2019年11月05日 19:31 弁護士ドットコム
ヘイトスピーチ解消法の施行から3年。衆参両院の附帯決議では、インターネット上のヘイトスピーチについても取り組むこととしているが、現状、国による具体的な対策は取られていないままだ。
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「人種差別撤廃基本法を求める議員連盟」の総会が11月5日、参議院議員会館で開かれ、ヘイトスピーチ解消法の制定に携わった立憲民主党の有田芳生参議院議員は「ヘイトスピーチを含めたネット上の人権侵害について、東京五輪・パラリンピックまでに、何らかの対応をする議員立法を党派を超えて何とか成立させなければいけない」と訴えた。
ヘイトスピーチ問題に取り組んできた師岡康子弁護士は、川崎市が現在検討している、公共の場所でのヘイトスピーチに罰金刑を科す条例案を紹介。「本来は国レベルで整備すべきものだが、国の取り組みを進めるためのモデルとなるものだ」と評価した。
川崎市が公表した「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)によると、市内の道路や公園、駅など、公共の場所で、特定の民族や人種に対するヘイトスピーチをおこなった場合、市長が勧告を行う。勧告に従わずに2度目の違反があった場合、市長がやめるよう命令し、命令にも従わなかった場合に、氏名や団体名などを公表し、罰金を科すという。
ヘイトスピーチかどうかは、市長が決めるのではなく第三者機関の意見を聴取して判断するのが特徴だ。師岡弁護士は「現場で警察官が直接内容を判断して、その場で逮捕することへの懸念があった。また、市長が乱用して、本来の表現の自由が侵害されることはあってはならないため、慎重な仕組みをとっている」と話した。
素案では、インターネット上での差別的言動の拡散を防止するため、具体的な事例を公表するなどの対策も盛り込んだが、罰金対象からは除外している。師岡弁護士は「審査会が認定した悪質なネット上のヘイトスピーチについては、市が発信者情報の開示を要請することができる規定を盛り込んで欲しい」と要望した。
殺害予告された回数が約100万回以上にのぼり、自身もネット上の人権侵害を受けた経験がある唐澤貴洋弁護士は、ネット上で誹謗中傷やプライバシー侵害を受けてから発信者特定に至るまでの手続きの負担について説明した。
ヘイトスピーチについては、現状、特定個人に対する権利侵害でない限り発信者情報開示請求を行えないとし、「被害者は発信者もわからず、不安な日々を暮らさざるをえない現状がある。差別的言動については、法律が実効性のあるかたちで規制しなければいけない局面がきている」と述べた。