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安田レイ、『モトカレマニア』オープニングテーマが共感呼ぶ理由 ドラマとリンクした歌詞がポイントに

2019年11月08日 10:11  リアルサウンド

リアルサウンド

安田レイ

 普段、誰かと接していて直感的に感じる”好き”はシンプルな感情なのに、恋をしたときはそこに”嫌い”や”切なさ”や”愛”が入り混じるのはどうしてなのだろう。恋をしている人なら誰もが1度は、その複雑に入り混じったほろ苦い気持ちに振り回される。現在放送中のドラマ『モトカレマニア』(フジテレビ系)は瀧波ユカリが描く同名コミックスを原作にしており、女子の恋愛あるあるが魅力の作品である。実際、女性からの共感の声が多く、主人公の気持ちに寄り添うことで作品を楽しむ視聴者も多い。


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 ドラマは、元カレが忘れられない”モトカレマニア”な主人公・難波ユリカ(新木優子)が、元カレ=マコチこと斉藤真(高良健吾)と職場で再会し、恋に仕事に奔走するという物語。本作での、ユリカがマコチと再会してすぐに、SNSでマコチを見つけ投稿をくまなく読んだり、これまでにも様々なSNSでマコチを検索したことを話すなどのシーンは非常にリアリティがあり、恋に向き合うのが怖くてなかなか前に進めない姿は視聴者の共感を得ている部分でもある。出会ったその日の夜に気になった相手をSNSで検索するのは身に覚えがある人も多いはず。ドラマでは、オープニングで流れる〈誰よりスキだから 誰よりもキライになる〉というキャッチーなメロディと歌詞も印象的だ。同楽曲は複雑な恋心を歌った安田レイの「アシンメトリー」。ドラマに沿った歌詞は、現代女性なら思わず大きく頷いてしまうようなSNSに関する内容や、恋の正解がわからず苦悩する姿が描かれる。まさにユリカの気持ちを代弁するかのような作品であり、洗練されたメロディと共感性の高い歌詞でドラマを盛り上げている。ユリカの恋する相手は、一度は結ばれたことのある“元カレ”。「アシンメトリー」の歌詞は、全く手の届かない相手ではなく、どこか親近感のある相手との恋愛について描いているようで、ユリカがマコチを想う気持ちにリンクしていると言える。同じように距離が近くてもなかなか想いが伝わらない恋なら、気持ちに温度差のあるカップルや、長い片想いの人でも深く頷いてしまうだろう。つい、ユリカのように元カレや好きな人のSNSを探し、定期的に観察してしまう人は「アシンメトリー」の中の〈思い知る 別々のストーリー 知らない誰かに 向いたタグが寂しい〉という歌詞のストーリーがInstagramの「ストーリーズ」と結び付き、日々のモヤモヤを代わりに歌ってくれているような気持ちになるはずだ。


 〈誰よりスキだから 誰よりもキライになる〉というサビのキャッチーなメロディと歌詞は、恋をしたことがある人なら誰もが感じるチクリとした痛みを想起させる。その痛みは心地よさもあり、苦しさもある恋愛特有の感情だ。これは性別に関係なく感じるものだろう。心から好きだからこそ、相手の一挙手一投足に期待してしまう、そして勝手に期待したくせに勝手に寂しくなる。恋愛とは2人でするものなのに、歩幅が合わないだけでこんなに簡単に孤独になってしまうのだ。「アシンメトリー」ではそんな恋のもどかしさを〈「いいね!」は気軽につけれるのに 目の前のキミには何も言えない〉などSNSを思わせる描写で表現し、日常の”恋愛あるある”を盛り込みながら描いているのだ。前述の歌詞の「ストーリー」や「タグ」といったワードに加え、女性なら誰もが経験したことあるSNSでの恋愛事情が臨場感たっぷりの描写で描かれており、思わず共感してしまう。実際、YouTubeのコメント欄には自身の失恋エピソードや“モトカレマニア”な一面を書き込む女性も目立つ。その共感性こそが、ついつい何度も聴きたくなってしまう中毒性を感じさせ、本楽曲が親しまれる理由のひとつになっているのだ。


 『モトカレマニア』内で流れるポップでかわいらしいオープニングムービーと合わせて楽曲を聴くことで、「アシンメトリー」に隠された遊び心や切実な恋にさらに引き込まれる。また、ドラマを毎週観て楽しんでいる人は、ユリカとマコチを重ねて聴いても楽しめるだろう。すでに心の中に〈キミ〉が思い浮かんでいる人は、ぜひその相手を想像しながら本楽曲を楽しんでほしい。(Nana Numoto)