昨今ニュースを賑わせている税金問題。毎年10月下旬から翌年3月にかけては、年末調整や確定申告のシーズンに突入することもあり、何かと税にまつわる話題が増えます。
会社員の場合、多くの人は、勤務先から配布される年末調整の書類を提出することで所得税の納税が完了します。では、年末調整以外の納税手続きは必要ないのでしょうか。会社員が押さえておくべき「税金」のポイントについて解説します。(文:楽天証券経済研究所・ファンドアナリスト 篠田尚子)
正しい税額を納めるため、不足分は天引き、払いすぎは還付される"年末調整"
年末調整は、会社員の所得に対してかかる所得税の精算を目的としています。所得とは、給料などの収入から、その収入を得るためにかかった必要経費や所定の控除額を差し引いた後の金額を指します。
国の税金は、納税者1人1人が確定申告によって自ら税額を計算し、税務署に出向いて納付する申告納税制度が基本です。しかし、納税義務のある全国民が確定申告を行うと税務署に大きな負荷がかかってしまいます。
そこで、会社員については、所得税の概算額を毎月の給料やボーナスから天引き(源泉徴収)し、年末にまとめて「調整」することが特例として認められているのです。
年末調整書類の提出によって正しい税額が算出されたのち、不足分があった場合は天引き、払いすぎの場合は還付を受けることになります。
副業をしている人は要注意!「無申告」だとペナルティも
大多数の方は、この年末調整で所得税の納税が完了します。ただし、以下に該当する場合は、翌年3月に確定申告を行う必要があります。1から3までは、確定申告によって税金の還付や控除を受けられるケース。4は、給与所得以外の所得が一定額あることで、納税の義務が新たに発生するケースです。
1.住宅ローン控除の適用を受ける場合(初年度のみ)
2.上場株式等の売却損を損益通算する場合
3.医療費控除、または、セルフメディケーション税制による還付を受ける場合
4.副業による雑所得が年間20万円以上ある場合
上記はいずれも、確定申告のシーズンが近くなると、国税庁や住所地所管の税務署のホームページ上の情報が増えるので、該当する方はこまめに確認することをおすすめします。
なお、1から3までは、納税額が減ったり、還付を受けられたりと、あくまでも確定申告によって恩恵を受けられるというものなので、万が一忘れたとしても、自分が損をするだけです。
しかし、4は確定申告を怠ると「無申告」状態となり、後に無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されます。十分に注意しましょう。
特例制度を使って「ふるさと納税」を確定申告不要に
では、人気のふるさと納税をしている場合はどうでしょうか。ふるさと納税には、寄付金額から自己負担額2000円を引いた額が、所得税・住民税から控除される(年収額などに応じた上限額あり)という税制上のメリットがあり、制度の見直しがなされた今も人気を博しています。
確定申告の必要のない会社員(給与所得者)の場合、1年間の寄附先が5自治体以内であれば、確定申告不要で、上記の寄付金控除を受けられます。
これはワンストップ特例制度と呼ばれるもので、利用すると所得税からの控除は行われず、全額が翌年度分の住民税から控除されます。特例を受けるためには、ふるさと納税を行う際に、所定の申請書をふるさと納税先の自治体に提出する必要があります。
ふるさと納税の税務処理は、年末調整ではなく、このワンストップ特例制度を使うか、自身で確定申告を行うことで完了するということを覚えておいてください。
【筆者プロフィール】
篠田 尚子(しのだ しょうこ)
楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
AFP(日本FP協会認定)
国内の銀行において個人向け資産運用のアドバイス業務に携わった後、2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投信評価機関リッパーにて、世界中の機関投資家へ向けて日本の投資信託市場調査および評価分析レポートの配信業務に従事。同時に、世界各国で開催される資産運用業界の国際カンファレンスで日本の投資信託市場にまつわる講演も数多く行う。2013年にロイターを退職し、楽天証券経済研究所に入所。各種メディアで投資信託についての多くのコメントを手掛けるほか、銘柄選びに役立つ各種コンテンツの企画や、高校生から年金受給層まで、幅広い年齢層を対象とした資産形成セミナーの講師も務めるなど、投資教育にも積極的に取り組んでいる。著書に「本当にお金が増える投資信託は、この10本です。」、「新しい!お金の増やし方の教科書」(ともにSBクリエイティブ)などがある。