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福士蒼汰が語る、『4分間のマリーゴールド』のラブストーリーの形 「溢れてしまう想いがある」

2019年11月01日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

福士蒼汰(撮影:伊藤惇)

 現在放送中のドラマ『4分間のマリーゴールド』(TBS系)では、福士蒼汰と菜々緒のラブストーリーが展開されている。福士が演じるのは、手を重ねた人の“死の運命”を視えてしまう特殊な能力を持つ主人公・みこと。幼い頃に母を亡くし、その後、父の再婚相手である義母と連れ子の3人の兄弟と家族になったみことは、義姉・沙羅(菜々緒)に想いを寄せている。しかし、沙羅が28歳の誕生日にこの世を去るという運命を視てしまう。


 今回、リアルサウンド映画部では、7月クールドラマ『Heaven? ~ご苦楽レストラン~』(TBS系)に引き続き福士蒼汰にインタビューを行い、役づくりや、福士本人の人生を変えた経験について話を聞いた(編集部)。


【写真】福士蒼汰撮り下ろしカット


■「制限がある中で、それでも溢れてしまう想いがある」


――みことを演じる上で、こだわっているところを教えてください。


福士蒼汰(以下、福士):みこと自身のキャラクター性ではなく、他の人との関係性を意識して演じるようにしています。たとえば少年漫画原作のようなキャラクター性の高い作品だったら、はっきりとした個性があったほうがいいと思いますが、この作品はヒューマンドラマ。人間性が描かれていくので、感情移入できるキャラクターのほうがいいなと思ったんです。“普通の人”であることを見せるためにも、あまりキャラクター性を付けすぎないようにしています。


――ラブストーリーということで、意識している点は?


福士:好きという気持ちをどう表現するかです。今回の場合は、好きだけど家族というカタチの中では、それが表現できない。制限がある中で、それでも溢れてしまう想いがある。視聴者のみなさんには好きな気持ちが伝わらないといけないけれど、出すぎてしまったら一緒に暮らしてきた15年の間に家族や沙羅にも気づかれてしまうので、そのバランスを大事にしながら演じています。


――初めての救急救命士役。実際に演じてみて、今まで抱いていたイメージに変化はありましたか?


福士:人形を使って行うCPR(心肺蘇生法)の処置を見学させていただいたのですが、みなさんの冷静さに驚きました。すごく落ち着いた状態で処置をされていて、それが意外だなと。命をつなぐためには、スピードももちろん大事だけど、やっぱり正確さが一番なんだとわかりました。ただ、ドラマではより緊迫感を出さなくてはいけないので、難しいところではありますね。処置は3人1組で行うことが多いので、隊長は冷静な立場でいなくてはいけないけれど、みことが焦ったりすることで、緊迫感が出せたら良いなと思っています。


――福士さんは、もし自分の死のビジョンが視えるとしたら、どうしますか?


福士:視たいかもしれないです……視える死期が、いつかによりますが(笑)。でも、“寿命で死ぬ”ような遠い未来だとしたら、まだまだ時間があるなと思えるし、逆に“30歳で死ぬ”とわかったら、あと4年、どう過ごそうと考えられる。自分の死期がわかっているほうが、無駄な時間は過ごさないのかなとか、自分のやりたいことや、家族にしてあげたいことができるかなと思います。


――自分が大切に思う人の最期も知りたい?


福士:う~ん、自分のことより難しいですが。知ったら、めちゃくちゃ悩んだり考えたりすると思うので、本当は知りたくないです。でも、自分にその能力があるとわかっていたら、やっぱり視てしまうと思います。(視える死のビジョンが)“おばあちゃん”だったらいいなって思いながら(照笑)。


■「流星くんはギャップにやられる」


――番宣などを観ていても、現場の雰囲気の良さが伝わってきます。


福士:菜々緒さんとのシーンが多いのですが、自分には姉が2人いるので、菜々緒さんに対しても“お姉ちゃん”という気持ちがリアルに持てました。家族として、姉弟としての感覚を早い時期から覚えたんです。


――今作はきょうだい愛の物語ということで、福士さんの思う共演者の愛すべきところについて聞かせてください。


福士:菜々緒さんは、明るいです。あまり現場で疲れたり眠くなったりしないらしく、一番楽しいのは、バラエティのロケだとおっしゃっていて(笑)。すごく“陽”の雰囲気が出ていて、周りを照らしてくれるような温かさを感じる人です。だから沙羅役にもぴったりだと思いますし、観た方にもそれが伝わると嬉しいです。


 桐谷(健太)さんはふざけるのも好きで、みんなの心を解かしてくれるのが本当にお上手だと思います。自分達が桐谷さんの懐にスッと入れるような余裕を見せてくれる。ほぐれているような感覚が、素敵です。


 (横浜)流星くんは強い目が印象的でしたが、実際には冷たさというものが一切なく、マイルドな雰囲気です。クールな役柄が多いからか、そういうイメージがありましたが、すごく可愛らしいところがあって。そのギャップにやられるなと思いました(笑)。


――人気の秘密はここか、と(笑)。


福士:そうです(笑)。


■「人間のサイズが役者のサイズになっていく」


――作品の中で、みことは悩みごとがあると灯台に行きますが、福士さんにはそんな場所はありますか?


福士:場所はないですが、必ず親友に相談します。


――なんでも話しますか?


福士:去年までは絶対に話さなかったんですが、今年から話すようになりました。きっかけは、大きな悩みがあったということで。それまで、あまり大きな悩みを抱えることがなかったけど、一人じゃ抱えきれなくなって、他に助けを求めなくてはいけない瞬間があったんです。そのおかげで、人に話すことで解消される部分がすごく大きいと気づきました。話すだけで整理ができて、自分の中で解決策が見つけられたりもしますしね。口に出すことで、悩みが理解できる気もしています。


――みことは沙羅に思いを伝えることで、人生が変わっていきます。福士さんご自身、そんな経験は?


福士:この仕事を始めて1年ほど経った時に大学受験があって、当時は『仮面ライダーフォーゼ』(テレビ朝日系)の撮影中で受験勉強をする時間がなかったので、大学には行かない選択をしたんです。その時に、自分の人生が大きく変わったと感じました。それから大人として知りたいことを学べばいいという考え方になって、勉強への価値観が変わりました。受け身ではなく、能動的になるというか。


――その決断は、間違ってなかったと思えるということですよね。


福士:はい、そう思います。


――ちなみに、今勉強していることは?


福士:勉強というか、歴史とかは興味があるし、生物学的なことも結構調べますし。“きっちり教本を読んで”ということではないけれど、気になったら調べてみるスタイルでやっています。でも、数学だけは気になっていないんです(笑)。


――なるほど(笑)。そういった勉強の積み重ねが、役者としても活きていきそうですね。


福士:やっぱり、人間のサイズが役者のサイズになっていくような気がするんです。役者のサイズを大きくしようと考えていても、あまり育たないような気がしていて。だから役者としてというより、人間として大きくなっていきたいなと思っています。


(取材・文=nakamura omame)