ドラマや映画などで、観るのが苦手な描写というものは人によって色々あるはずだ。僕の場合は「おばあちゃんが作ってくれたお弁当をクラスメイトが馬鹿にしてくる」とか「子供が描いた親の似顔絵を、第三者が『下手すぎ(笑)』みたいなことを言う」ようなシーン。ああいうのは見るだけでメンタルがガリガリ削られて、"メンタル鰹節人間"になってしまう。
似たようなことは、実生活でも案外起きているものだ。その実例を紹介しよう。(文:松本ミゾレ)
「オメガってありきたりで中途半端だよな」と仲間内で話していたら……
先日、5ちゃんねるに「上司の腕時計を小馬鹿にしたのがバレてた……」というスレッドが立っていた。スレ主は「同僚がチクった以外ありえない。許せない。クソ」と書き込んでいる。
この上司の腕時計はオメガのようで、以前、「オメガってありきたりで中途半端だよな」と仲間内に向けて発言したスレ主は、その後の飲み会で上司本人から「お前悪口言っただろ」と叱責されたらしい。
チクった人もチクった人だけど、こういう悪口をそもそも言っちゃう本人が一番悪いのに、なんか逆ギレしてて怖いなぁと思ってしまう。まあでも、悪口のきっかけとして、腕時計って割とあるあるなのかもしれない。何せ、目につきやすい部分で小馬鹿にしていい要素って限られるし。
ルックスを小馬鹿にしちゃいけない風潮はあるし、最近はなんでもかんでもハラスメント認定される。「じゃあ、どこをイジったらいいの?」と思ったとき「あ、腕時計だ」と思ってしまったのだろう。
でも、腕時計だって馬鹿にしていい要素ではないし、そもそも上司をイジるなら目の前でイジらないと最高にダサい。
「なぜ身に着けているか」の理由はそれぞれ 安直にイジるのはダメ!
このスレッドには、スレ主に対しての冷静な意見もいくつか書き込まれている。例えば、「オメガあたりは一番ちょうどいいラインだと思う」という声もあれば、「腕時計に面白み出す上司とか存在がスベってる(からオメガは妥当)」という声もある。
中でも目を引くのが、この書き込みだ。
「腕時計は貰い物としてもポピュラーだから、例えばその上司の腕時計が成人したときに両親からもらったもんかもしれないわけで、それを退職するまでつけ続けたいと思ってるかもしれないわけで、ネットのノリで好き勝手言うのはやめたほうがいいぞ」
これこれ。この意見を冷静に言われたら、スレ主も普通に反省するんじゃないだろうか。以降のスレ主の書き込みはないので、もう見てないかもしれないけど。
腕時計は貰い物としてポピュラー、確かにそうだ。大事な人から貰ったものという可能性は大いにあり得る。だとしたら、それを事情も知らない人間に小馬鹿にされるなんて、誰だって願い下げだろうという話だ。
これは腕時計に限った話でもなくて、ネクタイやペン。それから財布なんかもまた貰いものだったり、思い出の詰まったものである可能性が出てくる。だからやっぱり、他人の持ち物を小馬鹿にするもんじゃないということになる。
そもそも、そんなことをしたところで笑いはさほど起きないし、気分を悪くする人のほうが圧倒的に多い。スレ主もきっと、そういう不愉快な発言をしちゃった人物だからこそ、それを聞いた誰かが上司に密告したんだろう。それに対して「むかつく」なんて言っても仕方がない。