2019年10月27日 10:41 弁護士ドットコム
友人宛てにお米を送ったところ、注文したはずの量の倍が届いていたーー。主婦のフミヨさん(60代)は、どうするべきか悩んでいます。
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フミヨさんは、友人へのプレゼントのため、ネットショップで「魚沼産コシヒカリ」10キロを注文。料金は前払い制のため、先に店側が指定した口座に10キロ分の料金を振り込みました。店側からも米10キロ分の代金を確認したこと、これから商品を発送することを告げるメールが届いたそうです。
数日後、フミヨさんの友人から興奮した様子で「こんなに大量のお米をありがとう!」とお礼の電話がかかってきました。
しかし、友人のもとには「20キロ」の魚沼産コシヒカリが届いたとのこと。
「私が注文したのは10キロです。もし、自分宛てに20キロの米が届いたならば返品しますが、友人に『10キロしか頼んでいないから、10キロ返品して』とはいえません。料金は10キロ分しか払っていないですし、モヤモヤします」というフミヨさん。
店側のミスで、第三者に余分に商品が届けられた場合、どうすればよいのでしょうか。大橋 賢也弁護士 に聞きました。
ーー今回のように、店側のミスで、注文した以上の商品が友人に届けられた場合、フミヨさんはどのような対応をするべきでしょうか
「フミヨさんが通常取るべき行動としては、友人に対して、正直に『本当は10キロのお米を頼んだ』と打ち明けることと、店に対して『友人宅に20キロの米が届けられた』と告げることでしょう。
もし、フミヨさんが友人に本当のことを打ち明けずに、友人がお米を食べてしまったりすると、後に述べるような『面倒なこと』にもなりかねません。そのため、まずは友人に早めに真実を告げる必要があります。
また、店は間違って20キロのお米を送ってしまったことに気づいていない可能性が高いと思われます。そのため、店にも早めに事情を説明したほうがよいと思われます」
ーーもし、友人に本当のことを打ち明けなかった場合、フミヨさんは責任を問われることはあるのでしょうか
「いいえ。フミヨさんは、店に対し、お米10キロ分の売買代金を支払っているので、売買契約に基づく債務を履行しています。
フミヨさんが友人に真実を告げることや、店に事情を説明することは、フミヨさんと店との売買契約に基づく本質的な義務ではありません。そのため、これらのことをしなかったからといって、フミヨさんが契約上の責任を問われることはありません」
ーー友人と店に事情を説明した後は、フミヨさんはどのような対応をすべきでしょうか
「その後の対応は、すべて店に委ねられていると考えてよいでしょう。契約内容に反して10キロも余分にお米を送ってしまったのは、店の落ち度によるものだからです。
店の対応としては、(1)落ち度を認めて10キロのお米の返還を求めない、(2)送料を負担するので、10キロのお米の返還を求める、の2つが考えられます。
店が(2)の対応を取る場合、友人には迷惑がかかってしまいますが、返還手続きを取ってもらうことになります」
ーーもし、フミヨさんの友人が返還手続きを取らなかったり、すでに米を食べてしまったりしたような場合はどうなるのでしょうか
「このような場合、店は友人に対してお米10キロ(お米を食べてしまった場合は、10キロ相当額の金銭)の不当利得返還請求権を行使する可能性があります。最初に述べた『面倒なこと』は、このようなことです。
せっかくの好意でお米を送ったのに、友人を店とのトラブルに巻き込ませないためにも、友人には早めに真実を打ち明けるべきでしょう」
【取材協力弁護士】
大橋 賢也(おおはし・けんや)弁護士
神奈川県立湘南高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。平成18年弁護士登録。神奈川県
弁護士会所属。離婚、相続、成年後見、債務整理、交通事故等、幅広い案件を扱う。一人一
人の心に寄り添う頼れるパートナーを目指して、川崎エスト法律事務所を開設。趣味はマラ
ソン。
事務所名:川崎エスト法律事務所
事務所URL:http://kawasakiest.com/