2019年10月29日 11:11 弁護士ドットコム
実家の裏にある崖に、今にも崩れ落ちそうな危険大木があるが、地主が対応しない。どうしたら撤去させることができるのかーー。弁護士ドットコムにそんな切実な相談が寄せられた。
【関連記事:「田中の対応最悪」社員名指しの「お客様の声」、そのまま社内に貼りだし公開処刑】
相談者によれば、崖には大木が数本ある。倒木すれば家屋が損壊する可能性があるものの、「崖の地主さんには相談しているのですが、大木を切る許可はおりません」という。
何かあってからでは遅い。今の状況で何をやるべきなのか。菅野澄人弁護士に聞いた。
ーー地主に対する法的な手段がありますか
所有者には、所有権に基づく「妨害予防請求権」というものが認められています。
ーー妨害予防請求権とはどのようなものでしょうか
所有者は、法令で認められている範囲内で所有物を自由に支配すること(所有権)を保障されています。
これが妨害されるおそれがある場合の救済手段として、その妨害を予防するよう請求できる権利が「妨害予防請求権」です。
法律に明記されていませんが、所有者の当然の権利として認められています。
ーー今回のケースはどうでしょうか
裏の崖が崩れ落ちることにより大木が倒れてご実家を損壊する客観的な可能性がある場合には、ご実家の所有者は、裏の崖の地主さんに対して、大木を伐採するなどの適当な予防措置をするように請求することができます。
なお、この場合、予防措置にかかる費用は、裏の崖の地主さんの負担となります。
ーー予防できずに被害が出てしまった場合の費用負担はどうなりますか?
竹木の植栽又は支持に瑕疵があること(通常の安全性を備えていないこと)によって他人に損害を生じたときは、その竹木の管理者などは損害を賠償する義務を負うと定められています(民法717条1項・2項)。
今にも崩れ落ちそうな大木ということであれば通常の安全性を備えていないといえます。裏の崖の地主さんは、万が一、裏の崖が崩れ落ちて大木がご実家を損壊した場合には、ご実家の所有者やご実家に住んでいる方々に対して賠償金を支払わなければなりません。
裏の崖の地主さんには、これらの法的な責任が認められることを理解してもらい、実際に崩れ落ちる前に大木を伐採するなどの適当な予防措置をするように請求をするべきです。
【取材協力弁護士】
菅野 澄人(かんの・すみと)弁護士
東京弁護士会所属。同会災害対策委員会に所属し、災害時には被災者の支援活動に取り組む。新宿を拠点に離婚・相続事件などの一般民事から医療事故や企業法務まで幅広い分野を取り扱う。依頼者ひとりひとりに丁寧な対応を心がける弁護士。
事務所名:菅野法律事務所
事務所URL:https://kannolaw.com