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『G線上のあなたと私』酔っ払いの波瑠が中川大志にぶつける本音 人はなぜ結婚するのか

2019年11月13日 12:42  リアルサウンド

リアルサウンド

『G線上のあなたと私』(c)TBS

「“結婚したい“って気持ちと、“この人と結婚したい“って気持ちは、似てるようで全然違うの。“結婚したい“からすぐ“結婚しよう“じゃ、それ相手は誰でもいいってことになるじゃない」


 火曜ドラマ『G線上のあなたと私』(TBS系)第5話のサブタイトルは「なんで結婚するの?」。確かに、なぜ人は結婚するのだろうか。そう改めて考えた人も多い夜だったのではないだろうか。


参考:若手世代きっての実力派! 中川大志、“いくえみ男子”を体現する芝居力


 大人のバイオリン教室で出会った也映子(波瑠)、理人(中川大志)、幸恵(松下由樹)は、年齢も性別も環境もバラバラ。だが、彼らを結びつけたのはバイオリンという未知なる楽器に挑む同志になれたから。だが、週1回、同じ時間を共有していくうちに、3人は習いごと仲間と呼ぶ以上の絆を育んでいく。それは“結婚“という未知なる制度に翻弄される同志だったからかもしれない。


 婚約者から結婚直前にフラれた也映子は、その心にあいた穴を埋めるかのように大人のバイオリン教室に通い始めた。理人は、実兄の元婚約者・眞於(桜井ユキ)を放っておけない気持ちから、幸恵は夫の浮気や姑との同居のストレスから……それぞれ振り返ると、細部は異なれど大まかにみれば“結婚“という制度から派生したモヤモヤに悩み、もがいている。


 幸恵の姑の病気をきっかけに、バイオリン教室で揃うことがなくなると、いよいよそれぞれの悩みに1人で立ち向かい始める3人。也映子は婚活を始め、理人は眞於との繋がりであるバイオリンを置き、幸恵は介護と家事に追われるが、3人とも空回りの日々が続く。


 たまらず電話で近況報告し合う也映子と幸恵。「でも、やっぱ家庭っていいなって思うんですよ。安心できる場所も欲しいし」。そうつぶやく也映子に、幸恵は「それはファンタジー。家庭は修行の場よ。焼けた石の上、素足で歩くようなもの」と本音が飛び出す。


 一方、眞人は真於の左手を襲う病魔について兄・侑人(鈴木伸之)に話すも、「あいつ聞いてもなんも言わねえもん。ニコニコ笑ってるだけで……やっぱり俺と眞於は結婚しなくてよかったんだよ。だって、結婚ってそういうことじゃねえもん」と開き直られ、「だったら結婚しようなんて言うなよ」と腹を立てるのだった。


 結婚とは、何なのか。確かに少し前の時代では、結婚は「しなければならないもの」の印象が強かった。男性は社会的に一人前に見られず、女性は家庭に入ることこそ幸せだと言われていた時代もあった。


 だが、様々な人が声を上げた現在、結婚は「しなければならない」から「したいと思ってするもの」になりつつある。世間一般からみて「正しい」からするのではなく、自分と相手にとってそれが「最適」だからする。そんな意識に変わってきた印象だ。


 そこでも気をつけたいのが、「正しい」と「最適」も似てるようで全然違うということ。だから、私たちはいつも迷うのだ。「正しい」と思った行動が、気分のよくない結果を招くこともある。「時間を無駄にした」とやるせない気持ちになることも。だが、それも「最適」を知るために必要だった回り道かもしれない。


 その選択が「最適だった」と思えるのは、いつも少し時間が経ってからだ。“時間“こそ、幸せを求める3人の新たなキーワード。2人より少し長く生きてきた幸恵は時間の重みを知っている。浮気された夫を許せなくても長く時間を過ごすことで「決定的に憎めない何かがちょこっと残る」ことも。そして「そういう時間を棄てられない」と大事な思い出を湯たんぽのように抱えて、自分の心を温めているのだ。


 そんな幸恵の言葉から、これから誰かと生きようとしている也映子と理人は「自分の大切な時間を、誰のために使いたいかってことだよ。1番わかりやすいと思わない? 考えてみてよ」と思い浮かべる。「意識しなくても、つい一緒に時間を過ごしてしまう人は誰か」と。


「そういう誰かがさ、本当に大事な人なんだよ、きっと。時間なんだよ。私が今日、一緒に過ごしたかったのは間違いなく幸恵さんと理人くんです」


 “結婚したい“とは“そんなふうに思える人と出会いたい“という意味で、“この人と結婚したい“は”この人となら大事な時間を共有したいと思える“ということなのかもしれない。その気持ちに気づいた瞬間を友情と呼ぶのか、恋と呼ぶのか。その関係性を維持しようと努力することを愛と呼ぶのか、執着と呼ぶのか。その違いも、もう少し時間が経ったら見えてくるかもしれない。


(文=佐藤結衣)