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ハルカミライが歩んできたライブバンドとしての軌跡ーー幕張メッセワンマン『A CRATER』への期待を込めて

2019年11月11日 13:41  リアルサウンド

リアルサウンド

ハルカミライ

 「ああ、このバンドが私の青春に居てくれたら最高だな」と素直に思うバンドがいる。八王子出身のロックバンド、ハルカミライだ。毎年100本以上のライブを行い、ライブハウスを主戦場に力をつけてきた彼らが、12月8日に自身最大のキャパシティとなる幕張メッセ国際展示場第1ホールにてワンマンライブ『A CRATER』を開催する。現場で経験を積み、ライブバンドとして歩んできたハルカミライが、一つの大きな分岐点を目前に控えたこの機会に、彼らのライブスタイルや2017年の初ワンマンライブから現在までの飛躍について振り返ってみたい。


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  ハルカミライは橋本学(Vo)、須藤俊(Gt/Cho)、小松謙太(Dr/Cho)、関大地(Gt/Cho)からなるロックバンド。2016年7月に、念願だったインディーズレーベル<THE NINTH APPOLO>への所属を発表。今年1月には<EMI Records>から初のフルアルバム『永遠の花』をリリースし、メジャーデビューを果たした。2018年には、150本以上のライブを敢行。さらに『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』や、『京都大作戦』などの大型フェスにも参加するなど、着実にメインストリームへ駆け上がっているバンドである。


 彼らのキャリア初ワンマンライブは、2017年12月にスタートしたツアー『俺たちが呼んでいるツアー』初日となった渋谷QUATTRO公演。それから約1年後、Zepp Tokyoでのワンマンライブ『A GOLDEN』を開催し、ソールドアウトさせた。特にZeppレベルの大きなライブハウスは、およそ1年前には会場を押さえないとなかなか使用することはできない。キャパ約800人の初ワンマンライブを終えたあと、キャパ約3000人の日本最大級のライブハウスに、”大きな博打”を打ち、見事大成功を納めたのだった。(THE NINTH APOLLO 渡辺 旭氏Twitterより)。筆者もこの日のワンマンライブを見ていたが、熱気溢れる彼らのライブには心奪われたし、彼らの勢いがどんどん加速していくのを体感することができた。


 ハルカミライのライブスタイルは、とにかくストレートで熱量の高さが尋常ではない。青春パンク的な要素を持つ曲も多く、フロアはたちまち拳と歓声に包まれる。観客が熱くなればバンドが熱くなり、バンドが熱くなれば観客も熱くなる。この構造は、”ここにいる皆が繋がっている”と強く思わされるし、ハルカミライ特有の高揚感だと感じる。〈あいつのことなら俺が ぶっ飛ばしといてやるから ぶっ飛ばしといてやるから 気にしてるんなよ〉と歌う「ファイト‼︎」では、友達が肩を組んで励ましてくれるような熱い演奏を繰り広げ、〈君にしか歌えない 君にしか歌えない 目の前に何人いようが 君の目を見ていたいの〉と真っ直ぐに届ける「君にしか」は、目の前のたった一人のために歌う。2曲とも「ひとり」のために歌った曲が、その場にいる「みんな」のものになっていくような、ファンとバンドとの距離をぐっと縮めてくれる楽曲だ。この肌感覚と温度感は彼ら特有のモノであり、大きな魅力と言えるだろう。また、フロントマンの橋本はフロアのど真ん中へ飛び込み、マイク1つで熱狂を加速させ、その後ろで楽器隊も負けじとダイナミックなプレイを繰り広げる。そこに観客も巻き込み、瞬く間に空間を一つにしてしまうのだ。一方、「ウルトラマリン」や「アストロビスタ」など、繊細でロマンチックな世界観の曲を、声高らかに歌うのもまた一つ彼らの特徴だ。


 そして、幕張メッセでのワンマンライブを目前にして、自主企画イベント『ヨーロー劇場2019』の東京キネマ倶楽部公演が10月4日に行われた。東京キネマ倶楽部は、グランドキャバレーだった施設を活用した独特な雰囲気が漂うイベントホール。ハルカミライがこれまで立ってきたライブハウスとは趣向の異なる会場だったため、筆者はいつもと違った演出がされるのではと予想していた。しかしそれは全くの見当外れで、彼らはいつものライブをいつも通りのスタイルで見せていた。橋本がライブの終盤「特別なことしなくても、特別にできるからいいんだ」と語っていたが、全くその通りだ。凝った演出などなくとも、ハルカミライがステージに立ち、音を鳴らすことでしか体感できない熱狂が現場には存在している。この日は、ファンの中で有志を集め、ステージの上でともに歌う場面があったのだが、その姿は本当の仲間のように見えた。どの場面を切り取っても、フロアの目の輝きと笑顔が眩しく、「フロアをこういう顔にできるバンドって最強だな」と思わされるばかりだった。途中、観客の中には笑いながら涙をこぼしている人も居て、きっとそれは、日々感じる不安や孤独を乗り越えた先の笑顔と涙なのだろうと感じた。ライブに心を動かされるとは、そういうことであってほしい。


 11月13日には、新シングル『PEAK’D YELLOW』を発売し、同月12日からは、GOOD4NOTHING、HEY-SMITH、SIX LOUNGEとの4マンツアーが決まっているハルカミライ。来る幕張メッセ公演では、珍しい360度センターステージでライブをするとのこと。ライブハウスの申し子が、沢山のファンが見守る晴れ舞台のど真ん中で、いつもと変わらない真っ直ぐな音楽を鳴らす光景を心待ちにしたい。(石見優里佳)