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=LOVE、シングル6作目にして初首位に 指原莉乃による色彩豊かな言葉選びと“声”を活かしたサウンドアレンジ

2019年11月09日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

=LOVE『ズルいよ ズルいね』(通常盤)

参考:2019年11月11日付週間アルバムランキング(2019年10月28日~11月3日/https://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2019-11-11/)


 最新のオリコンチャートによれば、=LOVEの『ズルいよ ズルいね』が142,949枚を売り上げて1位を記録。続くRYUJI IMAICHI『RILY』が36,579枚で2位、ADDICTION『Further away/Destiny』が24,016枚で3位となり、=LOVEが2位以下を大きく突き放し、初の週間シングルチャート1位を獲得した。


(関連:=LOVE「ズルいよ ズルいね」MVはこちら


 =LOVEは指原莉乃がプロデュースする12人組の声優アイドルグループ(髙松瞳が活動休止中のため、本作は11人)。『ズルいよ ズルいね』は6枚目となるシングルで、表題曲には作詞に指原莉乃、作曲に長沢知亜紀と永野小織、編曲に湯浅篤がそれぞれクレジットされている。作曲した長沢知亜紀と永野小織の2人は同グループのレーベルメイトにあたるClariSの近年の作品に多く関わっており、女性らしいファンタジーな世界観と理系用語を取り入れた歌詞が特徴の作家コンビだ。


 そうした点も影響してか、今作の歌詞には女性の切ない気持ちを歌った中に〈7時丁度発の電車〉や〈3年経っても〉〈2両目 君はいないね〉といった限定的な数字を表す単語が使われている。作詞した指原莉乃によるある種のオマージュ的配慮かもしれない。また、もうひとつ歌詞でポイントとなるのが色彩豊かな言葉選びだろう。〈赤いワンピース〉〈白雪姫〉〈コーヒー〉〈枯葉〉〈涙が透明な理由は〉などカラフルな情景を喚起させるワードチョイスが印象的。ただカラフルと言っても極彩色ではなく、白や透明、枯葉色といった主張の薄い、落ち着いた色なのも特徴だ。そして聴く者にイメージを固定させるこうした歌詞の連続によって、どこかワンシーンワンシーンが移り変わっていくような、楽曲自体がプロモーションビデオのような雰囲気を醸し出している。


 サウンドにおいては、もの寂しいピアノの響きと繊細なギターの音色、ドラマチックなストリングスのアレンジによって、美しくも儚い女性の心象風景が浮かび上がる。淡々と鳴り続けるキックの連打は、主人公が忘れようとしている〈記憶〉からまるで必死に逃れるかのように、気持ち速いくらいのテンポでAメロを駆け抜けていく。サビ直前の語り部分や、サビでの〈ズルいよ〉〈ズルいね〉の語尾が伸びて主旋律と重なる場面は、同グループが声優を兼業し“声”を商品としていることを最大に活かした特徴的な作りだ。サビ始まりであり、それが落ちサビ(ボーカル以外のトラックのボリュームを落としたサビ)である点からも非常に“声”に自信を持っていることがうかがえる。


 カップリング曲には、ポップなキャラソン風の「Sweetest girl」、爽やかなロックチューンの「推しのいる世界」、姉妹グループである≠MEによるストレートなロックナンバーの「「君の音だったんだ」」といった様々なテイストの作品が収録。表題曲の切ない世界観とは打って変わって明るい楽曲が並んでいる。


 繊細なサウンドと特徴的なボーカルワーク、そして姉妹グループも参加したカップリング曲によって、シングル6作目にして初めて記録したオリコンチャート首位。同グループの今後のさらなる飛躍に注目だ。(荻原 梓)