をあるだけ、すべて』で採用した生楽器と打ち込みのハイブリッドをさらに進化させ、ふくよかな低音域の音響に象徴される、現行のヒップホップ~R&Bのエッセンスを取り入れたサウンドメイクがとんでもなく気持ちいい。意味とリズムを絶妙なバランスで共存させたメロディライン、承認欲求、タイムマネジメントなど、すべての現代人にまとわりつく状況を背景にしながら、静かな諦念とシニカルな視線を感じさせるリリックなど、ソングライティング自体もさらにアップデートされている。20周年を経て届けられた新たな傑作であり、2019年現在、もっとも尖っていて、もっとも知的でポップスであると断言したい。


●GLIM SPANKY『ストーリーの先に』
 昨年5月に日本武道館公演を成功させ、今年の春には4thアルバム『LOOKING FOR THE MAGIC』を携えた全27公演の全国ツアーを開催。夏にはフジロックフェスティバルのGREEN STAGE(メインステージ)で堂々たるパフォーマンスを繰り広げるなど、いまや日本を代表するロックアーティストの1組となったGLIM SPANKYのニューシングル『ストーリーの先に』(テレビ朝日系ドラマ『Re:フォロワー』主題歌)はサイケデリックかつブルージーな音像を、現代的なポップサウンドに結びつけるプロダクションが光るミディアムチューン。ゆっくりと少しずつ高揚感を増していくメロディ、最後まで抑制を効かしたボーカル(中低域の歌声の響きが素晴らしい)など、自らの個性もしっかりと根付いている。コアなロックファンと一幅広いJ-POPリスナーの両方にアピールできる間口の広さもこの曲の魅力だろう。


●THE CHARM PARK『Reverse & Rebirth』
 ギターロック、EDM、R&B、ヒップホップなどの多彩な音楽要素をマッシュアップさせたサウンド、高度な音楽理論に裏打ちされたソングライティング、英語と日本語を自然に共存させたボーカルによって、次世代のポップマエストロと称されるTHE CHARM PARK(シンガーソングライターのCharmによるソロプロジェクト)。ASIAN KUNG-FU GENERATION、登坂広臣、V6などの楽曲提供も行っている彼の新作『Reverse & Rebirth』は、2014年に自主制作で発表した同名アルバムの収録曲をリビルドした作品。楽曲の骨格をそのまま残し、アレンジと音像をアップデートさせた本作には、ソングライターとしての資質とトラックメイカー/プロデューサーとしてのセンスがバランスよく反映されている。音楽偏差値の高さとわかりやすさが一つになった、ポップミュージックの理想形だ。(森朋之)