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新田真剣佑に死角なし! 『同期のサクラ』葵役では、“陰と陽”をあわせ持った実力を発揮

2019年11月06日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『同期のサクラ』(c)日本テレビ

 『同期のサクラ』(日本テレビ系)で主人公サクラ(高畑充希)の同期・木島葵を演じるのは新田真剣佑。正統派イケメンな真剣佑は一見するとビジュアル先行の役者のように思える。人づきあいがうまく、将来社長になると公言する葵もそんなイメージを踏襲した役に見えるが、俳優としての真剣佑は多面的な魅力を兼ね備えた実力派だ。


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 1996年11月16日アメリカ・ロサンゼルス出身の真剣佑は、2014年から日本での活動を本格化。真剣佑の名前を広く知らしめたのは、2016年公開の映画『ちはやふる‐上の句‐/‐下の句‐』だった。主人公・綾瀬千早(広瀬すず)の幼なじみである綿谷新を演じ、第40回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。『ちはやふる』の新は主人公に競技かるたを教え、強い絆で結ばれるキーパーソン的存在で、メガネをかけた文化系のイメージのギャップに射抜かれる鑑賞者が続出した。真剣佑本人にとっても印象深いキャラクターだったのか、「新田」という芸名の由来になるなど記念碑的な作品となった。


 真剣佑は不良キャラを演じても絶妙なハマり具合を見せる。2017年の映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』では、口よりも先に手が出るタイプの直情的な不良・虹村億泰を演じたが、キレの良いアクションと熱狂的な原作ファンも納得させる完璧なキャラクター造形を披露。また、ドラマ『僕たちがやりました』(カンテレ・フジテレビ系)で矢波高校に君臨する市橋哲人を演じた際には、鋭い眼光から凄みを効かせて不良トップの貫禄を見せた。


 俳優・千葉真一を父親に持ち、真剣佑本人も空手大会で優勝するなどアクションへの適性はもちろんのこと、配役の上でも二面性のあるキャラクターが印象に残る。『僕たちがやりました』の市橋は非道の限りを尽くす一方で、2人暮らしの祖母を思いやる一面があり、『ジョジョの奇妙な冒険』の虹村億泰は家族想いの友情に篤いキャラクターだった。陰と陽をあわせ持つ、ピュアで悲しみを内に秘めたような屈折した感情を表現できるのは、真剣佑のストロングポイントだ。


 それがもっともよく出ている目下の代表作と言っていい作品が2018年のドラマ『トドメの接吻』(日本テレビ系)だ。並樹グループの御曹司・尊氏として、跡取りの座を狙うホストの旺太郎(山崎賢人)をあらゆる手段で排除しようとする。必要とあらば親友を手にかける一方で、血のつながらない妹の美尊(新木優子)に純真な恋心を抱くなど、矛盾に満ちたキャラクターを演じ、裏の主人公ともいえる存在感を発揮した。アクションやバイオレンスに加えて、奥行きのある人物描写にも応えることができる真剣佑に現時点で死角は見当たらない。


 『同期のサクラ』の大平太プロデューサーによると、葵は「家庭では、優秀過ぎる父と兄に疎外され、居場所がないけれど、反発する勇気もなくて、会社で、精一杯、虚勢を張っている。複雑で繊細な心を持つキャラクター」だという。一見するとチャラいようで細かな感情の動きを要求される役柄は、まさに真剣佑のためにあると言っていいだろう。


 これまでの各話では、忖度できない主人公のサクラが同期の一人ひとりを体当たりのコミュニケーションで変えてきた。最後に残された葵は、サクラとの交流を通してどのように変わっていくのだろうか。感情を表に出さない葵の場合は、なおのこと悩みが深いようにも思われる。1話で1年が進むストーリーの折り返し地点での真剣佑に注目だ。


※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記


■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。