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ゴールデンボンバー、“4年以上行ってない県”ツアーで見せたしぶとさ 各メンバーの脚本による演劇も

2019年11月05日 15:21  リアルサウンド

リアルサウンド

ゴールデンボンバー(写真=菅沼 剛弘)

 『ゴールデンボンバー全国ツアー2019「地方民について本気出して考えてみた~4年以上行ってない県ツアー~」』が、10月19日、20日に神奈川県・横浜アリーナにて開催された。本稿では、1日目の模様をレポートする。


(関連:ゴールデンボンバーは楽曲を“前例のないアイデア”で届けて来た 新元号ソング「令和」での功績


 会場は立ち見が出るほどの満員御礼。開演前の会場に、注意事項を伝える樽美酒研二(ドラム)の声が響き渡ると、観客からは大きな拍手があがり、ライブへの期待は高まっていく。


 そして会場が暗転すると、喜矢武豊(ギター)の手によって作られたダンボール製ワゴン車に乗って、町中、田んぼのあぜ道、山の中(そして熊に遭遇し、それを食べる!)と、地方のファンのために全国津々浦々を旅するゴールデンボンバーたちの姿がスクリーンに投影される。ワゴン車の下から全員の足が出ている様はとてもキュートで笑いを誘う。ちなみに、BGMは「地方民について本気出して考えてみた」というポルノグラフィティの例の曲の替え歌である。


 映像が終わると、ワゴン車に乗ったままステージに登場するメンバー。「おまたせ神奈川県!」と嬉しそうな鬼龍院翔(ボーカル)。1曲目はワンマンライブ恒例の「ワンマン不安」。「待ってました!」と言わんばかりに、歓喜の声を上げながら振り付けに興じる観客たち。続いては「やんややんやNight ~踊ろよ神奈川~」で、ステージの鬼龍院と観客たちはAメロを交互にデュエットし、大いに盛り上がる。


 MCタイムでは、鬼龍院が「横浜アリーナ(神奈川県)は4年以上でなく3年ぶり」と前置きし「関東で(ライブを)やらないとクレームが殺到しそうだったので……。でも、横浜アリーナは私にとっては聖地ですから!」と会場への想いを語った。なお、鬼龍院が横浜アリーナを聖地とする理由は、彼の尊敬するGACKTのライブを、初めて観た会場だからなのはファンの間では有名な話だ。


 その後は、各々の自己紹介へ。鬼龍院は「美味しいシューマイ、鬼龍院~♪」と、オリジナル自己紹介を披露(観客の反応が薄いことまでお約束)。そして「ご当地の名産物」が大好きだという喜矢武は、「今年はご飯に合う名産物を各地で食べ歩いてきた」と語る。続いて「横浜! ぶっ放していこうぜ!」と、コールアンドレスポンスを指南する歌広場淳(ベース)。小学生レベルの下ネタを挨拶代わりにする樽美酒は、「地方ではホタルを観てきた。皆さん、ホタル観たいですか? ホタルを呼び寄せましょう!」と観客に呼びかけた。なお、喜矢武と樽美酒の発言は、次の曲「抱きしめてシュヴァルツ」への前フリである。


 きらびやかなイントロが流れ、会場中に観客の掲げるペンライトが揺れ、曲間の“ソロ(喜矢武と樽美酒のネタ披露タイム)”では、山盛りのご飯を抱えた喜矢武が、中華街名物のパンダまん(チョコ味)をおかずに早食いに挑戦。むせながら食べ続ける喜矢武に対して「もっといいのあったでしょ? ご飯とあってない!」とツッコミを入れる鬼龍院。一方、蛍光色のパンツを履き、ホタルに扮した樽美酒は会場上空を飛行。会場中が爆笑に包まれた。


 今回のツアーのテーマは「地方」。「いろんな地方をまわってきたけど、地方はファッションが流行遅れだ」と言い出す喜矢武に対して、「個人の見解です」とたしなめる鬼龍院。


 メンバーがトロッコにのって会場を周回した「やさしくしてね」に続いて、「また君に番号を聞けなかった」の曲間では、先程のネタ振りを受けて、ファッションセンター風の建物から、平安時代風、弥生時代風、原始時代風のファッションで出てくる喜矢武。最後には股間を葉っぱ一枚だけで隠した状態で出てくる始末。気がつけば歌広場も樽美酒も葉っぱ一枚で「やったやった」と踊りだし、ツッコミが追いつかない鬼龍院。


 そんな混乱のまま、今年の上半期、大いに話題をさらった「令和」のイントロが流れ、ステージは暗転。再び明るくなると、鬼龍院も葉っぱ一枚の姿に。すかさず「アンタも脱ぐんかい!」とツッコむ歌広場。そしてダンボール製のショルダーキーボードを抱え、お立ち台の上でアピールする喜矢武。ライブ前半戦にして、もう情報量が多すぎて何が何だか分からない。そこで腰をふるな樽美酒。


 お次はゴールデンボンバーのワンマンではおなじみの「演劇」タイムだ。毎回鬼龍院脚本による、メンバー同士のラブコメが上演されるのだが、今回はメンバーがリレー形式で脚本を書いていくという初めての試み。それぞれが脚本に対しての気持ちを表明する映像が流れ出す。


「他のメンバーが脚本を書く?(洋画のようなオーバーリアクション)絶対にムリ!」(鬼龍院)


「自信は、すごくあります。自信しかない(キリッ)」(歌広場)


「皆、心配になってるのかな? アッハッハ! 起承転結、ちゃんと勉強してきましたよ! 起承転結、キ……起きる話? ショウ……鬼龍院翔? テン……ケツ……おしりの話ね?」(樽美酒)


「正直、近年、鬼龍院しょんが……(※噛んだ瞬間コメント終了)」(喜矢武)


■第1幕(鬼龍院脚本)
 観客の不安をよそに、前代未聞のリレー脚本の演劇がスタート。主人公・鬼龍院は、同級生の歌広場と共にイケメンの集まる高校の学園祭へ。なお、メンバー同士のラブコメ演劇なので、全員ゲイという設定だ。ビラ配りをしている樽美酒に誘われ、「カブキ部」の発表会を見に行く鬼龍院と歌広場。とはいえ、カブキというのは名ばかりで、肌色多めの下劣なショーに辟易する鬼龍院。だから、そこで腰をふるな樽美酒(※2回目)。「そこまでだ!」と樽美酒たちを成敗する喜矢武。そんな喜矢武に鬼龍院は一目惚れしてしまう……。ここで第一幕は終わり、「愛してると言えなくて」へ。


■第2幕(歌広場脚本)
 喜矢武に心を奪われた鬼龍院。一方、樽美酒に夢中な歌広場。樽美酒と歌広場は「このあと打ち上げだから」と2人でどこかに消えていってしまう。そして舞台の出番を終えた喜矢武から、鬼龍院も打ち上げに誘われる。10分後、部室に向かったが、そこにはブリーフを喉につまらせた歌広場と、全裸で立ち尽くす喜矢武の姿。そしてそのまま「死 ん だ 妻 に 似 て い る」へ。ブリーフを口にしたまま、全力で踊りだす歌広場のプロ意識に感嘆するものの、この脚本、自分で書いていることに気づいて愕然とする筆者。


■第3幕(樽美酒脚本)


 絶命している歌広場を見て困惑する鬼龍院。なぜか脚本によって全裸にされた喜矢武は「このブリーフに樽美酒の名前が書いてある、彼が犯人だ」という。さらに困惑する鬼龍院に、喜矢武は「まだ生き返らせる方法はある!」と、7つ揃えると願いが叶う“ゴールデンボール”の存在を伝える。冒険の末、無事ゴールデンボールを発見し、何でも願いを叶えてくれる恐竜の子供“ガチュピン”が登場。歌広場を生き返らせようとする鬼龍院だったが、通りすがりの樽美酒が、ギャルのパンティならぬ、“イチロー選手のサインボール”を願い、鬼龍院の願いは儚く散ってしまう。そして「片想いでいい」でしっとりとした雰囲気に。とんでもない「転」に、オチはつくのだろうか。


■第4幕(喜矢武脚本)
 歌広場は亡くなり、容疑者である樽美酒は「嵌められた!」と、無罪を主張するも逮捕。事件は解決したように思えたが……。ここで突如、「ちょっと待って!」。聞き覚えのあるBGMに似た音楽の流れる中、「たった一つの真実見抜く! 見た目は子供! 頭脳はすごく大人!(※例の口調)」と、名探偵を名乗るエロ川コカンが登場(※例の服装だが、コカンだけ異様に膨らんでいる歌広場)。男子高校生のブリーフが大好きな彼は、カブキ部の部室に忍び込み、そこで殺人現場を目撃したという。樽美酒が席を外した後、顔の見えない男(※例の真っ黒な犯人)がやってきて、大量のブリーフを口につめたと語るエロ川コカン。ブリーフの匂いから、犯人は喜矢武だと指摘する。ショックを受ける鬼龍院の前で、「俺を全裸にしたあいつらの台本が許せなかった! だからあいつを殺し、あいつを犯人にした」と動機を告白する喜矢武。謝る歌広場と樽美酒。鬼龍院は「僕は裸の豊さんが好きです!」と告白。最終的に全員全裸になり「やっぱりゴールデンボンバーはシモネタと裸が好きだった。すみません」と、ハッピーエンド(?)。前代未聞のリレー脚本はこうして幕を閉じたのであった。そしてこんなシーンにぴったりなのか、そうでもないのか、「世界平和」を披露した。


 カオスすぎる余韻を引きずりながら、気を取り直して再び通常のライブパートへ。「最近どう?」と鬼龍院が喜矢武に尋ねると、「ツアーで地方へ行くと、野生の動物をみかける。猟銃ハンティングをやってみたい」と、いかにもなネタフリを口にし、「ガガガガガガガ」へ。ソロでは、猟銃を抱えた喜矢武が登場。上空に向けて撃ちまくると、キジや鷹がボトボトと落下し、最後にはバズーカを持ち出し発射。しまいには大量のホタルまで落ちてくる始末だ。


 続いての「ぼくの世界を守って」では、メンバー全員が再びトロッコで周回し、観客から大きな声援を浴びる。そして「まだどこにも公開していない新曲」として、「かまってちょうだい///」を披露。予想外のサプライズに、会場中が大きく沸いた。現代的なファン心理を巧みに表現した歌詞と情報量の多いダンサブルな楽曲は、SNS上でも話題になりそうだ。


 「もうちょっと暴れてみようか?」と鬼龍院の言葉から、「暴れ曲」、「†ザ・V系っぽい曲†」とバンギャル大歓喜の流れに。本編最後は「イヤホン」を(エアー)演奏しながら、またトロッコで会場を回っていく。嬉しそうに歌い上げる鬼龍院、客席に大きく手をふる喜矢武、肉体美を見せる樽美酒、“ファンサ”仕草が異様に細かい歌広場。それぞれのファンへの愛情を感じる時間だった。


 (本編終了約2分後に出てくると予告された)アンコールでは、歌広場の物販紹介をはさみ、本編終盤に暴れた観客に対して「ちょうどいい曲があるよ」と、先日配信されたばかりの「首が痛い」を披露。こちらはヘドバンなどで身体が痛くなってしまった……という楽曲だ。演奏中に“首が痛い系イケメン”ポーズ(アニメやゲームのキャラクターイラストにおいて、やたらと男性キャラが首に手を当てている構図が多いことからそう呼ばれている)をするのも楽しい。


 本日3度目になる「最近どう?」という鬼龍院のネタ振りに、「地方は空気が美味しい」と喜矢武。その後始まった、「きかせて!アンコール」(氣志團への提供曲)では、QUEENの「We Will Rock You」のようなリズムをとる観客。そして喜矢武のソロでは「空気が美味しい」と深呼吸。吸い込む力が強すぎて、何でもかんでも吸い込んでいまい、最終的に喜矢武の身体が破裂して死んでしまうという演出も(なお樽美酒による電気ショックでなぜか復活)。最後は、金テープ降り注ぐ中「女々しくて」を披露し、ダンボールワゴンでステージを後にした。


 そして「数日後ーー」というナレーションとともに、映像が流れ始める。11月16日に緊急配信される(半年以上前から告知されているが「緊急」配信である)無人島ライブのために、海を渡ろうとするゴールデンボンバー。「この車じゃ無人島に行けない」と嘆く歌広場に対して、「俺のダンボールをなめるんじゃねえよ!」と喜矢武。なんとダンボールワゴンが船に変形し、無人島へ出発するゴールデンボンバー。彼らの旅は続く……と映像は締めくくられた。


 ダブルアンコールを求める声に、再びステージに戻ってくるメンバー。本編でさんざん暴れたけれど、追い打ちをかけるように激しい「ローラの傷だらけ」を投下。「ご無理なさらず!」と優しく煽る鬼龍院。思いっきり暴れて完全燃焼した観客たちに対して、「トロッコで回りきれなかったから」と会場を徒歩で一周。メンバーがそれぞれ、観客への感謝を口にしながら、ゆっくりと回っていく。


 鬼龍院が「やっぱり聖地は最高だ! 楽しかったよ! ゴールデンボンバーは、まだまだしぶといから、皆もしぶとくいろよ! 必ずまた会おうな!」という言葉を残して、この日のライブは終了した。


 思い返せば、大ブレイクのきっかけとなった「女々しくて」リリースから10年。“一発屋”と自虐しつつも、今年も「令和」で話題をさらうなど、毎年なにかしらの爪痕を残し、生き延びてきたゴールデンボンバー。その“しぶとさ”には恐れ入る。これからも魅力的な楽曲と、予想もしないパフォーマンスで我々を楽しませてほしい。(藤谷千明)