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“正社員YouTuber”として働くクリエイターの仕事内容は? 本人に話を聞いてみた

2019年11月05日 14:41  リアルサウンド

リアルサウンド

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 YouTuberと企業のコラボレーションプラットフォームを運営する株式会社BitStarが、2019年4月に正社員雇用による「社員YouTuber制度」を策定し、その後1名が入社。現在は第二弾として「正社員漫画家YouTuber」の採用をスタートしている。


 社員として給与を支給しながらYouTuberの活動を支援する、という制度が生まれたことで、入社したクリエイターはどのように活動しているのだろうか。リアルサウンドテックでは同社で“正社員YouTuber”として活躍しているがちょす氏にインタビュー。正社員YouTuberになった経緯や、同制度ならではのメリット、日々の活動内容について、じっくりと話を聞いた。(編集部)


(参考:YouTuberの動画時間、なぜ年々長くなる? 人気チャンネル5組の動画より考察


・ 「大きな機会をいただけるのは、会社所属の特権」
ーーまずは、がちょすさんが「BitStar」で正社員YouTuberになった経緯から聞かせてください。


がちょす:今年の5月末に、今回の求人を見て応募を決めました。前職は子どもたちとの関わりが多いエンタメ系の仕事でしたが、もっと人前に出る仕事をしたいなと思っていたんです。テレビ関係も視野には入れましたが、友人がYouTuberをやっていたこともあり、話を聞くうちに自分でもやってみたくなりました。


ーーということは、もともとYouTuberとして活動していたわけではなく、このタイミングで始めたに近いと。


がちょす:そうですね。YouTubeを個人で今から始めるとなると、右も左も分からない自分には少しハードルが高いなと思っていたところ、今回の「正社員YouTuber」の求人を見つけたんです。


ーーYouTuberとして活動するにあたり、魅力に感じた部分とは?


がちょす:動画の企画から準備を全て自分でできることが魅力的でした。自分でゼロからコンテンツを作り出し、それを世の中に発信していく面白さを味わうことができます。とは言え、常にトレンドが変化していくので24時間アンテナを張って生活をするようになりました。


ーー実際正社員YouTuberとして入社するまで、どういう試験を受けたのか気になります。


がちょす:書類選考に受かって、3回ほど面接をしていただきました。毎回別の方に担当いただいたんですけど、人間性に着目するような質問が多かったのを覚えています。「普段どういう生活を送ってるんですか?」だったり、趣味や特技についての質問でした。最初は緊張して足がガクガク震えてたんですけど、面接が終わる頃にはすごくリラックスできていました。そこで趣味が模型製作であることなどをお伝えした結果、自分の性格や特技に合うものとして「ニンジャボックスTV」のオーディションを勧めていただいたんです。


ーーいま「性格」という言葉が出ましたが、がちょすさんは自身をどういう性格・タイプの人間だと思っていますか?


がちょす:学生時代は学級委員を引き受けて、みんなを引っ張っていくタイプでした。でも、自分の時間も欲しいし、何かに集中するときは周りのものをすべてシャットアウトする、という2面性を持っていましたね。スイッチが急に入って作業に没頭したり、スイッチが切れて家で一日中ボーッとしていたり。その両方が今の仕事に活きている気がします。


ーー「正社員YouTuber」って、言葉としてすごくキャッチーなんですが、実際には何をしている人なのか、というのはあまり見えづらいところがあります。普段はどういう仕事をされているんですか?


がちょす:僕の場合は、DIY系のチャンネルで設計とデザインを一貫して任せていただいているので、次に作るもののデザインや必要なものの買い出し、企画会議への出席、次の企画に向けたリサーチなどが主な業務です。今は毎回の収録や会議がすごく勉強になっていて、「こうすればいいのか」「これが足りないかもな」と思わされる毎日ですし、今後もゴールはないんだろうなと思いました。


ーーYouTuberデビューからこれまで、一番辛いと思ったことは?


がちょす:辛いなって思っちゃうとその時点で力が出なくなるタイプなんですけど、このお仕事を始めてから、1回もそう思ったことがないんです。企画で体力的にキツいものに挑戦していても、あまりそこは苦にならないですし。唯一ダメだったのは、お化け屋敷に入る企画ですね(笑)。


ーーこのタイミングで活動を始めたので、一般的なYouTuberさんとの比較は難しいと思うんですが、がちょすさんなりにフリーのYouTuberと正社員YouTuberの違いを分析すると?


がちょす:YouTuberデビューしたての僕が『東京ゲームショー』のブースに出たりと大きな機会をいただけるのは、会社所属の特権だと思います。あとは、毎月決まったお給料をいただけることも大きいですね。フリーYouTuberだと、チャンネルを収益化して、安定するまで時間がかかると思うので。


 また BitStarのスタジオや設備を自由に使えて、動画編集やノウハウを学べる環境なのはとても大きく、YouTubeの仕事に100%専念できることは強みだと思います。


ーーあと、企画会議に呼ばれるというのは大きいですよね。フリーの方々では味わいにくい領域というか。


がちょす:そうですね。会議で話していることをリアルタイムで聞けるのは大きいです。ディレクター側の意見も、YouTuber側の意見もわかるので。


・「少しでもやってみたいという気持ちがあれば、絶対に大事に」
ーーどちらの立場も経験したうえで、これからご自身が目指す方向性は?


がちょす:この仕事を始める前に「僕が発信するエンターテイメントを通じて、それを見てくれている人が『何か始めたい』って思うきっかけを作る存在になりたい」という目標を立てました。最終的にそこに辿り着けるなら、どの道を通ってもいいんじゃないかと考えながら、目の前のことに必死に取り組んでいます。


ーー仕事としての責任感を負いつつ、楽しんで活動されているのが、お話を伺っていてもよくわかります。


がちょす:ありがとうございます。ニンジャボックスのメインターゲットは小学生の男の子なんですけど、最近「彼らが真似できるものを作っていくのか、それとも真似できないけどとにかくカッコいいものを作るのか」という迷いがあって。最終的には「こんなスゲーものができるんだ」というワクワク感を届けたいと思って、後者になったんです。


ーー先輩YouTuberたちと共演してみて、大きく影響を受けたことはありますか?


がちょす:1回目の動画で、はじめしゃちょーの畑の皆さんとコラボさせていただいたんですが、冷蔵庫の中にスイカの煮汁が入ってたり、部屋にあるものが全部「これで1本企画取れるじゃん」という環境で。生活の中にYouTubeが溢れてるってこういうことなんだ、と強く感じました。しかも、皆さん気さくな方で、動画のなかでも「もっとこういうのやりましょう」と提案してくださったり、カメラの回っていないところでも優しく接してくださって感動しました。僕自身も、それから生活の中で「これは動画になるか?」という視点で物を見るようになってきました。


ーー編集についてはこれから勉強、という感じですか?


がちょす:そうですね。やっぱり編集からの視点として「もっとこういうのが欲しい」「ここはもう少しタイトに」といった感覚がわかれば、動画を撮る時もより質の高いものを収められると思うので、積極的に勉強していこうと思っています。


ーー現在は「正社員漫画家YouTuber」の募集も始まっていますが、「正社員YouTuber」の先輩として伝えたいことはありますか?


がちょす:僕自身、YouTuberとしての経験がないところから入って、今のお仕事をさせていただいているので、少しでもやってみたいという気持ちがあれば、それを絶対に大事にして欲しいです。あと、先輩としては色んな方が応援してくださっておりますが、僕がBitStar初の正社員YouTuberとして道を作れるように、精一杯努力していきます。


(中村拓海)