トップへ

どついたれ本舗、ずとまよ、崎山蒼志、るぅと……ネット中心に支持拡大するポップミュージック

2019年10月29日 14:31  リアルサウンド

リアルサウンド

どついたれ本舗 『あゝオオサカdreamin'night』

 “人気声優×ヒップホップ”によるプロジェクト・ヒプノシスマイクのチームのひとつ、どついたれ本舗の新作(Creepy Nutsが楽曲提供!)、昨年6月にYouTubeで楽曲を発表し、優れたポップセンスによって大きな注目を集めているずっと真夜中でいいのに。など4組のニューアイテムをピックアップ。ネットを中心に支持を拡大しているアーティストたちによる最先端のポップミュージックを楽しんでほしい。


(関連:ヒプノシスマイク、各キャラクターのラップスタイルに注目


 人気男性声優によるキャラクターラッププロジェクト・ヒプノシスマイク(以下、ヒプマイ)のオオサカ・ディビジョン代表チームどついたれ本舗の5曲入り音源。ヒプノシスマイクの作品にはこれまでにも、サイプレス上野、山嵐、三浦康嗣(口ロロ)などが参加してきたが、本作の表題曲「あゝオオサカdreamin’night」はCreepy Nutsが担当(作詞:R-指定/作曲・編曲:DJ松永)。三味線の粋な響きと厚みのある低音を効かせたトラックメイク、大阪弁のリズム感とおもしろさを活かしたリリックがひとつになった楽曲をどついたれ本舗のメンバー3人(CV.岩崎諒太・河西健吾・黒田崇矢)が表情豊かに表現している。トラックのノリを掴み、独自のフロウを生み出すセンス、すべての言葉を明確に伝える歯切れの良さを含め、独創的なヒップホップチューンとしての魅力は十分。声優×ヒップホップという新機軸を打ち出したヒプマイはここから、さらなる進化を遂げそうだ。


 2018年6月4日にYouTubeで発表された「秒針を噛む」をきっかけに一気に注目を集めたずっと真夜中でいいのに。。ボーカリストのACAねを中心にしたこのユニットは、その後も楽曲を発表するたびにネット上で大きな反響を呼び起こし、新世代の音楽シーンを担うアーティストとして支持されている。1stフルアルバム『潜潜話』には、これまでに発表された配信シングル8曲と新曲「居眠り遠征隊」「ハゼ馳せる果てるまで」「グラスとラムレーズン」「優しくLAST SMILE」を収録した本作。00年代以降の邦楽ロック、ボカロ系を中心にR&B、エレクトロなど多彩な要素を取り入れたサウンド、繊細で生々しい感情とファンタジー的な世界観を併せ持った歌詞、そして、凛とした強さ、センシティブな表現力を同時に感じさせるACAねのボーカルをたっぷり堪能できる作品に仕上がっている。ネットカルチャー発の新たな才能であり、2020年以降の日本のポップの在り方にも影響を与える作品だと思う。


 2018年5月にAbemaTV『バラエティ開拓バラエティ 日村がゆく』の高校生フォークソングGPに出演したことをきっかけに凄まじい注目を集めた2002年生まれのシンガーソングライター、崎山蒼志の2ndアルバム『並む踊り』。美しいノイズと官能的なサイケデリアが溶け合う「潜水 (with 君島大空)」、現代音楽経由のエレクトロニカと称すべきトラックのなかで、シャープな言語感覚をたっぷり宿した歌が炸裂する「感丘 (with 長谷川白紙)」という2曲のコラボ曲を含む本作は、崎山の普遍性とオルタナティブな感覚がしっかりと共存している。ギターと歌だけで濃密なグルーヴと壮大なスケール感を描き出す「踊り」、緻密にして奔放なビート、フィールドレコーディングの素材などを組み合わせた「Video of Travel」など、ポップミュージックの芸術的可能性を追求した楽曲も。どんなに斬新なアレンジを施しても、決して埋もれることのない歌の存在感も強く心に残る。


 今年9月に初のドーム公演(埼玉・メットライフドーム)を開催した動画配信エンタメユニット・すとぷりのるぅとによる1stソロアルバム『君と僕の秘密基地』。日々を頑張って生きているリスナーに向けたメッセージソング「君はいつも100点満点!」、“学校行きたくないよー!”“ダメだよ、行かないと!”という冒頭が印象的なすとぷりの莉犬と一緒に歌った「行け!僕らのスクールフロント!」、エッジの効いたギターサウンドを軸にしたロックチューン「justified」などを収録。グループの楽曲でも作詞・作曲・編曲・レコーディングなどを手がけるクリエイターとしての資質、そして、甘くてポップな声のなかに力強い意思を感じさせるボーカルなど、ソロアーティストとしての魅力を示した作品だ。(森朋之)