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ジャニーズ屈指のダンサー 屋良朝幸の情熱が人を動かすーー連続ドキュメンタリー第1回を見て

2019年11月14日 15:01  リアルサウンド

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「たぶん俺、一生満足しない男だから、踊りも。この仕事している限りずっとそうです。だから求めたくなる」


 連続ドキュメンタリー『RIDE ON TIME』(フジテレビ系)11月8日放送回より密着がスタートしたのは屋良朝幸。ジャニーズ屈指のダンサーだ。


(関連:山下智久、Kis-My-Ft2 横尾渉、屋良朝幸…プラスαの才能を持つ、芸達者なジャニーズメンバー


 素人目にもわかる、明らかに難易度の高いアクロバットを成功させていた屋良。冒頭の言葉は屋良のダンスを一目でもみれば、誰もが納得するだろう。


 屋良は、テレビ出演よりもはるかに舞台での活動が多く、ジャニーズの中でも稀有な存在だ。ジャニーズに詳しくない人にとっては少々馴染みが薄いかもしれないが、一歩踏み込めば、おのずとたどり着く存在。ファンからは“屋良っち”の愛称で親しまれている。


 屋良は、堂本光一主演舞台『Endless SHOCK』シリーズ、少年隊から今井翼に受け継がれてきた舞台『PLAYZONE』シリーズと、ジャニーズを代表する舞台に長きに渡って出演してきた舞台の人だ。嵐の楽曲の振付を手掛けたこともあり、嵐の櫻井翔は「めちゃくちゃうまいし、めちゃくちゃかっこいいし、めちゃくちゃセンスあると思います。踊りに特化してっていう意味では唯一無二の存在ですよね、きっとね」とエピソードを寄せた。


 12歳でジャニーズ事務所に入所した屋良。櫻井翔とはシンメ(ペア)だった。櫻井は当時を振り返り、「ロックダンスがジャニーズで主流だった中で、ヒップホップとかハウスとかそういうちょっと違うダンスをやりたいねって、VHSのビデオをよく二人でみてた記憶があるんですけどね」と、当時からジャニーズの王道とは異なるが、技術を要するダンスに魅了されていた。


■ダンスへの情熱が人を動かす


 今回の放送の中でも特に印象的だったのは、周囲からの評価だ。


 事務所の後輩である中山優馬からは「誰とやるかも選べるみたいな(ときに)、だから屋良くん、屋良くん!(と指名した)。細かくてスパルタで妥協がない、良いものを作るという一点だけに時間をかけるんでその精神力に僕は惚れてます」と信頼も厚い。対する屋良も2013~2014年の『ジャニーズカウントダウンコンサート』の中で、「優馬を育てます」と宣言していた。


 櫻井、中山の他にも屋良のダンスの師匠、演出家、振付家、ダンサーのTETSUHARUも、「あんまりいないタイプだと思いますね。ダンスが好きでアイドルやってる人いないじゃないですか」と褒めた。


 『Endless SHOCK 2016』のパンフレットで、石川直と屋良の対談にこんな言葉があった。石川は「ジャニーズの人たちはみんな、リズム感や運動能力や、音楽を表現する能力があると思うけど、その中でも屋良は一番リズムに向いてる。まずダンスのアプローチが、僕がドラムでやってるアプローチとすごく重なるから。多分、細かいところまで屋良は意識が働いてる」と屋良の技術力の高さを褒めていた。これまでに数々の舞台に出演してきたこと、今年、屋良の主演舞台が2本と求められてきた実績が何よりの証拠だ。


 屋良が総合プロデュースを担当する『THE YOUNG LOVE DISCOTHEQUE 2019』のメンバー顔合わせでのこと。プロのダンサー、ラッパー、DJらが集結する中に、ジャニーズJr.歴4年の末武幸紘の姿があった。レッスンでは屋良が末武に身体の動かし方を教えていた。続いて、「80年代の踊りとかブレイクダンスとか、70年代のソウルダンスとかをいま色々動画で、YouTubeとかでみられるから、そういうのを見てキャッチして欲しい。自分が先頭に立ってという意識を、一人のアーティストとしてこのステージに立ってもらいたい。技術とかよりもそっち」と、あたたかみのある声で、末武の顔を見ながら丁寧に教えていた。面倒見がいいのだ。


 一方、屋良もパフォーマンスのレッスンに励んでいた。にこやかな表情を浮かべているが、口数は少ない。服が擦れる音、シューズの摩擦音、映像から聞こえてきたのはそんな音だった。2018年『JAPAN DANCE DELIGHT VOL.25』で3位入賞したダンスチーム・9stepper’z!!との共演。チームに混じって振りを合わせる姿は、まるでメンバーの一員かと思うほどに馴染んでいた。


 アイドル路線から離れていることについて、「そこは今もブレてない」、「長い道のりでしたね、何十回も諦めようと思いましたね」と苦悩を明かした。m.c.A・Tとのコラボレーションも自ら周囲に交渉して実現させたという。


■屋良のパフォーマンスにも通じる指導の精神


 末武のダンスをみて、「これがただやってるだけだとおもしろくない」と屋良。他にも「楽しめ」、「さらけ出してなんぼのライブだからね。ここやっていい場って言ったじゃん」とアドバイスしていた。


 前出のパンフレットの中で、屋良はミュージカル中の歌について、「上手く歌おうということは考えていません」と語っていた。「もちろん技量は必要なので僕もレッスンは欠かしませんが、テクニックだけで歌ってもお客様には何も伝わらないと思いますから。だから根本的な心の部分というものを絶対に忘れてはいけない」。歌について語られたことではあるが、この精神は屋良のパフォーマンス全ての礎となっているのではないだろうか。末武に対するアドバイス、屋良が踊っているときの表情が物語っている。


 末武はまだ本番にあげられるレベルではないというが、「自分で気づくしかない」と屋良。ジャニーズの中でもダンスに傾倒し、ジャニーズでも珍しいダンス留学をしてきただけに、自ら道を切り拓き、場数を踏んだからこそ辿りついた答えだろうか。やさしい口調、自分なりの答えをだせるよう導く教え方に、積み重ねてきたものの厚みを感じた。


 次週予告には、「ジャニーズなめられちゃいけないなって思うんですよ」と語る屋良の姿。ジャニーズでありながら、いわゆる王道のアイドル道を進まなかった屋良ならではの言葉のように思う。(柚月裕実)