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職務質問で「顔写真」撮影、拒否しても執拗に迫る…「違法捜査」じゃないのか?

2019年11月07日 10:11  弁護士ドットコム

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沖縄県那覇市で、視覚障がい者の70代男性が職務質問を受ける際、警察官に携帯端末で顔写真を撮影された――。地元紙『琉球新報』(10月28日)が報じている。


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琉球新報によると、男性は10月15日午後5時ごろ、那覇市の歩道を歩いていると、警察官2人から「酔っぱらいが近くで倒れている。事件があったようだ」「(容疑者と)あなたの服装が似ているから写真を撮らせてほしい」と声をかけられた。



男性は拒否したが、警察官がしつように写真を撮らせてほしいと要求してきた。男性は視覚障がい者で、夕暮れが迫っている中で、まったく見えなくなることをおそれて、やむなく応じたという。



警察官の1人が、携帯端末で、男性を1メートルくらいの距離で撮影したそうだ。県警は、琉球新報の取材に「適正におこなったものと考えている」とコメントしているようだが、はたして、このような写真撮影は法的に問題ないのだろうか。小笠原基也弁護士に聞いた。



●令状がなくても写真撮影が認められるケースがある

「刑事訴訟法は『検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない』と定めています(218条1項)。



また、『身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、第一項の令状によることを要しない』としています(同3項)。



要するに、身体の拘束を受けている被疑者の写真撮影は令状が必要ない、ということです。



この条文を素直に反対解釈すると、身体の拘束を受けていない被疑者の写真を撮影するためには、撮影される本人の同意がない限り、令状が必要と読めます。



しかし、最高裁は、憲法13条を根拠に『みだりにその容ぼう等を撮影されない自由』を認めながらも、『現に犯罪が行なわれもしくは行なわれたのち間がないと認められる場合であつて、しかも証拠保全の必要性および緊急性があり、かつその撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもつて行なわれるとき』には、無令状での写真撮影を認めています(京都府学連事件)」



●「捜査機関や裁判所には大きな疑問を感じる」

「今回のケースでは、警察側の言い分としては、警察官の『説得』により、本人が同意をしたのだから、写真撮影は任意捜査として問題ないとの認識であると思われます。



また、写真撮影に限らず、任意同行、所持品検査、尿検査のための尿の採取などにおいても、警察官がしつように『説得』をおこない、被疑者が根負けして応じたような場面は枚挙にいとまがありません。



裁判所も、そのような場合に違法収集証拠となるのではないかという問題に対して、相当長時間その場所に留め置くなど、自由の侵害が重大でなければ『違法ではない』として、このような捜査を追認しています。



しかし、一般市民の感覚からすると、数人の警察官に囲まれて、『説得』に応じなければ、その場から立ち去れない状況が作られているのだとすれば、たとえそれが10分程度であっても、大きな恐怖を感じます。ましてや視覚障がいを持っていて、早く帰らないと、暗くなって帰宅が困難になるという状況であれば、なおさらです。



そうだとすると、先述のような任意捜査を広く認めている警察や裁判所の態度には大きな疑問を感じます」



●「捜査に名を借りた情報収取がおこなわれている可能性も」

「また、現在は、捜査で得られた証拠は捜査機関が独占していて、被疑者本人がアクセスすることは極めて困難であるうえ、不起訴になってもその証拠がどのように扱われているかは明らかではありません。そのため、犯罪捜査に名を借りた情報収集活動がおこなわれている可能性は否定できません。



自己情報のコントロールの観点からすれば、被疑者自身の情報が含まれている証拠(写真や指紋、DNAなど)には、被疑者が自由にアクセスでき、かつ、犯罪捜査の必要がなくなった場合には、確実にその情報を削除されることが保証される制度を構築する必要があると考えます」




【取材協力弁護士】
小笠原 基也(おがさわら・もとや)弁護士
岩手弁護士会・刑事弁護委員会 委員、日本弁護士連合会・刑事法制委員会 委員
事務所名:もりおか法律事務所