2019年11月12日 09:41 弁護士ドットコム
殺人の依頼を受けた殺し屋(元請け)が報酬をピンはねした上で、別の殺し屋(下請け)を雇い、その下請けがさらに下請けを雇うーー。そんな事件の裁判が中国であったと海外のニュースサイトで報じられました。
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報道によると、殺し屋による下請けは計4回も行われたようですが、最後に雇われた5人目の殺し屋がターゲットの人物に接触し、依頼内容をバラしたことなどから、殺人は実行されませんでした。
その後、ターゲットの人物から警察へ事件について報告がなされ、当初依頼した人物と殺し屋をあわせた6名が裁判にかけられることとなったようです。
殺し屋への依頼自体が非日常的ですし、そんな依頼が下請けされていたとはまるでフィクションの世界の出来事のようです。
仮に日本で同じような事件が発生した場合、誰がどのような刑事責任に問われるのでしょうか。伊藤諭弁護士に聞きました。
「他人に殺人の依頼をし、依頼された人間が実際に殺人の実行行為に着手した(ナイフで刺す、銃で撃つなどした)ときには、依頼した人間、実行した人間ともに殺人(未遂)罪の共同正犯が成立すると考えられます」
「依頼した人間は教唆犯(犯罪をそそのかすこと)にとどまるとの考え方もありえますが、お金を払って他人に殺人を依頼することは、実行犯と一体となって殺人行為をしたとして、共同正犯になると考えるべきでしょう」
「依頼を受けた人間がさらに別の人間に依頼して、その人間が実行行為に着手したときも、基本的には同様で、依頼にかかわった全員に対して殺人(未遂)罪の共同正犯が成立することになります」
「ところが、今回の事件のキモは、一番最後に依頼された人間が、殺人の実行行為に着手していない点です」
「最後に引き受けた人間以外は、殺人の準備行為(殺人を依頼する行為)だけをしているわけですから、殺人予備罪(刑法201条)が成立するものと考えられます。殺人予備罪の法定刑は1カ月以上2年以下の懲役で、そこまで重い罪にはなりません」
「問題は、最後に依頼を引き受けた人間です。殺人をするつもりで依頼を引き受けたのだとしたら、やはり殺人予備罪に問われるでしょう。一方、もともと殺人をするつもりがないのに依頼を引き受けたのだとしたら、詐欺罪に問われることになると思われます」
【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年、弁護士登録。神奈川県弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。
事務所名:弁護士法人ASK市役所通り法律事務所
事務所URL:https://www.s-dori-law.com/