私が開催する、上司マインドを磨く"上司力セミナー"に参加いただいた皆様から、以下のような課題感やお悩みを頂くことがよくあります。
「私のチームに人のせいにばかりして自分の否を認めない部下がいるのですが、どのように対処したらいいのでしょうか?」
「人を責めてばかりいて、場の空気を壊す部下がいるのですが、どのように教育したらいいのでしょうか?」
このような行動の背景には、どのような"想い"や"想い癖"が隠されているのでしょうか?今回は上記のような行動をする部下の心の内面を明らかにし、どのように付き合っていけばいいのかについてお話してまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
自己重要感の低さが、他者否定につながる
皆さん、"自己重要感"と言う言葉を聞いたことはあるでしょうか? 自己重要感とは自分として「自分のことを大切な存在として認めたい」し、他人からも「大切な存在として認められたい」といった思いのことを言います。
現代社会においては、この"自己重要感"といったものをなかなか感じることができないといった問題があります。自己重要感と同じような意味でつかわれる言葉に"自己肯定感"といったものがあります。
内閣府の調査によると、「自分自身に満足している」と回答した人は日本人が45.8%なのに対し、アメリカは86%、フランスは82.7%、イギリスは83.1%、ドイツは80.9%、スウェーデンは74.4%、韓国は71.5%となっています。
「自分には長所がある」も日本は68.9%ですが、アメリカ93.1%、ドイツ92.3%、フランス91.4%、イギリス89.6%、韓国75%、スウェーデン73.5%と、日本は他国より著しく低い結果になっています。
ここで問題なのは、自己重要感の低い人は、自分だけでなく、他者を肯定することや他者を受容することが苦手だということ。自己重要感がないがゆえに、「あいつが悪い」「あいつは嫌だ」という感情を持ってしまいがちだというところです。
「あいつのせいです」とか「自分は悪くありません」といった言葉をよく吐く部下の心の奥底には、自己重要感の低さと言ったものが隠れているのです。
"ペーシング"とはいわゆる部下の話をよく聞く"傾聴"と言われるもの
上司に求められる役割は、組織成果の最大化です。そのことを念頭に「自分の否を認めない」「人を攻める」部下をいかに活かすかを考えていきましょう。その際に必要なのは"ペーシング&リーディング"のコミュニケーションです。
"ペーシング"とはいわゆる部下の話をよく聞く"傾聴"と言われるものです。自分の意見や想いはいったんわきに置いておいてしっかり部下の話を聴き、その想いを捉えていきましょう。その際には以下の3つがポイントとなります。
1.部下が仕事から得たいものは何か?
2.どのような能力をもっているのか?
3.どのような事に関心があるのか?
このような思いを捉えながら、部下との信頼関係を作り、自己重要感を上げる関りをしていくのです。部下の話を傾聴する以外に、以下のようなことを意識して行うことが効果的です。
・部下の下の名前を呼ぶようにする。
・上司自信の自己開示コミュニケーションにより共通項を感じさせる。
・「さすが」「なるほど」といった言葉を意識して使う。
・否定の接続詞「しかし」「だが」を使わない。
・「お前だけだぞ」といった特別感や味方感を出す。
といったものがあります。皆さんの状況に合わせて使い分けてください。"ペーシング"がしっかりなされたならば次は"リーディング"をしていきましょう。リーディングとは相手の行動を導く関わりのことを言います。
ティーチング(教えていく)やコーチング(考えさせていく)といったコミュニケーションにより、相手の行動を促していきましょう。
以上、今回は「人のせいにする」「人を攻撃する」部下との付き合い方に関して綴ってまいりました。ついこのような部下に対しては「めんどくさいやつだな」とか「どうしようもないやつだな」とあきらめてしまいがちですが、組織成果を最大化することを念頭に、本日お話させていただいた内容を実践してみてください。
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。