2019年11月10日 10:31 弁護士ドットコム
東京都多摩市にあるハプニングバー(ハプバー)が10月25日夜に摘発された。店長と店員の計4人が公然わいせつと同幇助の疑いで逮捕されている。
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ハプバーでは、客同士が店内で性行為など(ハプニング)をすることがあるとされる。不特定多数がいる場での性行為は、公然わいせつに問われる可能性が高く、客が逮捕されることもある。
しかし、ネットで検索すれば、自ら「ハプニングバー」と名乗る店が複数ヒットする。今回摘発された店舗もHPに「ハプニングバー」と表示していた。報道によると15年近く営業していたそうだ。
違法行為が起きている可能性が高いのに、どうしてハプバーは存在できているのだろうか。ナイトビジネスの法律問題にくわしい若林翔弁護士に聞いた。
「違法行為」があるのに営業が続いているとして、よく例にあがるのはソープランドだろう。風営法では、「浴場業の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業」と規定されている。
事実上は売春という違法行為が行われているとしても、「お風呂場で出会った男女が自由恋愛の末に性行為」という建前で、警察の監視のもとに営業が続いている。もっとも、ときおり売春防止法で逮捕・摘発されることもある。
一方、若林弁護士によるとハプバーには風営法上の規定はなく、「バーなどと同様の深夜酒類提供飲食店として営業をしていることが多い」という。つまり、法律上はただの飲食店だ。ソープのような建前もない。
「強いて考えるとすれば、バーとして営業していて、表向きは『わいせつ(性行為等)とまでは評価しえないレベルの何かしらのハプニングがあるかもね』というスタンスをとっているのではないでしょうか」
確かに、今回摘発された店舗のHPにも「ショーやプレイをメインとした性風俗店ではございません」との規約が書かれてあった。
しかし、裏を返せば、「メイン」ではないとしても、「ショーやプレイ」があることがほのめかされている。営業中の性行為は基本的にすべてアウトなはずだ。
「公然わいせつ罪に該当します。ハプバー内での性行為は、不特定多数の者が容易に覚知しうる状態でのわいせつ行為と言え、公然わいせつ罪の保護法益である社会の健全な性秩序が乱されたといえるからです」
だとすれば、どうして自らハプバー名乗る店舗が、摘発を免れているのだろうか。
「そんなに摘発が難しいとは思いませんが、あえて言えば、性行為など、公然わいせつ罪に該当する行為があったことを立証することが難しいのではないでしょうか。逮捕事例で、現行犯が多いのはそのためでしょう」
「ただ、現行犯でなくても、警察が内偵捜査をして証拠を集めれば、客の証言や店内の状況、コンドームやベッドが置いてあるなどの証拠から立証することはできると思います」
店側も当然、警察を警戒しているはずだ。立証ハードルの問題もあり、捜査のリソースが限られている以上、警察もよほどのことがないと本腰を入れて捜査しないということなのかもしれない。
【取材協力弁護士】
若林 翔(わかばやし・しょう)弁護士
顧問弁護士として、風俗、キャバクラ、ホストクラブ等、ナイトビジネス経営者の健全化に助力している。日々、全国から風営法やその周辺法規についての相談が寄せられる。また、店鋪のM&A、刑事事件対応、本番強要や盗撮などの客とのトラブル対応、労働問題等の女性キャストや男性従業員とのトラブル対応等、ナイトビジネスに関わる法務に精通している。
事務所名:弁護士法人グラディアトル法律事務所
事務所URL:https://fuzoku-komon-law.jp/