2019年11月14日 09:21 弁護士ドットコム
婚活サイトで、無断で「出会いが期待できる店」と自分の店を紹介されたとして、あるバーのマスターが抗議のツイートをしました。
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その婚活サイトでは、「高級感溢れる店で、ワンランク上の異性との出会いを期待しているなら」として、そのバーを「オススメ」。お店の特徴として「オーセンティックな雰囲気ながら適度にフレンドリーな距離感が心地いい」などと紹介していました(現在は削除済み)
また、「男性は一人でお酒をたしなむ女性に積極的に声をかけましょう」、「女性はカウンター席の1番端に座って準備しましょう」といった丁寧な「出会い方アドバイス」までしていました。
婚活サイトにはバーの住所や営業時間など、お店の情報も掲載。マスターのツイートによると、掲載されていたマスターの写真は、別の雑誌のネット版から無断で転載ものだったそうです。
お店の趣旨とは異なる紹介を無断でメディアがしてしまった場合、止めさせることはできるのでしょうか。小沢一仁弁護士に聞きました。
「意見が分かれるかも知れませんが、私見としては難しいと思います。
考えられる対応としては、人格権に基づく妨害排除請求権としての掲載内容の削除請求があります。
単に異なる趣旨の紹介をされただけであれば名誉権侵害ではないので、営業権侵害を主張することになると思いますが、問題とされている記事の内容を読む限り、店の雰囲気を記者が評価しただけのように思いますので、このことを理由に削除請求が認められる可能性は低いと思います。
ただし、男性がひとり客の女性に対して積極的に声をかけることを勧める部分については、店に対する業務妨害と評価しうると思いますので、削除請求が認められる可能性はあると思います。
なお、本件では既に問題となった記事は削除されたようです。最初から裁判所の手続をすると、かえって相手方が態度を固めてしまう可能性があるので、特に誰が記事を書いているか分かっているような事案では、まずは協議により削除を求める方が良いと思います」
では、マスターの写真を他の媒体から無断転載したことについて、削除や賠償請求は可能でしょうか?
「削除を求める根拠としては、著作権侵害またはプライバシー権侵害があると思います。
前者は、写真を撮影したのが店であったり、カメラマンを使うなどして第三者に写真を撮影してもらった場合であっても、著作権を譲り受けるなどして、店側が著作権者であるのであれば、削除等の請求は可能だと思います。
他方で後者は、公に店舗を運営している以上、削除等の請求は難しいのではないかと思います」
【取材協力弁護士】
小沢 一仁(おざわ・かずひと)弁護士
2009年弁護士登録。2014年まで、主に倒産処理、企業法務、民事介入暴力を
扱う法律事務所で研鑽を積む。現インテグラル法律事務所シニアパートナー。
上記分野の他、労働、インターネット、男女問題等、多様な業務を扱う。
事務所名:インテグラル法律事務所
事務所URL:https://ozawa-lawyer.jp/