2019年11月10日 09:41 弁護士ドットコム
「体調が悪いので今日はリモートワークにさせてください」。管理職のヤマモトさん(30代・東京都)は、部下から届くこんなSlack(チャットツール)での連絡に、どう対応することが正解なのか頭を悩ませている。
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ウェブエンジニアやデザイナーの業務は、パソコンとネット環境さえあれば場所を問わず進められることが少なくない。会議や打ち合わせなども、社内のチャットツールやウェブ会議システムを利用すれば、必ずしも対面である必要はない。
そのため、ヤマモトさんの会社では、家族の看病や交通機関の混乱など、出社が難しい場合にはリモートワークすることを認めている。一方で、「体調が悪い」ことを理由にリモートワークできるのか、社内のルールでは明確ではない。
ヤマモトさん自身は、体調が悪いならきちんと休暇をとって回復してから業務にあたってほしいと考えている。そもそも、体調が悪い従業員に業務をあたらせることが、法的に問題にならないのかという点も心配している。
体調が悪いことを理由にリモートワークを認めることは法的には問題ないのか。反対に、社内のルールで禁止することは許されるのだろうか。リモートワークなど労働問題に詳しい藤井総弁護士に聞いた。
「はじめにリモートワークとは何か、整理しましょう。リモートワークは、労働条件の一つである就業場所を、会社ではなく自宅等とするものです。
はじめからリモートワーク前提で労働契約を結んだのであればいざしらず、就業場所を会社と定めて労働契約を結んだ場合に、従業員側から一方的に会社に対してリモートワークで働くこと(労働条件である就業場所を変更すること)を要求することはできません」
ーー今回の相談事例では、社内のルールが明確ではないものの、リモートワーク自体は認めているようですが、その運用の詳細については会社に裁量があるのでしょうか。
「リモートワークの対象業務や対象者の範囲、申請を承認する基準などのルール作りに関して、会社には裁量があります。体調不良を理由としたリモートワークに関して、そもそもルール上認めていなければ、申請は却下できることになります。
また、ルールが明確に定まっていなくても、合理的で公平な運用になっていれば、申請は却下できることになります」
従業員にベストなコンディションでパフォーマンスを発揮してもらうためにも、体調不良な状態でのリモートワークの申請を却下することには、合理性があるでしょう。
ーーそもそも、いくら本人が「大丈夫」と言い張っても、体調不良の従業員を働かせることに問題はないのでしょうか。
「会社には、従業員の健康状態を把握した上で、業務遂行によって健康を害さないように配慮すべき責任(安全配慮義務)があります。
本人が希望したからとは言え、体調不良の従業員がリモートワークすることを承認した場合、安全配慮義務違反となる可能性もあります。
というわけで、今回の相談事例では申請を承認すべきではありません。また、都合よくリモートワークが利用されないよう、きちんとルールを作って、従業員に周知しておくべきです」
【取材協力弁護士】
藤井 総(ふじい・そう)弁護士
「世界を便利にしてくれるITサービスをサポートする」ことをミッションに掲げて、ITサービスを運営する企業に「法律顧問サービス」を提供している。ITサービスを提供する企業やIT関連部門、IT関連組織が法律顧問サービスの主な導入企業になり、その業種はASPサービス事業者、ISP事業者、EDI事業、ハードウェアメーカー、コンサルティングファーム、海外政府系機関等、多様。
事務所名:弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
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