10月31日はハロウィンだった。海外では、仮装した子どもたちが近所の軒先を回り、お菓子をもらうのが一般的だが、日本の一部ではそんな可愛らしいものではなくなってしまっている。
渋谷駅周辺ではここ数年、ハロウィンが近づくと、仮装やコスプレを楽しむ若者で混雑する。昨年は軽トラックがひっくり返され、暴動のような事態になったが、報道によると、今年も痴漢や暴行などで11月1日朝までに9人が逮捕された。
センター商店街振興組合理事長の小野寿幸さんは
「みんなから『なんとかしてくれ』と連絡がくる。(ハロウィンの渋谷は)もう見たくもないしウンザリ」
と怒気混じりに語った。
前日までは「例年と比較しておとなしいな」と感じていたが……
10月31日の朝からニュースや情報番組で渋谷が度々取り上げられていた。小野さんは
「騒乱状態の渋谷が全国や世界に発信されてしまう。今までの『いい人が集まってくる街』のイメージが壊され、『渋谷には行きたくないな』という人が増えてしまうのではないか」
と危惧する。
ハロウィン直前の週末だった26日から30日までは「例年と比較しておとなしいな」と感じたという。ところが、31日正午を回ったあたりから徐々に人が増え始め、例年通りの光景になった。
渋谷区は今年6月、ハロウィン期間中の路上飲酒を禁じる条例を制定。さらに、周辺のコンビニなどに酒類販売の自粛を求めたほか、補正予算に1憶300万円を計上して100人態勢の警備を民間委託していた。
「路上飲酒はずいぶんと減り、ビンや缶などのゴミも昨年の半分ほどまで減った」
と小野さん。しかし、そうした成果は氷山の一角にとどまり、実際には警備が行き届かずに、今年も迷惑行為や営業妨害、痴漢などが後を絶たなかった。逮捕された9人はそのうちのごく一部だろう。
「結果的に、警備に1憶円を投入したことは無駄だったと言わざるを得ない。今後は警察にお願いして、取り締まりを強めてもらうしかない」
「これからも続くようであれば、センター街を封鎖することも考えなきゃいけない」
センター街の店舗は、混雑を避けるために店を閉めたところがほとんどだった。それでも開けたところもあり、勤務する従業員たちは「渋谷以外の駅を使って帰った」「駅に着くまでに1時間かかった」と話しているという。
また、小野さんは来年以降について、
「これからも延々と続くようであれば、センター街を封鎖することも考えなきゃいけない」
と頭を悩ませる。「警備を増員しても群衆はどうにもならなかった。治安が悪化して、事件の温床になる恐れがあるだけでなく、大勢で倒れたりしたら大きな事故につながる」と危機感を募らせており、「渋谷区、警察署と商店街が一つになって問題点を洗い出し、来年以降に向けた対策を考えていく」という。
小野さんは、「これだけのエネルギーがあるなら、渋谷ではなく被災地に行って、ボランティアに汗を流してくれたらいいのに」と思いを語った。