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PS5、“謎のカードリッジ”と報じられたのは拡張SSD? 普及は「過去に経験したことのない」ペースで進むか

2019年11月14日 07:21  リアルサウンド

リアルサウンド

LETS GO DIGITAL「Sony PlayStation game cartridge, but for which console?」より引用

 今年4月にPS5が開発中であることが明らかになって以来、同ゲーム機に関する報道が断続的に続いている。つい最近も、同ゲーム機のアクセサリーと推測されるデバイスについて報じられた。そのデバイスの仕様は、ソニー経営陣が考えているPS5の販売戦略に呼応しているようだ。


(参考:『PS5』、全容は2020年のE3で明かされる? 公開済・未公開の情報から考察


・謎のカードリッジ
 オランダのテック系メディア『LETS GO DIGITAL』は10日、ゲーム機関連デバイスと思われるソニーの特許に関する記事を公開した。その特許は今年6月にブラジルの特許局に申請され、11月5日に発行となった。特許書類に掲載された画像を見ると、ゲーム機に挿入するカードリッジのように見える(トップ画像参照)。特許書類のタイトルは「データ記録とストレージ装置に応用される構成物」と題されている。また、特許の分類は「電子ゲームアクセサリー」になっている。同特許に関してわかっているのは以上の情報だけで、具体的にどんなゲーム機に対応するかといったことは不明だ。


 テック系メディア『Tom’s guide』は11日、上記特許に関する考察記事を公開した。その記事では特許で説明された謎のカードリッジはPS5に挿入できる拡張SSDではないか、と見ている。この見方が正しければ、PS5のユーザはゲーム機本体にあるHDDのほかに拡張SSDカードリッジを挿入することによって記憶容量を増やすことができるようになる。こうした拡張SSDを開発・販売するメリットは、ふたつある。ひとつめは、PS5を購入したいユーザが記憶容量の小さい(それゆえ安い)モデルを選択しやすくなることだ。ふたつめは、拡張SSDを販売することでソニーに長期的な利益をもたらすことである。


 イギリスのタブロイド紙『Daily Star』電子版が11日に公開した同特許に関する記事では、謎のカードリッジが次世代モバイルゲーム機に関係しているのではないか、と述べている。こうした見方の理由として、Nintendo Switch Liteの登場によってモバイルゲーム機市場の可能性が改めて示されたから、とも語っている。


・PS3と同じ轍は踏まない
 PS5の価格に関する新たな情報も報じられた。イギリスのライフスタイル系メディア『T3』が6日に公開した記事では、ソニーのCFO(最高財政責任者)である十時裕樹氏のPS5に関する発言が紹介された。同氏は、PS5の販売から得られる収益はPS5の価格設定に大きく左右される、と語った。例えばPS5を高価格に設定すれば1台当たりから得られる収益は大きくなる一方で、普及に時間がかかり同ゲーム機の販売全体から得られる利益は減るかも知れない。同氏はソニーが「PS5の製造コスト、市場が受け入れやすい価格、そしてPS5プラットフォームの普及等について分析中」であるとも説明した。


 ゲーム機の価格設定に関して、ソニーには苦い経験がある。2006年11月にPS3がリリースされた時、記憶容量の少ない20GBモデルでも6万円を超える価格が設定された。この強気の価格設定が災いしてか、PS3の初回出荷台数はPS2のそれを大きく下回る結果となった。その後、2007年10月には機能を削減して低価格を実現した新モデルを投入することとなった。


 T3の記事は十時CFOの発言とPS3の苦い経験を鑑みればPS5が高価格に設定されるとは考えにくく、ゲーマーが購入しやすい価格に落ち着くだろう、と結論づけている。


・移行は「過去に経験したことのない」ペースで進む?
 さらにゲームメディア『GamesIndustry.biz』が7日に公開したSIE(Sony Interactive Entertainment)のCEOであるJim Ryan氏にインタビューした記事(同メディアの日本語版は全訳記事を公開)でも、PS5に言及されている。同CEOによると、2020年代のSIEの主要なタスクはユーザコミュニティをPS4からPS5に移行することであり、その移行の「規模とペースは我々が過去に経験したことのないほどのもの」となると語った。


 Ryan氏は、VRゲームに関する展望についても答えている。同氏によればソニーは依然としてVR市場のマーケットリーダーであり、PSVRがリリースされた2016年に比べて同社開発のVRタイトルは減っているものも、この市場に引き続きコミットしていく、とのこと。この発言から、PS5においても引き続きVRタイトルをリリースしていくことが推測される。


 インタビュー記事ではソニーのゲームストリーミングサービス戦略にも言及された。実のところ、同社はGoogleのStadiaが注目される5年前からPlayStation Nowというゲームストリーミングサービスを運営していた。10月には利用料金の値下げと大作タイトルの追加により、加入者が50%増加した。しかし、『Marvel’s Spider-Man』のような価値のあるファーストパーティゲームを同サービスに追加することに関しては、慎重な姿勢を崩さないようだ。


 ソニーのCFOとSIEのCEOの発言をまとめるとPS5を速やかに普及させたいという思惑がうかがえ、それゆえPS5はお手頃な価格に設定される可能性が高いだろう。そうなると以上で言及した謎のカードリッジは、PS5ユーザの初期投資を抑えることができる拡張SSDと考えるのが妥当ではないだろうか。


(吉本幸記)