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映画プロデューサー北島直明が語り尽くす、『町田くんの世界』の手応えと日本映画の実情

2019年11月06日 16:21  リアルサウンド

リアルサウンド

北島直明プロデューサー

 映画『町田くんの世界』のBlu-ray&DVDが11月6日にリリースされた。『舟を編む』『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』の石井裕也監督が、手塚治虫文化賞・新生賞受賞作家・安藤ゆきの同名コミックを原作に、まったく新しい日本映画に挑んだ本作は、運動も勉強もできないが、“人を愛する才能”だけはズバ抜けている町田くんが、“人が嫌い”な猪原さんに出会ったことで、初めて“わからない感情”に向き合う模様を描いた青春映画だ。


参考:『町田くんの世界』細田佳央太×関水渚が明かす、大役抜擢の裏側と豪華共演者から学んだこと


 主演には、新人の細田佳央太と関水渚が1000人のオーディションから選ばれ、共演には、岩田剛典、高畑充希、前田敦子、仲野太賀、池松壮亮、戸田恵梨香、佐藤浩市、北村有起哉、松嶋菜々子と豪華キャストが集結した。


 本作の企画・プロデュースを務めたのは、映画プロデューサーとして『ちはやふる』『キングダム』など数々のヒット作を手掛け、今後も『ルパン三世 THE FIRST』『AI崩壊』などの注目作の公開を控える北島直明。劇場公開の手応えから、企画やキャスティング秘話、そして昨今の日本映画の実情まで、じっくりと語ってもらった。(編集部)


ーー本作は、今年6月に劇場公開されましたが、まずはプロデューサーとして、その手応えみたいなものから聞かせていただけますか?


北島直明(以下、北島):『町田くんの世界』は、ありがたいことにマスコミ試写の段階から、非常に大盛況でした。たぶん、メジャー配給会社やテレビ局の映画プロデューサーの方々が、ほぼみんな来てくれたんじゃないかっていうぐらい、試写に来てくれまして。それは僕のなかでは、初めての経験でしたね。


ーーかなりの“注目作”だったわけですね。


北島:その理由は、いくつかあると思っていて。まず、石井裕也監督が、少女漫画の原作を、どんなふうに映画化したのかという興味ですよね。で、もうひとつは、主演に新人俳優を抜擢したこと。正直、今の時代、メジャーの映画で新人俳優を主演に抜擢することって、ほとんどないじゃないですか。そうかと思えば、助演の方々は全員主演クラスで、しかもほぼ全員が何かしらの映画賞を獲っている実力派の俳優たちであるという。その構図のいびつさみたいなものは、やっぱり興味が湧くと思うし、僕が逆の立場であっても、きっと観に行くと思うんですよね。だから、そういう意味ではまずひとつ、プロの方々が気になるようなものが作れたという手応えが、その時点でありました。


ーー劇場公開されたあとも、実際に映画を観た方々には、概ね好評でしたよね?


北島:そうですね。そこはやっぱり僕も気になって、いろんなレビューとか、お客様の感想をTwitterとかで見るんですけど、確かに僕がプロデューサーを務めた映画では、今までにないぐらい絶賛の声が並んでいて。それは本当に、すごいことだなって思いました。ただ、そこから思ったほど、多くの人たちに広がっていかなかったというのは、ひとつ課題としてあって。その要因はいくつかあると思うんですけど、この映画の公開時のコピーって、「この世界は悪意に満ちている。でも──町田くんがいる。」だったんですね。


ーーはい。


北島:それを今回、パッケージのタイミングで、「初めての恋が、僕たちの世界を変えた」に変更しようと思っていて。というのはやっぱり、公開時のコピーも何も間違ってないし、実際に映画を観てくれた方々は、そのコピーにすごく納得していただけると思うんですけど、何の情報もない方々に「この映画は、こういう映画ですよ」って知ってもらうという意味では、ちょっとわかりづらいところがあったのかなと。ご飯を食べに行くにしても、何が出てくるかわからないレストランには、やっぱり入らないじゃないですか。


ーーそうですね。


北島:つまり、石井裕也監督が少女漫画原作にチャレンジして、しかも主演が新人で、脇を固めるキャストも豪華だっていう、このいびつさ加減みたいなものに反応してくださる方々はたくさんいるんですけど、そうではない方々──この映画は「泣けます」とか「笑えます」とか、映画代を払ったものに対して100%得られるものがないと、なかなか劇場まで足を運んでもらえないんですよね。そこはやっぱり、今のお客様って、すごく正直であるというか。なので今回、パッケージのタイミングでは、「初めての恋」というものを、前面に打ち出そうと思っているんですよね。


ーーなるほど。確かに、何よりもまず、初めての恋によって変わっていく若者たちを描いた青春映画ではあるわけで……。そう、この映画のそもそもの成り立ちについて、お聞きしてもいいですか。今回の映画は、もともと北島さん発信の企画だったわけですよね?


北島:はい、そうですね。


ーー北島さんは、そもそもなぜ、この『町田くんの世界』という漫画を映画化しようと思ったのですか?


北島:仕事柄、小説と漫画は日ごろからたくさん目を通していて、本屋さんにもしょっちゅう行って、気になったものは手に取るようにしているんですけど、この『町田くんの世界』の1巻が出たときに、タイトルが面白そうだったので、ちょっと読んでみたんですね。そしたら、キャラクターが面白いし、笑えるし……『別冊マーガレット』の連載なのに、主人公の男の子が恋を知らないって、なかなかぶっ飛んでいるじゃないですか(笑)。


ーー確かに(笑)。


北島:これまでの少女漫画のセオリーから言うと、イケメンがモテるとか、普通の女の子が突如モテ始めるとか……まあ、構造的には同じものが多いですよね。でも、この漫画は、その構造がまったく違うっていう。主人公である町田くんは、人のことがものすごく好きだけど、恋を知らない。で、ヒロインである猪原さんは、人のことが大嫌いっていう。この2人が恋を知ったときにどうなっていくのか、すごい気になったし、そこがすごくいいなと思って。で、石井監督は、実はもう5年ぐらい前から付き合いがあったんですね。僕がまだAP(アシスタント・プロデューサー)だった頃に、初めてお会いして……。


ーー北島さんは、APとして『桐島、部活やめるってよ』などに参加されていたんですよね?


北島:そうなんです。その頃に知り合って、いろいろ意見交換したり、「何か一緒に企画をやりましょう」みたいな話はしていたんですけど、なかなか形にならなくて。で、ちょうどこの企画があったので、「監督、少女漫画原作の映画って、どうですか?」って尋ねたら、「いや、北島さん、声掛けてくるの遅いよ。やっとですね」と言われまして……。


ーーそれは、どういうニュアンスなんでしょう(笑)。


北島:監督も何かの取材で言っていましたけど、今から10年後とかに過去の日本映画を振り返ったとき、少女漫画原作の映画がある種日本映画の一端を担っていた時代があったって、きっと言われるはずなんですよね。かつてのホイチョイ・プロダクションズの映画だったり、『踊る大捜査線』のようなテレビドラマ映画だったり、Jホラーだったり、そういうものが日本映画の一端を担っていた時代があるわけじゃないですか。それと同じように、少女漫画原作の映画がいっぱいあった時代があったよねっていう。で、そのときに、そこに自分が加担していないのが、なんか嫌だって監督は言っていて……。


ーーなんか嫌だ(笑)。


北島:それは流行っているからとかではなく、やっぱりそこには、間違いなく時代を動かすだけの何かがあったということだと思うんですよね。そもそも少女漫画ほど、何のてらいもなく、恥ずかし気もなく、好きだなんだって愛を語っている脚本も、世の中には存在しないわけで。しかもそれって、映画にとっては、非常にスタンダードなテーマだったりするわけじゃないですか。それを一回、自分たちもちゃんとやってみましょうよっていう。だから、非常に映画的なアプローチの仕方というか、考え方だったんですよね。


ーーそして、石井監督で撮ることになり……次は、キャスティングですか?


北島:いや、まずは脚本ですね。僕の場合、すべての作り方がそうなんですけど、まずは監督で、次に脚本なんです。キャスティングから決めるっていうのはゼロですね。脚本がないと、キャスティングのしようがないと僕は思っているので。もちろん、この役者さんと仕事をしたいから、こういう企画を出そうみたいな考え方もあるとは思うんですけど、僕の場合は、まず監督で、次に脚本なんです。


ーーでは、監督と脚本を詰めていって……。


北島:そうですね。監督と、あと共同脚本の片岡翔さんとある程度脚本を固めていって、それからキャスティングに入るんですけど、主演の2人はオーディションにしたいなっていうのは、もう最初から明確に決めていたんですね。なぜなら、この映画の主人公は、特殊な2人だから。恋を知らないキャラクターの人間が、認知度高い人気俳優とかだったら、「ん?」ってなるじゃないですか。そうではなく、なるべくパブリック・イメージのない人、色のない新人を選びたいなと思っていたので。


ーーしかも、年齢的に若い役者を……。


北島:そう。それは、以前僕がやった『ちはやふる』のときもそうだったんですけど、この映画の主人公とヒロインには、その年齢のときにしか出せないエネルギーみたいなものが、絶対に必要だなと思ったんです。それは、もとを遡れば、『桐島、部活やめるってよ』のAP時代に感じたことでもあって……。


ーーなるほど。


北島:あの映画の撮影当時、神木(隆之介)くんは高校三年生で、(山本)美月がちょっとお姉さんだったけど、まだ出始めの頃で、大学生とかだったので。というか、あのエネルギーを目の当たりにして、そのあと『ちはやふる』をやったら、もう戻れないですよね(笑)。なので、今回の主演の2人は、若い役者にしたいなって思って。で、そしたら監督が、「じゃあ、その2人をより際立たたせるために、まわりは手練手管の役者で固めましょう」って言って……それで監督から名前が挙がったのが、前田敦子、岩田剛典、(仲野)太賀、高畑充希という、この4人だったんですよね。


ーーその4人は、監督ご指名の4人だったんですね。


北島:そうなんです。で、この4人はみんな20代後半だったんですけど、芝居の力で高校生を演じるっていう、非常に難しいことをやってもらって。だから、4人ともつらそうでしたよ(笑)。それは、外見が高校生に見えるかどうかではなく、監督から提示されたミッションが、「高校生の芝居をしてください」っていうことだったから。となると、「そもそも、高校生って何だっけ?」ってなるじゃないですか。


ーー確かに……。


北島:で、たとえば、太賀が見つけたひとつの答えは、“拠り所のなさ”だったんですよね。高校生って、そういうところがあるじゃないですか。まだ、自分というものが完成されてないから。だから、映画のなかの彼は、ずっとソワソワしているんですよね。で、前田敦子さんは、彼女は彼女で、存在感を消しつつ、ちゃんと俯瞰で全体を見ている女子高生を、ちゃんとやるんだと。で、高畑充希は、憑依型の芝居を、そこにガッと持ってくる。で、岩田くんは、もう真正面から細田(佳央太)くんと向き合うしか、たぶん自分の立ち位置はないなと言って、そういう芝居をして。というように、それぞれがそれぞれの役に対するアプローチをしっかり定めた上で、現場に臨んでいるんですよね。そうやって彼らがしっかりした芝居をするから、主演の2人が、より異質に見えてくるっていう。その計算は、すごく良かったと思いますね。


ーーで、先ほどから何度も話題に出てきている主演の2人ーー細田佳央太くんと関水渚さんですが、この2人を選んだ理由は、それぞれどのあたりにあったのでしょう?


北島:細田くんにいちばん最初に引っ掛かったのは石井さんでした。入ってきた瞬間、「ん?」っていう感じがあったみたいで。僕も「おっ?」って思ったんですけど、石井さんよりも浅い感じで。というか、今の若い役者さんって、みんな髪型が同じだったり、みんな手足が長くてスラッとしていたりで、逆にみんな、あまり個性がないんですよね。そういうなかで、細田くんは、ちょっと骨太な感じで、目がグッと決まっていて、声もよく出ていて。そういう意味では、すごく異質だったんですよね。で、関水さんに関しては、驚かされたっていうのが大きいですかね。これはいろんなところで言っているんですけど、関水さんは、オーディションの部屋に入ってきた瞬間に、いきなり泣き始めたんですよ。


ーーああ……。


北島:たまにいるんですよ。緊張して泣いちゃう子って。でも、今回は、あまねく新人にチャンスを与えたいというか、映画の世界は人気者だけが連投する世界ではなく、才能とチャンスがあれば、いい役が掴める世界だっていうのが、ひとつテーマとしてあったので、泣いてるから落とすのではなく、「落ち着いたら、もう1回入っておいでよ」って言って、2回目入ってきたら、また泣いていて……。


ーーあらら……。


北島:で、実は3回目も泣いていたんですけど、まあ、とりあえずお芝居しましょうかって、演技をしてもらったら、それがビックリするようなお芝居だったんですね。ちょっと僕が想像してない台本の読み込み方をしてきていて。


ーーというと?


北島:そこでは、町田くんが夜家に帰ってくると猪原さんが待ち構えていて、「遅かったな、町田。で、どうなってんの?」という、町田くんの家の前で、2人が言い合うシーンをやってもらったんです。あの部分って、台本上で読むと、いきなり猪原がキャラ変を起こしていて、ちょっと意味が分からない、支離滅裂なシーンにしか、僕にはどうしても読めなかったんですね。それまでは「町田くん」って呼んでいたのに、急に「町田」って呼び捨てにしているし、「はあ? いよいよわけがわからなくなってまいりました」とか、変な言い回しでしゃべっていて。


ーー(笑)。猪原さんが、かなり挙動不審なシーンではありましたよね。


北島:だから、「これ、全然わからないわ」って思っていたんですけど、彼女がその芝居を明確に出してきたんです。ただ怒っているだけじゃなくて、不安とかいろんなものを混ぜ込んだ感情をそこにもってきて。で、もうひとつ、オーディションでやってもらったのが、猪原さんが、「町田くんには、何が見えてるの?」って言う最後のプールのシーンだったんですよ。そこで彼女が、またすごくいい芝居をしてきて……思わず僕、泣きそうになっちゃいましたから。だから、最初の印象と実際に芝居をしたときのギャップですよね。


ーー実際、完成した映画を観て、北島さんはどんな感想を持ちましたか?


北島:うーん、何だろうな……面白いとか頑張ったとか、そういう感情すら超えて、大げさなことを言うと、「あれ? 日本映画の歴史を動かしちゃったんじゃない?」みたいな感覚が、ちょっとあったかもしれないですね。映画を作っている人は、みんな日本映画を動かしてやろうと思って作品を作っていると思うんですけど、それを実感できたところがあったので。


ーー確かに、物語の設定やあらすじから、その座組に至るまで、かなり変化球的な作品ではあると思っていて……ただ、実は“王道青春映画”と言ってもいい映画ではありますよね。


北島:ホントそうですよ。いろいろ自由にやらせてもらいましたけど、だからと言って別にすごい変わった映画というわけではなく、やっていることは至って王道なんですよね。主人公である町田くんが、いろいろと波風を起こして、それによってまわりの人たちが変わっていく。で、それがまた合わせ鏡のように反射して、町田くんに返ってくるっていう。そういう意味では、意外と普通の作りにはなっているので。


ーーその中心には、いわゆる“ボーイ・ミーツ・ガール”の物語があるという。それを非常にフレッシュなものとして観ることができたのが、実はいちばんの驚きだったかもしれないです。


北島:それはやっぱり、さっき言ったように、主演の2人に何も色がないからだと思うんですよね。彼らが成長していく感じがわかるというか、どんどん色づいていく感じが、映画を観ていてわかるじゃないですか。


ーーそういう意味では、ドキュメンタリー的な面白さもありますよね。


北島:そうですね。彼らの行動は、ある意味読めないですから(笑)。でも、どんどん良くなっている感じは観ていてわかるというか、極端なことを言えば、髪の毛の質感すら変わっていっているように思えるっていう。


ーーちなみに、北島さんは、この『町田くんの世界』をはじめ、『ちはやふる』三部作や『キングダム』など、これまで実に幅広い作品を手掛けてきたわけですが、それらの映画に共通するものって、何かあったりするんですか?


北島:それはもう、明確にあります。“日常の崩壊”なんです。それが、僕のなかでは、ひとつの共通したテーマになっているんですよね。そもそも、映画は非日常を楽しむものなんですけど……。だから、僕が手掛けてきた作品は、“日常の崩壊”のシーンがより強調されているんです。たとえば、僕が最初にやらせていただいた『藁の楯』は、主人公である大沢たかおさんが、最初は自分とまったく関係ないと思っていた事件に、直接関わることになることから始まる物語で、その瞬間に、彼の日常は崩壊していくわけです。で、『オオカミ少女と黒王子』も、二階堂ふみさん演じる主人公が喫茶店でお茶をしているところに、たまたま山崎賢人くんが現れて、そこであの2人の日常が崩壊するんですよ。だから、あのシーンは、超長回しで撮っている。『ちはやふる』も、そうですよね。あの映画は、野村周平くん演じる“太一”の目線で描いていて、彼が屋上にいるところに、広瀬すずさん演じる“千早”が、バッと飛び込んでくるじゃないですか。あの瞬間、スローモーションになっているんですけど、そこがあの映画の“日常の崩壊”なんです。それと同じように、この『町田くんの世界』では、保健室のシーンですよね。そこで町田くんと猪原さんの日常が崩壊するっていう。そこは全部共通しているというか、それはもう、僕のなかではひとつ、明確なテーマとしてあるんですよね。


ーーなるほど。劇場公開作で言えば、これからフルCGアニメーション映画『ルパン三世 THE FIRST』、そして年明けには、『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』以来の再タッグとなる入江悠監督の『AI崩壊』と北島さんのプロデュース作が続いていくわけですが、昨今の日本映画の状況を見て、北島さんは何か感じるところがあったりしますか?


北島:ひとつ明確にあるのは、確かなものしか当たってないってことですよね。たとえば、『町田くんの世界』と公開日が同じだった『アラジン』とかって、観る前から面白そうだし、お馴染みのキャラクターだから安心な感じがするじゃないですか。『マスカレード・ホテル』とかもそうだし、原作モノ、続編とかリメイクとかも同じですよね。知っているものだから、それなら間違いないだろうっていう。今はそういうものが、お客さんに求められているんでしょうね。その一方で、『翔んで埼玉』のような、これを観たら間違いなく「笑える」とか、そういう分かりやすい作品がウケていて……。


ーーなるほど。


北島:あとは、もうこれは、ここ2、3年の話ではありますけど、いわゆる“デート・ムービー”とかではなく、“イベント・ムービー”みたいなものが、当たっていますよね。それを観ることによって、何かに参加するような……それってつまり、“共感性”というか、“共有性”だと思うんです。それはある種、SNSみたいなものと関係しているのかもしれないですけど。この映画を観たということを、SNSで報告することによって、それを共有した感じになるっていう。


ーーそういう状況のなかで、北島さんは、今後どんな映画を作っていこうと思っているんですか?


北島:これからですか? うーん……難しい質問ですね(笑)。ただ、ひとつ今、漠然と考えているのは、“なんかヤバそう”っていうのを、ちょっとテーマにしていきたいなっていうことで。“ヤバそう”って言っても、大量殺人だったり、悲惨な事件を描きたいというのではなく、世界のニュースとかを見ていても、「なんかヤバそうだな……」みたいなものってあるじゃなですか。たとえば、今だったら、香港の暴動とか。そういう、なんかヤバそうな世界に観客を連れていくような映画を作りたいかなっていう。終わっちゃいましたけど、『クレイジージャーニー』(TBS系)とかも、そうだったじゃないですか。みんなが知らないヤバい世界を見せてくれるっていう。何かそれが、共感ワードのひとつになっていくんじゃないかなっていうのは、ちょっと思っているんですよね。


※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記。


(取材・文=麦倉正樹/写真=宮川翔)