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香織が“人間臭くなる”瞬間とは? 『テラスハウス』卒業インタビューに感じた成長

2019年11月04日 16:31  リアルサウンド

リアルサウンド

『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』(c)フジテレビ/イースト・エンタテインメント

 Netflixで配信されているリアリティーショー『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』。10月22日にYouTubeにアップされた未公開映像には、香織の卒業インタビューが収められていた。


(関連:香織と春花の本音の言い合いに見えた“変化”とは? 『テラスハウス』第16話未公開映像


「人に良いなって思ってもらえる、人ありきの絵をずっと描いてきた」


 19TH WEEKの本編で、「ロンドンに家を借りまして……明日卒業します」と言い、翌20TH WEEKで足早にテラスハウスを去っていった香織。彼女は最後まで生活の中心が、仕事である“絵”だったように思う。


 思い返せば、テラスハウスに入居中、ほかのメンバーとは適度な距離感を保って接してきた香織。彼女は基本的には、自我を抑えて、他人を尊重してきた印象だ。特に女性メンバーの相談役として、中立の立場を守り続けていたように思う。共同生活においての調和を守るためには、彼女の存在は必要不可欠だったと言っても過言ではない。


 そんな香織は、見方によっては“本音を隠している”ようにも映ったため、それが原因で他のメンバーや視聴者から違和感を抱かれてしまった部分もあった。意識的にか無意識的にかは定かではないが、あまり人間味を見せないように立ち居振る舞っていたのは確かだ。だが、そんな彼女が人間臭くなる瞬間もあった。それが、“絵”に関すること。


 本編11TH WEEKで、ほかのメンバーに「悩みがある」と、絵の才能に自信がないことを吐露。本編16TH WEEKでは、個展のあとから目標がなくなってしまったと呟いていた。また、好意を寄せていた翔平に対しては「美大コンプレックス」ゆえと発言し、漫画家であるペッペについても「(同じ家にいるのが)結構嫌だった」と嫉妬していたことを明かしている。


 普段は、誰よりも冷静かつ客観的に物事を見れる香織だが、自分を抑えられず感情がむき出しになる瞬間は、いつだって“絵”に関係することだった。苦悩するとき、涙するとき、悔しいとき、嬉しいとき、楽しいとき……そんな喜怒哀楽だけでなく、彼女らしくない悪口や不満、そして恋に落ちる理由まで。


 香織の生活の中心が“絵”であることは、卒業インタビューからも伺える。彼女にとって絵は自分そのもの。自分を映す鏡のようなものなのだ。


 だが、卒業インタビューでは、そんな絵に対する考えと共に自分自身が、テラスハウスに入って少しずつ変わったということも語られていた。


「春花が、端的にいうと“本音で香織ちゃんとは喋れないよ”って言ってくれて。それは自分の絵もそうだけど、人に良いなって思ってもらえる、人ありきの絵をずっと描いてきたなって。自分の性格もきっとそうなんだろうなって思って。だから、向こうも踏み込めないところもあるし、私も正直ここは言わないでおこうかなって引いちゃうところもあったから、彼女はそういうのを取っ払ってくれた気がします」。


 テラスハウスに入って、みんなと暮らす中で、「すごくタフになった」と自身の変化を感じていた香織。この5カ月間の生活を振り返り、「大人になってから来た成長期みたいな感じでした(笑)。膝痛いくらいの」と表現していた。続けて「将来についても、あんなにいろいろ言われることなくて。クライアントさんとかは“いいね、いいね”って言ってくれるけど、そうじゃない、ちゃんと意見くれる人たちに囲まれたから、見たくない、聞きたいくないって避けてたところを、ちゃんとみんな言ってくれて、本当に成長期って感じでした」と口にし、晴れやかな表情で笑っている。


 きっと香織は、誰よりも傷つくことを恐れていたからこそ、これまでの人生では「あんまり人と、そんなに仲良くなることもなかった」のだろう。人に嫌われるのが怖いゆえに、客観的に物事を見る目を養い、視野の広さを身につけてきた。そして、瞬時に危険を察知し、可能な限り避けてきたように思う。それは、決して悪いことではない。むしろ、自己防衛として大事なことである。そんな中、テラスハウスという名の共同生活に飛び込んだことで、どうしても向き合わざるを得ない人間関係が生じ始めた。おそらく、彼女がずっと目をそらしてきたこと。それに今、生身でぶつからなければならなくなり、打たれて、傷ついて、立ち上がって、強くなる……それを、この5カ月なんども繰り返してきたのだろう。その結果、彼女は一回りもふた回りも強く大きくなったのだ。


 そんな香織の変化を感じられたのが、本編11TH WEEKでの出来事。大学のゼミの先生に、意を決して久しぶりに連絡し、相談したと明かしていたシーンだ。大学のゼミの先生からの返答に「結構、強めな打撃を受け……」と凹んでいた香織。だが、おそらく、彼女はその結果をわかっていたし、だからこそ、傷つくのが怖くて、これまでは連絡できなかったのではないだろうか。辛辣な意見をもらうことがわかっていながら、ぶつかっていくのは、相当な勇気がいる。テラスハウスに入居してなかったら、香織は今、そこまで強くはなっていなかったはずだ。


 香織は卒業インタビューの最後に、今後の仕事について「今もらった知名度よりも頑張れるように、“やってやるぞ!”っていう気持ちの方が、今すごく大きくなった。家入って、変わった。(テラスハウス入居の)最初の頃はそれこそ悩んでたけど、今は『テラス』の人で終わらないように頑張りたいと思ってます」と力強くコメントしている。この言葉だけでも、香織がテラスハウスに入って、たくさん苦悩したからこそ、これまでとはまた違った明るい未来へと飛び立っていき、そこで彼女自身の幸せを掴みとるに違いないと、そう強く感じさせられた。(文=朝陽空)