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『俺の話は長い』生田斗真の屁理屈に徐々に陰りが? ホームドラマとして秀逸なエピソードに

2019年10月27日 15:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『俺の話は長い』(c)日本テレビ

 かつて使っていた珈琲店の道具をすべてリサイクルショップに売った満(生田斗真)。一方で満を何としても家から追い出して就職させたい綾子(小池栄子)は、房枝(原田美枝子)にも満に厳しく向き合うように説得する。26日に放送された日本テレビ系列土曜ドラマ『俺の話は長い』第3話は、前半コメディ・後半ドラマティックという形式をしっかりと守りながら、姉と弟の衝突を通して家族が過去を見つめ、新たな一歩を踏み出す姿を映し出す。ホームドラマとして実に秀逸なエピソードとなったといえよう。


参考:ほか場面写真はこちらから


 前半の『カボチャと喫茶店』では、房枝が常連客からもらった大量のカボチャがネット上で高値で取引されている高級カボチャだと知った満が、その転売を目論む。ハロウィンに合わせて店で特別メニューを出そうとした房枝を止めようと、必死でハロウィンを批判するというタイムリーな題材が描かれる。そして後半の『酢豚と墓参り』では、父の月命日の墓参りに行くことにかこつけて、ガソリン代と花代を水増し請求しようとしたことが綾子にバレてしまい、父のお気に入りだった中華料理店で円卓を囲みながら言い争う姉弟の姿が描かれた。


 第1話での「すき焼きは牛肉の最も邪道な食べ方」という持論と比較すると、今回満が屁理屈をこねるハロウィン批判論はかなり見切り発車で、かつ利害が背景に明確に存在していることもあってかなり詰めが甘い。結果的に転売目的であることがバレて、尻込みしている間にまんまと房枝に言いくるめられてしまうあたり、秋葉家の同居によって岸辺家に大きな変化が訪れていることがわかる。


 それと同時に、房枝が「クリスマスの時に餅つきやるような人だった」と語るように、満の性格は完全に父親譲りのものだったとわかり、「店のカウンターに入るな」という父の言葉を守って外を通って店に乗り込んでくるところや、仏前にカボチャの煮付けを供えたり、小遣い目当てでも墓参りをきちんとすること、そして父の好物が酢豚ではなく酢豚のタレをかけたチャーハンだときちんとおぼえていたことと、満の中で父の存在が非常に大きくあることも見て取れる。つまりは満が珈琲店の夢を諦めきれないでいるのは、自身のプライドよりも父に顔向けできるようになりたいという想いが強かったというわけだ。それが明らかになったところで、家族全員が円卓を囲みながら酢豚のタレをかけたチャーハンを食べ、姉と弟は相変わらず張り合いながらかきこむ姿は、なかなかグッとくるものがある。


 ところで、春海(清原果耶)の恋の相手である高平陸(水沢林太郎)というキャラクターが実に興味深い。オーソドックスなドラマの方程式に則れば真面目そうな見た目にも関わらず、春海の親友と付き合いながら春海に好きだったことを告げるという、どことないチャラさ。さらに光司(安田顕)と連絡先を交換するだけでなく、カボチャの被り物の画像に対してその上をいくボケで返し、大喜利合戦を仕掛ける。彼が秋葉家、ひいては岸辺家をどうかき回していくのか注目しておきたいところだ。 (文=久保田和馬)