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『バチェラー・ジャパン』シーズン3はなぜ視聴者を熱狂させたのか? 3つのポイントから考える

2019年11月07日 12:11  リアルサウンド

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リアルサウンドテック

 Amazon Prime Video独占配信の人気リアリティーショー『バチェラー・ジャパン』シーズン3。成功を収めた一人の独身男性=バチェラーである青年実業家・友永真也のパートナーの座を巡り、20人の女性たちが競い合う。10月26日に放送されたエピローグでシーズン3は幕を閉じたが、前代未聞の結末がいまだに巷を騒がせている。


(関連:『バチェラー・ジャパン』シーズン3ーー女性陣が裏話暴露&バチェラー友永に不満爆発?


 では、なぜシーズン3はここまで視聴者を熱狂させたのだろうか。


■バチェラーの子どもっぽい部分を意図的にカット?
 まず、一つ目にあげられるのは、編集の巧さ。エピソード前半の友永は、女性たちと気さくに接しながらも、一人ひとりと真剣に向き合う誠実な姿が印象的だった。加えて、“運命の相手”への強い想いと理想は一貫していたため、歴代のバチェラー以上に、結婚への本気度を感じさせたのは間違いない。ついに、『バチェラー・ジャパン』で初めて結婚するカップルが誕生するかと、今後の展開に期待を抱いた視聴者も少なくなかったはずだ。


 しかし、エピソード9で事態は一変する。突如として、友永の我がままな一面や理不尽な部分が露わになった。もちろん、エピソード4の2on1デートで金子実加と中川友里を沼に飛び込ませたり、エピソード8の実家訪問で農業を営んでいる野原遥の家族の前で「野菜が嫌い」とはっきり発言したりと、これまでにも引っかかる部分は随所に散りばめられていた。興味のある女性とそれ以外の女性で態度に差がでるなど、わかりやすい性格が見え隠れする場面や、相手への思いやりや想像力が欠けているのかな? と疑問に思う点はあったが、それ以上に“バチェラーとしての完璧さ”の方が際立っていたように思う。だが、自身の家族に女性3名を一人ずつ紹介したエピソード9から、その築き上げてきたイメージが一気に崩れ出す。あからさまに、友永の子どもっぽい部分が全面に映し出されたのだ。


 これを皮切りに、畳み掛けるようにして友永の“奇妙な部分”が目につくようになる。特に、最終話で“運命の相手”として水田あゆみの名を呼び、ファイナルローズを手渡したあとの言動だ。水田を放ったらかしにして、“選ばなかった”方の岩間恵の元へ一心不乱に駆け寄る友永。そして、「ほんまに、ずっと好きでした」と謎の告白をし、立ち去る岩間の後ろ姿に「恵ー! 恵ー!!!」と名残惜しそうに叫んでいた。このシーンを見て、嫌な予感がした視聴者は少なくなかったはず。結果、友永は1カ月ほどで水田と別れていた。挙句、その後すぐに岩間と交際しているという前代未聞の展開に。


 エピソード前半に見せた、女性たちの想いをすべて受け止める懐の広さや、涙する女性たちを包み込むようにして励ます優しさは幻だったのか……。終盤に向けて、畳み掛けるようにして、友永の“ダサい”一面が、あれよあれよと膨れ上がっていき、気づけば大爆発していた。この手のひらを返したような前半と後半の落差が、視聴者の感情を熱く揺さぶったのではないだろうか。


 編集面で言えば、もう一人注目したい出演者がいる。最終的にバチェラーの愛を勝ち取った、岩間だ。思い返してみると、ほかの女性陣に比べて一人だけ、エピソード序盤から悪い部分が妙に目立っていたように感じる彼女。たとえば、EP4で田尻夏樹のことを「ああいう人」と呼んでいたり、EP5で水田に対して「彼の前では可愛く女を出せる」「イラっとしました」と発言したりと、基本的にインタビューシーンでは“悪いコメント”の部分が使われていた印象だ。


 もしこれが意図的に演出されたものだったとしたら、『バチェラー・ジャパン』の面白さの真髄は編集にあると言っても過言ではない。岩間の“裏の顔”をさりげなくだが、序盤からしっかりと見せていくことで、視聴者は良くも悪くも彼女を強く意識してしまう。同時に、“結婚”には向いてないのでは? と思う彼女にのめり込んでいく、友永の“矛盾点”も際立つのだ。


■リアリティーショーだからこそのルールとマナー
 最終回が配信される直前、友永と岩間が外でデートしている写真が、SNS上で出回り、炎上していた。過去のバチェラーが、ネタバレ防止対策として「配信がすべて終わるまで外で会ってはいけないというルールがある」ことを明かしているため、「ルール違反だ!」と批判が殺到。


 加えて、『バチェラー・ジャパン』配信中に岩間は、自身のSNSにたびたび意味深な投稿をしている。友永の故郷・神戸の展望台で撮影したと思われる写真や友永の趣味であるゴルフを楽しむ写真、関西弁で話している動画など。これが友永との関係を“匂わせている”と、一部の視聴者から指摘されていた。


 これらのSNS上での問題と、ファイナルローズを渡した相手ではない女性との交際という明白なルール違反によって、視聴者に番組そのものとローズへの価値に疑問を抱かせる結果になってしまった。『バチェラー』の魅力は生々しい人間ドラマだが、これはあくまでリアリティ“ショー”である。番組のルールに則って恋愛すべきだと言えるため、その前提を覆してしまったことは、大きい。


■対照的な立ち振る舞い
 エピローグで、水田と交際中に岩間に会いに行ったことを打ち明けた友永。スタジオにいた田尻が「ありえない」と指摘すると、友永は鋭い目つきで睨みつけ、反論している。自分から求めた家族の客観的な意見に対しても、「俺は恵さんがいいと思ってるのに!」と強く反発した友永。自分の思い通りにならないと不機嫌になる、あまりにも幼い一面に、引いてしまった視聴者も少なくないはずだ。


 一方で、岩間の立ち振る舞いも印象的だった。エピローグで、スタジオに登場した際に、水田や視聴者に対して、謝罪や気遣いの言葉を一切発しなかった岩間。その堂々とした態度が、より周囲を刺激してしまう結果に。


 そんな二人とは対照的に、完璧な立ち振る舞いだった水田。交際1カ月で別れを切り出され、すでにほかの人と付き合っていると知っても、最後まで友永と岩間を責めることはなかった。「どんなことがあっても、真也の味方」という自身の言葉を貫き通したのだ。それどころか、重い空気を払拭するかのように、終始笑顔だったり冗談を飛ばしたりと、場を和ませていた水田。彼女の絶妙な気遣いとすべてを受け入れる寛容さによって、友永と岩間の拙い言動がより悪目立ちしてしまったことは明白だった。


 エピローグの終わりに、指原莉乃が「めちゃくちゃ胸糞悪いすわ」と視聴者の心境を代弁していたが、このドロドロの結末こそリアリティショーの醍醐味なのかもしれない。意図的に演出された結末だとすれば、実に見事なものである。(文=片山香帆)