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Twitterが世界的に政治広告を禁止 Facebookと対立&トランプ陣営は猛反発

2019年11月05日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 TwitterのCEOジャック・ドーシー氏は10月30日ツイートし、世界的に全面的な政治広告を停止すると発表した。2020年のアメリカ大統領選で再選を目指す現職トランプ陣営は、この決定を猛烈に批判している。


(参考:Twitterが“興味のあるトピック”をフォロー・非表示にできる新機能実装へ “ネタバレ”も防げるか?


・問題は表現の自由ではなく、“リーチをお金で買える”こと
 ジャック・ドーシー氏はTwitterで「私たちは、Twitter上のあらゆる政治広告を禁止する決定をした。政治的なメッセージのリーチは、買うのではなく、獲得すべき。人々がアカウントをフォローするかリツイートすることを決めたときにリーチを獲得する。お金で買うと、その決定は軽んじられ、高度に最適化され、ターゲットを絞った政治的メッセージが、人々に強制される。インターネット広告は政治に重大なリスクをもたらし、投票を左右させる」と発表した。


 さらに「インターネットの政治広告は、市民の言論に、新たな課題をもたらした。機械学習によるターゲティングの最適化、チェックされていない誤解招く情報、ディープフェイク(偽動画)等だ。政治広告だけでなく、インターネット・コミュニケーション全体に影響している。Twitterは、大きな政治広告の経済システムのごく一部に過ぎない。現職ひいきと主張する人もいるかも知れないが、多くの社会運動が政治広告なしで発展した」と展開。


 「今後は、将来を見越した政治広告の規制が必要だ。インターネットは全く新しい機能があるのだから、規制当局は公平な競争ために、対策を考える必要がある。最終決定を11月15日までにシェアし、11月22日から新ポリシーを開始する。これは表現の自由の問題ではなく、リーチをお金で買う問題だ。今日の民主主義は、想定しておらず、対策が必要」と警鐘を鳴らした。


・トランプ大統陣営が反発、戦略の練り直し迫られる?
 これに対し、『CNN』はトランプ大統領陣営の猛反発を伝えた(参考:https://edition.cnn.com/2019/10/30/tech/twitter-political-ads-2020-election/index.html)。


 トランプ大統領のデジタルキャンペーン責任者であるブラッド・パースケール氏は、Twitterの動きを「非常に馬鹿げた決定。トランプ大統領に最も洗練されたオンライン・プログラムがあるのを知っており、保守派を黙らせる企てだ」と批判した。


 ソーシャルメディア、特にFacebookは、政治家にフェイク広告を掲載することを許しているとして批判されている。ドーシー氏のコメントは、政治広告をファクトチェックしないFacebookの方針と相反する。


 ザッカーバーグ氏は、政治広告について「特に地元候補者、有望な挑戦者、メディアの注目をあまり集めないグループのための重要な声だ」と説明。しかしFacebookの従業員の一部が、ザッカーバーグ氏や他の幹部宛の書簡で「有力政治家は高額を費やし新たな声をかき消すことが出来る」と反論した。


 ザッカーバーグ氏は、政治広告は来年の収入の0.5%未満を占めるに過ぎないとし、Facebookのポリシーを巡る論争にもかかわらず、金銭的利益はほとんどもたらさないことを示唆した。


・奇しくもFacebook 対 Twitterの構図に
 『CNBC』は「マーク・ザッカーバーグ vs ジャック・ドーシー、シリコンバレーで最も興味深い戦い」と見出しを打った(参考:https://www.cnbc.com/2019/10/31/twitters-dorsey-calls-out-facebook-ceo-zuckerberg-on-political-ads.html)。


 ドーシー氏はマーク・ザッカーバーグ氏の名前こそ挙げなかったが、フェイク政治広告を掲載するというFacebookのCEOに一撃を食らわせた。


 現在、ザッカーバーグ氏は「政治広告を取り締まるのは、Facebookの仕事ではない」としている。 しかし、ドーシー氏の発表は、その議論に対する最大の脅威だ。TikTokも、政治広告を禁止すると発表したが、政治や文化の議論を支配するプラットフォームであるTwitterの決定は、更に重要な意味を持つ。ちなみに2018年のアメリカ中間選挙で、Twitterの政治広告収入は、300万米ドル(約3億円)のみだった。


 ザッカーバーグ氏はこの決定について「政治広告を許すか否かを考え続ける」とし、方針を転換する可能性を残している。


 「民間企業が、政治家やそのニュースを検閲するのは正しいと思わない。過去にこれらの広告を掲載すべきではないかを検討し、今後も検討を継続する。今のところ、広告を維持すべきだと考えた」とも発言しているが、ザッカーバーグ氏が方針を覆し、ドーシー氏が今シリコンバレーで最も熱い議論に勝利するかもしれない。


・専門家からも様々な意見が
 『The Guardian』は、複数の専門家の意見を紹介している(参考:https://www.theguardian.com/technology/2019/oct/30/twitter-ban-political-advertising-us-election)。


 ノースカロライナ大学のジャーナリズム・メディアが専門のダニエル・クライス准教授は「企業は全ての政治広告を禁止するのではなく、広告ターゲティングで個人データの使用を制限することに焦点を当てるべきだ」と主張している。


 コーネル大学のコミュニケーションが専門のJ・ネイサン・マティアス助教授は「この禁止措置により、より多くのボットを使用したキャンペーンを推進したり、Twitterで人間とソフトウェアのハイブリッド調整など、意図しない結果が生じる可能性がある」と予見。また「非政治的な論議の中から政治的なことを定義するのは非常に難しい。ポリシーがあまりにもルーズか、まずい場合、Twitterは公衆の健全性、政府サービス、市民生活に大きなダメージを与える可能性がある」と指摘する。


 トランプ大統領は、多くのテレビ局や新聞といったマスコミに不支持の論陣を敷かれたにもかかわらず、SNSを巧みに利用し、大統領選に勝利した。次期大統領選を占ううえでも重要な指標となる、SNSと政治広告の関係。議論が高まった結果、最終的な着地点はどこになるのだろうか。


(Nagata Tombo)