トップへ

塚本高史、『まだ結婚できない男』に安定感をもたらす存在に 表現力に結びつく“人間味”

2019年11月12日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

『まだ結婚できない男』(c)カンテレ

 2006年に放送された前シリーズから引き続き、『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)に村上英治役で出演している塚本高史。阿部寛演じる桑野信介の相変わらずぶりが話題だが、英治もまた桑野と同等、もしくは桑野以上に相変わらず。アシスタントから一級建築士の共同経営者に昇格した英治だが、この13年間、どんな生活を送ってきたのか想像できる空気感は、さすがである。


 14歳から芸能活動をスタートした塚本は、ドラマ『職員室』(TBS系)でデビュー以来、コンスタントに作品に出演。ゆえに「ずっと前からいる」という印象を抱いている人も多いだろうが、この「ずっといる俳優」で居続けるのは、そう簡単なことではない。


【写真】“面倒臭い男”桑野の相棒・英治


 塚本の出世作といえば、2002年に放送されたドラマ『木更津キャッツアイ』(TBS系)。岡田准一演じるぶっさんを中心とした怪盗団のメンバー・アニ役でブレイクを果たした。20代前半は、同作のほか『ごくせん』(日本テレビ系)、『Stand Up!!』(TBS系)など、若手俳優が多数出演する作品への出演も多く、いわゆるイケメン俳優としての立ち位置にあった塚本。だが、24歳で結婚して家庭を持つと、インタビューでも子育てについてさらりと回答。役者は「キャーキャー」言われるのが仕事ではなく、あくまで演技で魅せる。そんな当たり前でありながらも、なかなか打ち破ることができない壁のような何かを、あっさりと超えていく様が印象的だった。


 2011年に放送された『ランナウェイ~愛する君のために~』(TBS系)では、白髪坊主という挑戦的ともいえるスタイルで脱獄犯役を熱演。クールな切れ長の目に、不敵な笑みが相応う口角の上がった唇という“ヤンチャ”なキャラにハマっていた容姿に、渋みを加えたことでステージアップ。漢っぽい、硬派な役どころをひとつの強みとしていった。


 一方で、現在放送中の『まだ結婚できない男』で扮する英治のように、愛らしい“お調子者”もよく似合う。いや、おかしい。『ホリデイラブ』(テレビ朝日系)で見せた、松本まりか演じるゆるフワ女子の誘惑に負けて不倫に手を染める夫役や、『よつば銀行 原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~』(テレビ東京系)の銀行マン役といった、いわゆる“普通の人”にもマッチするから妙である。


 塚本の演技には、しばしば「この役、ピッタリだな」という感想を抱いてきた。だが改めて振り返ってみると、しばしばどころか、どの作品を観てもそう感じていたことに気づかされる。


 塚本は、既出の『木更津キャッツアイ』をはじめ『マンハッタンラブストーリー』『タイガー&ドラゴン』(ともにTBS系)など、宮藤官九郎(以下、クドカン)脚本作品に数多く出演してきた。クドカン作品といえば、個性的な登場人物が多いのも特徴であるが、そんな中でもナチュラルな人物として物語に存在し続けており、それこそが彼の持ち味。演じるキャラが濃かろうが薄かろうが、善人だろうが悪人だろうが、“どっかにいそうな人”になるのがとても巧いのだ。


 2017年に放送された『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)では「役者でつるむのは無い」「(奥さんが)いないと病気になっちゃう」と語るなど、とにかく飾らないのが塚本のスタイル。世間にどう見られたいかより、自分がどう生きたいかを貫くことで溢れる人間味が、きっと役者としての表現力に結びついているのだろう。


 役者活動の傍ら、長きに渡り音楽活動にも注力。Instagramなどで垣間見ることができるプライベートには人生を楽しむ余裕が感じられ、心惹かれるものがある。そんな人としての魅力、すなわち役者としての魅力は、年を重ねるごとに増している。まだ37歳。当たり前のように物語の中で生き、作品に安定感をもたらす塚本高史が、これからどんな役に息を吹き込んでいくのか。胸は高鳴るばかりだ。


(nakamura omame)